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恋
自分は村田沙耶香さんに恋をしている。
正確に言えば、この人の書く物語に。
他人から見れば、いわゆる二次元のキャラにキャーキャー言うレベルと変わりないのかもしれない。
だけど、落ち着いてしまう。
頁をめくるたびに心動かされ、涙し、また求めてしまう。
恋に似ている、気がした。
他人の恋とはどんなものなのかは分からないが、少なくともこれは恋だと思っている。
恋愛体質の俺は、初めて恋を知ってから、常に誰かに、何かに心を預けようとした。今は村田沙耶香さん、というだけ。
多分、これは良くないだろうなと認識している。
いつからか、俺は普通を拒んできた。でもそれは、普通の幸せを拒否するただの言い訳でしかなかった。多分、俺自身が一番求めていたのは、普通なんだと思う。
外から、遠いとこから普通に憧れ、恋してきた俺。
けど、いまだに思春期。焦がれる事に憧れていただけ。
今さらどうしようもない。
どうするつもりもない。




