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その反応が

 もしかしてまた驚かせようとしてんの!?今度ははっきり好きだとか言って?でもキダカズミ、恥ずかしそうな顔もしたよね…

「それ、本当の話?」と聞いてしまう。「本当の話じゃないよね?」

「はぁっ!?」

キダのムッとした声にまた言い方が悪かったなと思う。でもしょうがないじゃん。ウソみたいなんだから。

 「いやぁ…でもそんな…だって信じらんないって言うか…そういう感じじゃなかったじゃん小学の時」

「ちゃんと絡みに行ってたろ」

「絡みって…。それ、カエル持ってきて驚かしてたりしてた事とかのこと言ってんの?」

「ほかにもいろいろ絡んだろ」

絡まれたよ覚えてるよ。だから好きとか言われても信じられないんじゃん。

「いやだからその…私を好きだと思ってくれてる感じなんか全然なかったじゃん!」

「好きだから絡みに行ってたけど。あんま言わすなよ。恥ずかしいじゃん」

「他の子にもしてたでしょ?」

「あんま木本のところばっか行ってっと本気で嫌がられるかと思ってセーブすんのが大変だった。絡みたくねえやつのとこにも行ったりな」

「…」

「1回ズルして隣の席代わってもらった事もある」

「マジで!」

「マジで。クワガタと交換で」

「クワガタと交換!?」

やすっっ!



 マジか…

 マジで私の事が好きなのか…小学の時からずっと?好きだからカエル見せに来てたのかこいつ。そんなの嬉しいわけないじゃん!


 が、キダは「まあな」と言った。

「…?」なに?

「今思えばって事だな」と、キダは言った。

どういう事?『今思えば』ってどういう事?

 

 当然聞かなきゃいけない。「どう言う事?」

「小6の修学旅行の時すげぇ楽しかったな」と言うキダ。

話が飛んだし全然答えになっていない。当時は本当はそんな、好きとか思ってなかったけど今思えば好きだったんじゃないかなぁってぼんやりそんな気がするって事?


「でもな、中学の修旅はそこまでじゃねかった」

「…」

「楽しくなかった。木本いなかったから」

ドキッとしてしまう。

 だってそんな事、結構真面目な顔で言われたらキダカズミでもドキッとしてしまう。



 …いや、違うよね。なに、ドキッとかしてるんだろ…こいつはキダカズミだからキダカズミ。きっと一緒の修学旅行だったら、つまんない悪ふざけばっかりされてたに決まってる。悪ふざけ出来る相手としての好きって事か。

「…カズミ君、転校してった先の学校でもずっと悪ふざけばっかしてたの?みんな困ってたでしょ?」

「してねえよ。…いやほんとはちょっとしたけどすぐやめた。あんま楽しくなかったし。断言するけどな、木本がいたからオレは悪ふざけしてたな。木本の反応が見たくて悪ふざけしてたんだって、引っ越して行ってからよくわかった」

 


 悪ふざけしてた自分を私のせいにしてない!?

 ムカムカしてきた。くそ。好きとか言いやがって。ちょっとドキドキもしちゃったじゃん。

「でも私、そんなに反応してない!」

キダカズミが何かやって来ても、驚いたり怖がったりしたら余計されると思って出来るだけ素を装ってたのだ頑張って。ほんとカエルとかノートの上に乗せられてどんだけ気持ち悪かったか。腹立つ。

「まあな」と言って嬉しそうに笑うキダ。「今の言い方可愛かったな」

「はぁっ!?何言ってんの?」

「『そんなに反応してない』って言い方、すげえ可愛かった今の」

「…ほんと何言ってんの?」ちょっと、ていうかだいぶん気持ち悪い。

「その反応が良い感じだったのにな」

良い感じ?何言ってんのかほんと意味がわからん…

「木本がな、」嬉しそうに説明するキダカズミ。「オレのする事ほんとは気持ち悪いって思ってたり止めてって思ってんのに、我慢して何でもない感じを出そうとしてんのが、オレはすげえ好きだったんだって離れてからわかった。オレはそれが見たくて木本に絡んでたんなって。ずっと頑張って普通の顔してる木本の顔いつも思い出してた」





 キモっ!!

 え、なんだろ…キモっ!!

