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何言うつもり?

 それから私たちは無言で歩く。

 結局今日も一緒に帰る事になったし、よくわかんないな。キダが本当は私の事どう思ってんのか。それで彼女がいたかどうかも。

 それでも明日の朝も、迎えに来なくていいって言っても来るのかな…。飽きるまではずっと続くのかな。なんで私はちゃんと断れずにこうやってだらだら…

 いや、ちゃんと私は断ってるよね。



 立ち止まって、「なんかおかしいよ」と言ってしまう。

キダも立ち止まった。「何が?」

「こういうの」

「一緒に帰るのが?」

「違う。…その…好きとか言ってくれたのは嬉しいけど、でもその副会長の子の話とか、よくわかんないし。小学から好きだって言ってくれたけど、あの頃はほんとそんな感じじゃなかったし。そりゃ小学生だけど、そんな感じ全然なかったじゃん。なのにこっち帰って来て急に」

「急にじゃねえつったじゃん。それにそんなん小学とか中学とかでやたら好きだとか思っても言えねえじゃん恥ずかしい。オレは普通の男子なの!男子はそんな事簡単に言えねえの。中学とかでやたら好きだとか付き合おうっていうやつもいたけど信じらんねぇ…付き合うつったって中学生で何するんだっつんだよな?でもこっち帰って来れたし、実際高校とかだったらイケるっつうか、木本が他のヤツと付き合ったら絶対嫌だしな」

 イケる?イケるってなんだろ…


 「それに…」

キダカズミが言い淀む。そしてなかなか言わない。

もういいや、と思って歩き出したらやっとこう言った。「二人でいたらいろいろしたくなるじゃん。中学でそれは…」

「へ?」

「いや、やっぱなんでもない」

なに?何言ってんのコイツ…

「今中学でってぽろっと言ってたでしょ?」睨みつけてしまう。


 小学生の時の子ザルのキダは、いろんな遊びを考え付いてそれをいつも一番に初めて、みんなもやり始めたらまた一番に飽きて別な遊びを始めていた。あの頃のキダカズミのキラキラした笑い顔が浮かんでくる。

 きっと今もそんな感じなんだよ。

 みんながキダの事を結局は許して一緒に面白がっていたのも、あんな風に楽しく笑っていたからかもしれない。こうやって一緒に帰るのも本当はそこまで嫌なわけじゃない。キダは、人見知りの私でも男子の中では結構普通に喋れる相手だったし、二人でいても緊張しないし。でも好きだとか言われて、気にして、みんなにも騒がれて、それでやっぱ違ったわ~とか言われたら冗談じゃない。

 だいたいその前に私はスズキ君の事が好きなんだから、キダに彼女がいたとかいるとか関係ない。



 「カズミ君!」

いきなり大きな声を出したのでキダがビクッとした、それでも「ふん?」と優しい顔で聞いてくれる。むかしは人の話なんて、まるきり何にも聞かなかったキダが。

 でも私は言葉につまってしまう。

 『私の事、本当に好きなの?』って聞こうとしたし今。相当キモい。

「そんなに気になるなら」とキダが言った。「もっかいイケダに確認とったらいいじゃん。その話」

「私が!?」

ちょっと恥ずかしそうにうなずくキダ。

「嫌だよ!なんで私が」

「だって気にしてんじゃん」

「そんなの全然気にしてない!」


カバンからスマホを取り出すキダ。

「ちょっと!」と睨む私。

イケダにかける気か。

「オレがイケダにかけてやるから、木本自分で聞けよ」

「聞かないよ!バカじゃないの!ちょっ…電話切って!」

スピーカーにするキダだ。

「もう私知らない。ばいばい。帰るから私」

言って走り出そうとした私の腕をパッとキダが掴んだ。

 

