恋してた
俺にとって小説は。
恋人だ。
夢や希望、温かいものをくれて。でも、やっぱりそれは手が届かなくて。自分で産み出した気になって。自分で恋人を産み出し、恋人は俺の元を離れていって。
他人が産み出した恋人達も優しかった。どうしようもなく。
優しすぎて、やっぱり離れるのが怖くて。好きな言葉ほど、最後まで詠むのが嫌で。
人が死に、どうしようもない別れが来るのと同じくらい最後の頁が嫌で。
やっぱり嫌いだ。人は。
死にたくなるくらい嫌いだ。
今朝は車に轢かれそうになった。夢で人の首を思いっきり絞めていた俺が車とぶつかりそうになった。青い光に導かれて自転車をこいでいたら、斜め前からホンダのヴェゼルが突っ込んできた。イラッとした。
どこ見てんだ。その次には、轢いて欲しかったと怒り睨み付けた。
だいたい時速30キロ位の速さで走っていた馬から落ちても、結局たいした怪我なんて一回もしなかった。
いつ死んでも。そう思いながら暴れ馬にも自ら志願して乗った。
でも、身体は傷つくのを拒否していた。記憶は無いのだが、周りの記憶を聴けば神憑り的な落馬をした事もある。稚拙な経験が俺を生かした。
性差に悩む人の様に、俺は頭と身体で意思が違うんだと思う。頭では傷が増えるたびに快楽を感じていた。でも、身体は嫌がっている。その狭間で生かされている今はものすごくしんどい。けど、頭のどっかでは現状を求めていた気もする。
心を機械にできるなら。喜んで差し出したい。身体は拒否するだろうけど。
いつからか、いつも綱引きをしていた。紅白の帽子をかぶり、心と身体同士が。時には力を入れている振りをしたりして、いつも均衡を保っていた。
ここ最近は綱が見当たらない。争う必要も、目的も、観客もない。紅白の帽子はウルトラマンの様に半々にして被っている。
身体の快楽も、心の苦痛も噛み合わない。水と油の様に。決して絵の具の様に混ざらない。
死にたい、というよりも生きたくない。自分の身体なのに、なんで操縦できないんだろう。どこかに説明書を忘れてきたんだろう。マニュアルの免許はあるのに、自分のギアの場所が分からないし、最近は鍵も無くした。
いや、どこかに投げた。ソフトボール投げ40メートルそこそこの貧弱な肩で思いっきり。
自分が小説を書いているのは、やっぱり自分のためだった。
自分でアイドルを創り拠り所にしようと。
本当に。この世は地獄だ。




