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リョウ君

 そこへイケダやタカハシも合流。私はアコちゃんと並んで歩く。前を歩くイケダがキダに喋っている。スズキ君はその前にタカハシと並んでいる。

 「お前カズミ、うちのクラスの女子がすごかったって今日。お前の事、なんか話してたから『オレそいつの友達~~』って言ったら、食い付きすごくて怖過ぎた。たぶんお前とつながりたくてめっちゃオレ、ライン交換しようって言われたけど」

「絶対ぇ教えんなよめんどくせえから」と本当にめんどくさそうに言うキダ。

「まあな」とイケダ。「でも女子ってほら、そういうのすぐ騒ぎたがりじゃん。周りが騒いでると自分も騒がんと、みたいなそういう感じで騒ぎたいだけじゃね?」

お、意外に冷静に見てるじゃんイケダ。イケダなのに。

「それにキダにはもういるじゃん。なあ?」と言って笑いながらイケダが私を意味ありげに見る。「彼女的なアレが」

『彼女的なアレ』って何だよイケダ!スズキ君も聞いてるのにバカじゃん!

「もうイケダ。…そういうの面白がって言うのやめて」

私がそう言うとスズキ君がハハハハ、と笑ったのでビクっとする。もうほら!スズキ君に笑われた!

「木本、」とスズキ君が言うのでさらにビクっとするがスズキ君は続けた。

「イケダの事は呼び捨てなんだ。キダはカズミ君なのにイケダは呼び捨てってイケダらしさが表れてるな。なんかそれ面白い」

そこ!?

「おい~~」とイケダもスズキ君に突っ込む。

「小学校からそうだからなんだよ!」慌ててスズキ君に説明する。「女子はみんなそう呼んでたから」

「へ~~~」と今度はアコちゃんがイケダをからかって言う。「イケダはなんで女子にタクミ君、て呼ばれないんだろうね」

「まあな」とイケダ。「オレも呼ばれてえわ、可愛い女子に」


 ハハハハハ、とまた笑うスズキ君。「そうだよな。そんなん呼ばれないもんな、オレらみたいなキャラは」

ええ!?と心の中で叫ぶ。なに言ってんだスズキ君。自分をイケダと一緒に見るとか。全然違うから。

 私だって呼べるもんなら名前で呼びたいよスズキ君の事。


 そう言えばスズキ君はずっと『スズキ君』だな。男子からはたいがい『スズキ』。女子からは『スズキ君』か『スズキ』。アコちゃんは『スズキ』って呼んでる。スズキって多い苗字なはずのに中学の時も他にスズキはいなかったよね…と余計な事も考える。


 『リョウ君』て呼びたいよね。まあ無理だけど。恥ずかしいし、同クラになったばっかりなのに馴れ馴れしいよね。

 「あ~じゃあさ、私呼ぶわ」とアコちゃんが言った。

「え?」と私が聞き返してしまう。

「イケダの事、タクミ君て呼ぶわ。私が呼んであげようこの際。そいでスズキの事も名前で呼んでみようかな」

「え、オレも?」とスズキ君。

私もここの中で、え?と思う。

「え、なに?」とドスの聞いた声でアコちゃんが言う。「呼ばれたくないわけ?」

「いや、慣れてないからこそばゆくなりそう」と笑うスズキ君。

「まあなぁ」とイケダ。「女子つってもカワイじゃなぁ」

「相変わらず愚かだな」とイケダにアコちゃんが言った。「私がそう呼んでやることによって、他中だったあんたをよく知らない可愛い女子のみなさんが騙されてタクミ君て呼ぶようになるかもしんないのに」

「そうか!」とイケダ。「あなどれねえなカワイ。すげえじゃんありがとありがと。…まあな、カズミとカ全然知らない女子からカズミ君カズミ君呼ばれてな、差別よな。女子ってマジで顔で差別し過ぎ。オレのクラスの女子もトイレ行く途中でカズミの事チラ見できたってすげえ喜んでたし」

「あ~それはうちのクラスも…」とスズキ君が言いかけて止めた。

「なになに?」とアコちゃん。「うちのクラスがどうした?」

「あ~~…木本がさ、結構見られてたと思う。あからさまに見てったヤツもいたし」

「私!?」素っ頓狂な声を上げる私だ。

「なんかほら、キダと一緒に来てたりしたからだと思うけど、木本がどんな子か気になったんじゃない?」

 ヤダな!それをスズキ君に言われるのもヤダな!