 そりゃあ高校生になって背も高くなって見た目もカッコよくなって帰ってきたかもしれないけど、言ってることバカだよね。小学生の時は迷惑なイタズラ子ザルが今になってこんな事言うなんて余計キモい。

「だからな」とキダ。「こっち帰ることになってもうすげえ嬉しくて。さっき言ったけど中学でこっちに遊びに来た事もあったけど正月とかだったからか木本いなくてな」

 あ~~~でもなんか思い出したかも…キダカズミが遊びに来てたって男子がうれしそうに言ってたのを後から聞いた事があったのだ。

「入試の時もやっぱ落ちたりしたらって思うと言えなくてな。受かったけど木本が受かったか確認すんのも怖くてな。それでまあサプライズの意味もあって今朝迎えに行って。クラスは違うけどな。すげえ残念だけどまあ隣だからな。スズキがいてアレだけどな」

「…」

テレテレに照れながらキダカズミが言う。「今こうやって一緒に帰れて嬉しいって話」

 


 …なんだろ…キダカズミが照れるってなんだろ…普通の男子に言われたらすごいドキドキしそうなのに。それである程度今もドキドキはしてるのに違和感が先に来る。

 だって私がキダに迷惑な事されて、それを何でもないように我慢してしらっとしてたのが好きって言ったもんねはっきりと。

 ちょっとそれって変態じゃないの!?そして頑張ってしらっとしてた私は、そのせいで余計絡まれてたわけでしょ?



 「やっぱなぁ、この際チサって頑張って呼んでみようかな」

「いやそれは止めて!マジ止めて。止めてって今朝もちゃんと言った」

畳みかけるように拒否したらキダカズミは面白そうに笑った。

「いやはっきりは拒否られてはいねえと思う」

そんな事はない!じゃあもっとはっきり言わなきゃ!

「いや絶対呼ばないで」

はっきり、きっぱり言った私を今度は照れずにじっと見つめるキダ。思わずちょっと目をそらしてしまうと、「なんで?」と、聞いてくるキダだ。

「なんでって…呼ぶ必要ないじゃん!ずっと木本って言ってたのに。…どうしたの急に…今日から急に変になってんじゃないの?」

ハハハ、とキダが笑う。「いや変ではない。今ちゃんと告ったし。木本だってオレの事下の名前で呼んでんじゃん」

「それは小学校からそうだったからだよ!何言ってんの?他の女子もみんな呼んでたでしょ?…あっ、じゃあ!私もキダ君て呼ぶから」

「バカか!下の名前で呼んどけよ」

「…」



 告ったって言ってるけど、私の事を好きなのは思い違いだ。キモい勘違い。

「オレは木本がやまぶき高校に行くって聞いたから」

「へ!?」

「オレもここ、近いからいいかなって受けた。一緒に行けるし普通科行こうと思ってたし」

ウソでしょ!?ウソでしょウソでしょウソでしょ…

「でも受験の時いなかったよね?そう言えば」

「県外枠の試験だからな。受験日違ったと思う」

そっか~~~。


 「ねえカズミ君、嘘だよね?そんなんで高校選ばないよね?」

なんか情けない声で聞いてしまう。

「ハハハ…」と笑った後、キダは小さい声で「可愛いな」とぼそっと言ってから続けた。

「いや嘘ではねぇって。まあここと南高とどっちにしようかほんとは迷ったけどな。こっちが家からも近いし」

「ウソでしょ?」

「だから嘘じゃねぇって」

「…やだ…」

 つい口から洩れたが、それを聞いたキダが嬉しそうな顔で私を見る。

 こいつおかしいよね。絶対おかしい。へへ~~っと笑うキダが気持ち悪い。なんか走って帰りたくなって来た!



 「木本は2年になったら文系行くん?」

また話変えて来た!

「なあ文系よな」ともう一度聞くキダ。

「…わかんない」

今いろんなこと言われて頭いっぱいなのにわかんないよそんな事聞かれても。でも数学苦手だし理系もダメだし…

「オレは理系だから来年もクラス違うかな」とキダが言う。「でもまあ同じ学校だからな」

今からちゃんと決めてるんだ!!騒がしい子ザルだったキダが!

 びっくり。


 …ていうかこの高校に入学したって事は私と同じくらいの成績って事?あんなに悪さばっかりして、教室に居ない事もしょっちゅうだったし、本当にまるきり先生の話を聞いていなくて、小学生の時は名前さえも書かずに答案提出して、それでもそれがキダの答案だって先生はわかるから、次はちゃんと名前は書いてください、って赤ペンで書いて返されたのを見たのも1回か2回ではない。宿題だって全くやらないで怒られてばっかりだったのに。実際私は隣の席だった時に何回か白紙で0点の答案も目撃していた。

 それなのに同じ高校。しかも私は結構頑張ってここに入った。そしてキダは理系に行くってもう決めてる。…って事は私より確実に成績良いんじゃないのかな…

 マジか…「カズミ君…もしかして成績いいの?」

「じゃあ今度一緒に勉強するか」

「…」

その『じゃあ』は何の『じゃあ』だ。




 

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