出勤01
ダンジョンに入った社長代理とその社員たち。
まずはダンジョンに慣れましょう。
途切れていた意識が戻り、真白だった視界に光りがのぞく。
周囲を確認すると所々、無数の木の根がはる遺跡が広がる。
その遺跡のダンジョンに足を踏み入れる。
周囲に敵がいないか注意しながらダンジョンの奥へ進む。
前衛には源さんと有村さんが立ち、その後ろに配置され目的地を目指す。
俺の肩に腰を落ち着かせアリスが鼻歌を鳴らせている。
そんな機嫌の良いアリスに質問する。
「このダンジョンどこまで続いているんだ?」
足をばたつかせ、答える。
「ん~地下5階くらいかな~楽勝、楽勝」
前衛にいる源さんがこちらを向かずに話に入る。
「ワシら2人いるから大丈夫ですぞ」
そのあとに有村さんが続いて話に入る。
「今回は社長代理に慣れてもらえる為のダンジョンです」
「今はその体に慣れることを優先してください」
有村さんはそう答え立ち止まる。
ダンジョンの奥から人影が現われる。
注意深く確認すると人ではなく、全身毛に覆われ傷んだ皮の鎧をきた
犬のような顔をしたモンスターのパーティだった。
源さん、有村さんは武器を構える。
「コボルトのようじゃな。一気にかたずけるか」
「連携し迅速に処理しましょう」
言い終わると、コボルトたちは一斉に襲いかかってきた。
突進するコボルト達を回避する2人。
回避後、源さんが攻撃を繰り出す。
自分の身長と同じくらいのアックスを担ぎコボルトへ突進する。
攻撃範囲に入り横なぎ振りかぶり2体が巻き込まれ壁に激突しコボルトは結晶化し砕ける。
残り3体のコボルトは戦意を失わず、源さんに向かってくる。
そこへ有村さんが弓で攻撃する。
3体のうち2体の頭に命中し砕ける。
あと1体は腕にあたり武器を落とす。
源さん、有村さんは戦闘を継続している。
孤立したコボルトはあとずさる。
コボルトは逃走経路を確認するが隙がみつからない。
だがコボルトは俺の方を見て笑う。
こちらに突進してくる。
どうも俺が最弱とわかりそこから逃げようとしている。
「どうする?」
アリスは俺の肩から離れ、後ろへ移動する。
「戦うにきまってるでしょ!」
そういったアリスは飛んできて背中が押される。
「うおっ」
勢いよく押された俺はコボルト目がけて突進するかたちとなる。
コボルトは大きい口を開く、俺は反射的に自分が持っている武器に手をかける。
コボルトの口を体勢をかがみナイフを両手で持ちコボルトの顎下に突き立てる。
コボルトは目を向き絶命し徐々に結晶化し砕け散った。
砕けたあとその場でへたり込み戦闘が終了した。
へたりこむ俺のまわりにみな近づいてくる。
「社長代理、なかなかでしたぞ」
源さんを見て、笑う俺。
「ははっちょろいちょろい」
「腰ぬけてるしwチョーうける」
アリスが笑いながらツッコむ。
有村さんはまわりを警戒しつつ話す。
「あまり無理しないようにしてくださいよ。社長代理」
メモをとる有村さん。
「大体はわかりましたしよしとしましょう」
源さんの手をつかみ立ち上がる俺は質問する。
「なに?試されたの?」
源さんとアリスはうなずく。
「最後はわざと外してましたな」
「はずしてたー」
有村さんは警戒を解き武器を収める。
「社長代理には経験して頂きレベルアップしてもらいたいので」
「レベルアップ?」
すると首にかけたタグが光り出す。
「そのタグに経験値がたまり、その肉体の強化が行えます」
「アリスさんお願いします」
「ほいほいー」
アリスが近づきタグに触れる。
すると俺の目の前でタグが浮き文字や数字が表示される。
「これって?」
「あんたのステータス」
「でどうすんの?」
「この状態でタグを握るだけ」
「握るだけ?」
「そう握るだけ」
アリスはそう言い、俺は熱くないか確かめ握る。
するとタグに表示された文字や数値が動き、体に吸い込まれる。
タグにレベルが刻印される。
レベル1→2になる。
強くなった気はしない。
まあ1から2だからな……
「?」
タグの裏にも何か刻まれている。
「これは?」
アリスが近づき見る。
「へースキル覚えてるじゃん」
そういうと、源さん、有村さんも見る。
タグを中心に円陣を組んだ状態でみんなで見る。
「書かれていますが、わかりませんね」
「どうやって使うんじゃ?」
「さあ~わかんな~い」
お互い目を合わせる。
有村さんが答える。
「すぐに発動するわけではないようですし、現状維持してください」
「どうやって?」
「気合ですぞ!」
「きあいだ~」
源さん、アリスは面白がっている。
「じゃあ次にいきましょ」
有村さんは事務処置をするようにこなし、次へ向かう。
源さん、アリスは腕を振り上げ歩き出す。
俺もそのあとに続く。
「気合ね……」
そして俺たちはダンジョンの奥へと進む。