「すげえな木本」とイケダ。

「すごいよモトちゃん」とアコちゃん。「私モトちゃんの友達だってうちのキダ君に騒いでた女子に自慢しよっと」

「もう~~止めてよアコちゃん。友達だって言ってくれるのすごい嬉しいけど、それはほんと止めて」




 それから委員会の話になった。アコちゃんは美化委員でキダとイケダは何にもなっていないらしい。

「え、二人一緒?」とアコちゃんが聞く。

私とスズキ君の飼育委員の話だ。

「うん、なんか先生に無茶ぶりされて」

「まあめんどくさそうだけど」とスズキ君。「キモトが一緒で良かった。気が楽っていうか」

 きゃ~~~~、と思う。『一緒で良かった』だって!わ~~、今のもう1回言ってくれないかな。

「結構これでも人見知りだからなオレ」とスズキ君。「イケダもよな、そう見えて」

「そう見えてってなんだよ」と当然言うイケダ。「オレよかスズキがだろうが」

「なに言ってんの、」とアコちゃん。「リョウ君は見えるけどイケダは見えない。全然」

「おいおい!カワイ!」とイケダが驚く。「さっきの話はどうしたよ。スズキだけ名前呼びとか。わざとか」

「わざとだよ決まってるじゃん」とアコちゃん。

 ハハハハ、とスズキ君が笑う。「ほんとに呼ぶとかビックリした。けど嬉しいって気持ちより俄然恥ずかしいって気持ちが来るな。急に女子に名前呼ばれたら」

「そう?」とアコちゃん。「別にこれからも呼ぶけどねリョウ君」

マジか…と思う私。言われたスズキ君の顔をチラチラ見てしまうと、恥ずかしいって言った割にそんなに恥ずかしそうにはしてないっていうか…結構嬉しそうに受け入れてるような…

 

 アコちゃんに先越された!

 そしてキダが私を見る。



 「そんな、」と私も頑張って口を挟む。アコちゃんみたいにスズキ君の事を絶対名前では呼べないから口を挟む。「イケダもだけどスズキ君もそんな人見知りの感じには見えないよね。だって高校でクラス一緒になった時声かけてもらえてよかったって思った。誰とも喋れなかったらって思ってたから」


「うん、オレも良かった同中いて良かったよ。初めて喋るやつとかに話しかけんの、ほんとはすんげぇ苦手。イケダも一見調子良いけどさ、慣れるまでに時間かかるもんな」

「ほんとに?」とアコちゃん。「キダ君は?」

「カズミは」とキダではなくイケダが答える。「ほんとそりゃもう立て続けにすげえ悪ふざけしてたよな」

な?と私に言うので、「うん!」と力強く答えてしまう。

「もうずっと動きまくって走りまくって、」とイケダが続ける。「止まってんの見た事もねえくれえ次から次になんかやらかしてたな。オレはお前といたばっかりにすげえ先生に怒られたわ」

「そうなの?」とアコちゃんが驚いて私に聞く。

「うん、まあ結構ね」

「モトちゃんも何かイタズラされた?」

「おいおいイタズラとか言うなよ」とイケダ。「オレらがセクハラしてたみてえじゃん」

なんかそれ、キダもそんなバカな事言ってたよね。…しょーもな!



 「みんなにしてたよ。ね?クラス全員被害者、みたいな」とキダとイケダに言う私。「先生にもいつも注意されてたし」

「いつもじゃねえよ」とイケダ。「木本、それ、同小、同中のヤツ以外には絶対ぇ言うなよ。イメージ悪くなるから」

 そして「う~~ん」と唸りながら少し考えたような感じでイケダが言った。「でもカズミはそんなんでも結構女子からウケが良かったよな。カズミの方がいちばん悪ふざけしてんのに、そいで女子も『もう~~~~』とか怒るんだけど、まあ許しちゃう、みたな感じで、でもオレは最後まで『もう~~イケダ~~』とか言われたりな。女子は怖ぇよな。そのころから顔で判断してたんだよな。恐ろしい。カズミだけバレンタインに結構チョコもらったりな。中学になったら女子は男子じゃなくて女子に友チョコ配るし。なんなんだアレ」

 キダカズミ、チョコもらってたんだ知らなかった。小学の時学校に持ってくるのは禁止されてたし、誰かが手渡ししてるのは見たことないから、女子たちは家に押し掛けたのかな。帰り道待ち伏せとか?禁止されててもこっそり持ってきたりもするんだろうな。どんな子たちが渡してたんだろ…フミカちゃんとか?アヤりんとか?



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