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じゃあ二人

 うわぁ…

 やっぱスズキ君素敵。嬉しいなぁこんな事言ってもらえて…スズキ君カッコいい…。元々私が指名された所に付け足された感じで、こんな罰ゲームっぽい委員を指名されてんのに私をかばってくれるような発言。

 て言うか!スズキ君と一緒に委員会!?

 それならやるけど私!やるやるやるやる。飼育委員でもなんでもする!

 巻き添えくった感のスズキ君には申し訳ないけど、私的には結構、ていうか凄くラッキー。飼育委員自体は気がすすまないけど、スズキ君と一緒なら楽しいような気がする。ていうか楽しいに決まってるし、これはチャンスかもしれない。


 『私フクロウとか初めてでちょっと怖いんだけど』とか私が言うと、スズキ君が、『え、木本フクロウ怖いん。可愛いな!じゃあオレと一緒にエサあげよ。せ~の~~』みたいな。

 …ていうかフクロウどこにいるんだろ。フクロウの本物は小学生の時に動物園行った時に見たけど、はっきりどんな感じだったか忘れた。よくテレビとかで見るのは茶色くて目の黒いフクロウとか?それかハリーポッターに出てくるような大きくて白いフクロウとか?


 どんな仕事をさせられるのかちょっと不安はあるけど飼育委員でスズキ君と仲良くなれて、今よりずっといい感じになったら、キダも私に余計な事を言ったりしたり、しなくなると思う。それにキダは今の段階ですごく女子の注目浴びてるし。もともと人懐っこい子ザルなんだからすぐに友達もいっぱいできて私の事なんて気にならなくだろうけど。


 「じゃあ二人、」と高森先生が冷たく言い放つ。「嫌なんだったらクラスの委員長二人でやる?スズキなんか適役そうだし」

「いえ!」と慌てたようにまたガタっと立ち上がったスズキ君。「オレ、そういうのほんと無理なんで、頑張ります生き物係…じゃなかった飼育委員」

 飼育委員やるんだスズキ君。

「あ、でも木本!」とスズキ君がみんなの前で私を呼ぶのでドキッとする。「どうする木本やる?」



 そんな…スズキ君に『やる?』とか言われたら断るわけがない!

 スズキ君の方を向いて、こくん、とうなずく私。ちょっとザワっとする教室。

「じゃあ決まり!」と高森先生が言った。「はいみんな、拍手~~~」

パチパチと手を叩かれる私とスズキ君。でも教室の中は、特に女子のみなさんが、ちょっとざわっとしていた。



 

 まあすごい無茶ぶりだけど、本当は動物の世話なんてやりたくはないけど、それでもスズキ君と一緒!

 入学早々こんなラッキーな展開が待っているなんて。

 でもカエルとウサギとフクロウでしょう?ウサギはまだいいとしてカエルは、と小学生の時のキダ絡みのカエルの出てくる思い出がいろいろ浮かびかけるのを頑張って避ける。それでもフクロウは論外だよね。どうやって世話するんだろ。ちょっと怖いかも。猫とか犬だって、見るのは好きだけど世話をしたいとは思わない。ほんと見てるだけでいい。ちょっと触るのさえ、噛まれるかもと思ってビビって出来ないのに。

 …フクロウっていったいどんな餌を食べるんだろう。私フクロウの実物見た事あったっけ?

 でもスズキ君が一緒なら何委員でも頑張れるような気がする。スズキ君とウサギにエサをやる私。スズキ君とカエルのいる水槽の掃除をする私。スズキ君とフクロウを見て怖がる私を優しく見つめるスズキ君。

  

 …あ、違うダメだ…まず私が指名されたせいでスズキ君までとばっちり食ったみたいな感じだから、スズキ君本当はかなり嫌だと思ってるかもしれない…どうしよう…

 


 「木本、」今までになかった優しい声を出して高森先生が改まって言う。「ありがと。引き受けてくれて」

なんだろう、なんか不気味…あんな無茶ぶりの後に。

 それでもその後クラス委員長をはじめ、各委員も決まって放課後だ。

 スズキ君と同じ委員になれた上での一緒に過ごす放課後だ。キダも一緒だけど、今度何か変な事言って来たらちゃんとはっきり言おう。嫌だとか困るとか、もっとはっきりと。



 が、高森先生が教室から出て行くと、何人かの女子のみなさんがわらわらと私の元へ集まって来た。

 「木本ちゃん木本ちゃん?まさかの木本ちゃんてキダ君とも仲良いのにスズキ君の事好きなの?」

後ろの席のクボタさんが代表でこそっと聞く。

 ビックリする。だってこそっとはしてくれたけどスズキ君がそばにいるのに!