 ぷっ、と音がして、「どうしたん?」とイケダの声。

「木本が聞きてえ事あるって」とだけ言って私に自分のスマホをぐいっと差し出すキダ。

私の腕は強く掴まれたままだ。

「嫌だ」とキダを睨む私。「聞きたくない」

「どうしたん?」ともう一度イケダが聞く。

「木本がな、」とイケダに話すキダ。「オレに中学の時彼女がいたってイケダから聞いたって言ってな」

「おお?…お~~」

「木本に言ったん?」

「木本が気にしてたん?」

「気にしてたっつか」

二人で話すのを聞きながら私は腕を振りほどこうとするのだけど、振りほどけない。

「気にしてたんならOKって事で」とイケダ。

「「何?」」と私とキダが声を合わせてしまう。

「いや、」とイケダがうっすら笑ったような声で言う。「なんかそういう事匂わせたら木本気にするかな~~っていう感じ?」

「余計な事すんなや」とキダがムッとした声で言う。「誤解されんじゃんめんどくせえ」

「いいじゃん木本が気にしてんの、ちょっと嬉しかったろ」

「まあ…まあまあまあまあ」

「それの電話?」とイケダ。「今ヨシモトとか来てるからまたな」

「お~~」とイケダに答えスマホを切り、「な?」と私に言うキダだ。

「離して」と私は睨む。

「な?」ともう一度私に言ってニッコリと笑うキダ。「イケダがほら、気を使ったっていう話。余計なお世話だよな」

 知らないよ!

 ぶん!と思い切り手を動かしてキダの手を払うとキダがちょっと困ったような顔をして話し始めた。



 「中学男子ってまぁ見るじゃん、なんかグラビア的なやつ」

何話し始めたコイツ、と思う。今日も話に脈略ないな。

「すごいやっぱ興味出てくるじゃん」

「…あ、そう」

まぁそうでしょうね。

 キダが私の目を少し反らしてから言った。

「コレ聞いても引くなよ?」

 いや、何言うつもりかわかんないけど…

 「オレは木本の事好きだなってちゃんと思い始めてからは、そういうのを見ると、木本に置き換えて妄想してた」

「…ふぇっっ!?」

「お前声デカい。デカいし変」

 いやあんたが変だから。そういうの、本人に面と向かって言う!?

「でもオレだけじゃねぇよ。男子なんてみんなそんなだろ?」

…そうかな…

 いやそんな事ないと思う。グラビアはグラビアで見てると思う。

「だって全然違うじゃん!胸とか私全然…」

ムキになって何を言うつもりだ私は。

「…まあな」

まあなって何だよ。失礼な!

 キダが続ける。「置き換えなくても勝手に妄想したりとかも出来るけど。こう、寝る前に木本を思い出しつつ…」

「カズミ君!!」

「ふん?」

「何言い出してんの!?」

「いやなんか、オレの気持ちを疑ってるから」


 「…」よしもうこの際だ!頑張って聞こう相当恥ずかしいけど。「じゃあ!私のどこを好きだと思ってそういうふうに言ってくれてんの?」

「どこ?」

ちょっと考えるキダカズミ。「どこを好きか…」

ほら答えらんないじゃん!

「どこって言ったら全部。全部っていうか存在?」

わ~~~~!

 不覚にも胸がぎゅっとしたんだけど今。キダカズミ相手に。

「恥ずいな」とキダが言う。「本人に言うって相当ハズい」

いや、さっきの妄想のくだりの方がよっぽど恥ずかしいと思うけど。


 

 「アレ?お、カズミ?カズミじゃね?」

キダと一緒に振り返ると、ニシモトミノリだ。

 ニシモトミノリは小学が一緒だった、今は他校に行っている男子でいつもキダやイケダと悪ふざけばかりしていた仲間だ。

「イケダが高校一緒んなったって言ってたから、」とニシモト。「まあじき会えるかなっては思ってたけどな」

「お~~」とキダも答える。

「いや、なんか女子がすげえカズミがイケメンになってるつってたけど」

「…」

「え、カズミおい、こっち帰って来てすぐ彼女連れってすげえなやっぱイケメンは、って木本じゃねえか。木本と帰ってんのか」

なんなの?これ言うのがお約束なの?

「知ってたけどな」とニシモト。「イケダが嬉しそうにカズミと木本が付き合うかもって言い出してんだけど、なんでイケダが嬉しいんだかな」

イケダ~~~。

 ニシモトは私の睨みを気にせず嬉しそうにキダに言った。「なあなあ、今度遊ぼうってタッちゃんたちが言ってたからな。また連絡するわ」

「あ~~わかった」

「キモトも連れて来たらいいじゃん」

何言い出すんだニシモト。

「あ~~まあな」

行かないよ私は!と思う私にニシモトが言った。

「オレも彼女欲しいわ。キモト誰か友達でいねえ?オレでもいいって言ってくれるような優しくて可愛い子」








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