クボタさんは続けた。「なんか一緒の委員になれた時、すごいうれしそうだったけど?」

後ろの席からそんな事わかるの!?

「でも!木本ちゃんてキダ君とも仲良いよね」

「…」

「そこどうなの?」

「…」

無言の私にみなさんが声を合わせて聞いた。「「「「「「そこすごく気になるんだけど!!」」」」」」

声が大きい!!



 「いや、えと…」とそばのスズキ君を気にしながら答える。「スズキ君は同中だから一緒になれて安心したなって思って」

「「「「「「安心!!」」」」」」

いやほんと声大きいてみなさん。

「キダ君心配するんじゃないかなぁ」別の、タナカさんかヤマダさんかはっきりと覚えてない子が言う。「一緒に学校来たりしてるのに」

「いや…あの私、別にキダと付き合ってるわけでもないし…」

どうしてそんな事、まだ親しくもないクラスの子たちに言われなきゃいけないのかわかんないけど。「「「「「「「はあ!?」」」」」」」とみなさんがすごむのでびくっとしてしまう。

「じゃあキダ君にはっきり言った方がいいじゃない?スズキ君の方が好きだからって」


 なぜ。

 なぜ高校入学して、目立った子の名前しかまだ覚えられないうちから、そこまで他人の事に口を出されなきゃいけないんだろう。意味がわからん。


 良かった。スズキ君は先に教室を出たみたい。こんなの聞かれなくて良かった。

「ねえごめん」とたぶん…フクダさんだったと思うけどその子が言った。「木本さんにそんな気なくてもね、モチベーション違ってくるんだよみんな。キダ君とか、女子に用意された学校生活楽しくなるための格好のアイテムじゃん。そんなんフリーの方が良いに決まってるし、木本さんがスズキ君の事好きなら、うちら全員で応援するけど」

そういう事!?

 嬉しいけどそれはスズキ君に多大な迷惑を掛ける。


 「木本~~~、どうしたん?」女子の群れの向こうから声を掛けてくれたのはスズキ君だ。

いったん教室出たのに私を見に来てくれたのかな。

「木本行こ」とスズキ君が手招きする。「カワイとかのとこ行って合流しよ」

そういいながら私を囲む女子のみなさんをチロチロ見て気にするスズキ君。

「どうした?」と、私を心配そうに見るスズキ君。

 

 私が答えないので、名前がまだはっきりわからないちょっとぽっちゃり目の子がスズキ君に答えた。

「別にどうもしないよ。委員会、飼育委員とか大変だなってみんなで言ってただけ。ね?木本さん?」

怖いなこの子、しれっとそんなごまかし。でもありがたいから「うん」とうなずく。

「そっか」と明るく受け止めるスズキ君。「フクロウってちょっと怖そうよな。な?木本?」

「うん」

「実はオレ、カエルも苦手かも。絶対ぬめっとしてる」

「「「「「「そうなんだ~~~」」」」」」とそこにいた子たちが笑う。

「じゃあ木本。行こ。カワイとか待ってっかも」

「あれ?今日はスズキ君と帰るの?」とクボタさんが聞く。

「ううん」と首を振る私と、「今日は」と説明を代わりにしてくれるスズキ君。

「今日は中学同じだったやつらで放課後ちょっとだけ会って話そって言ってて」

「「「「「「え~~~~」」」」」」と女子のみなさん。「「「「「「たのしそ~~~~いいな~~~~」」」」」」

ハハハハハ、と笑うスズキ君と笑わない私。

「え~~でもそしたらさ、」とフクダさん。「キダ君が今日も木本さんのこと迎えに来て教室いなかったら困るんじゃない?それか他のヤツと行くな~~とかさ、言ったりしないのかな~~~」

もう~~、嫌だなこの子たち。

 が、「大丈夫」とスズキ君が明るくその場のみなさんに言った。「キダも一緒に行くから」

「「「「「「え~~~~~!!!!」」」」」」女子のみなさんの声が大きすぎる。

「え~~~どうしてどうして?キダ君て中学違うとかって言ってなかったっけ?なんでなんで?それ私たちも参加できる?」

ハハハハハハ、とまた笑うスズキ君。

「いや、キダは木本とか、あと他にもいるけど小学同じだったヤツもいるから一緒に行く。引っ越さなかったら同じ中学だったはずだから。まあ今日はそういうわけだから。話してるとこ悪いけど木本連れて行く」


 ズキュン、と来たよね。みなさんの前で『木本連れて行く』だって。なんかダメだ。急激にニヤついてきそう。

 そこへへキダとアコちゃんが来て呼ばれ、スズキ君と慌てて教室を出た。




 

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