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背中

作者: くーてら

どこにでも居そうな父と子の不器用な関係を書いてみました。

父が家庭内カーストの頂点に君臨するという昔ながらの家庭で僕は産まれた。

血の気の多い父は怒ると罵声とともに物を飛ばしてきた。

いつも、家庭内で気を遣いながら生きていくそんな幼少期を僕は過ごしてきた。

これからの話は人より臆病で不器用な僕の話である。


父は僕と正反対の性格をしている。

仕事で鍛えられた父の性格はいわゆる体育会系と呼ばれるものに近く

気性が激しかった。

そんな父はくよくよする僕を激しく嫌がった。

お腹が痛いと言う僕をトイレの外で待ち説教を喰らうこともしばしばあった。

僕もそんな父が次第に嫌いになっていった。

不思議な話ではあるけれど嫌いという感情はお互いに伝わった。

隠しても隠し切れない雰囲気というやつがきっと滲み出ていたからであろう。


僕は父と関わらないことを心に決め、話すときは必ず機嫌を伺った。

その事も父は勘付いていたに違いないが僕は父との会話方法をこれしか知らなかった。


その後も色々な困難が僕を襲ったがその度に自身の打たれ弱さを呪った。

不器用さが生んだ先輩とのトラブルに寝れない日もあった。

それでも、僕は必死にもがいて生きてきた。

何とか高校を卒業し社会人になったものの、半年を過ぎて仕事を辞めた。

辞めた理由は僕自身はっきりと分からなかったが日々身体に訴えてくるものに

僕は耐え切れなかった。


僕は病院に通った。

薬を飲みながら一時的な安堵を得る毎日を過ごした。

一瞬の安堵の後に訪れる負の感情のスパイラルは日に日に僕を追い詰めた。

身体を掻き毟ることで、ひたすら食べることで

僕は必死に安堵を求めた。

父に見つかることを恐れていたが父は僕の異変に勘付いていた。


父はある日僕を食事に誘った。

父と二人で食事することに激しい抵抗があったが父の譲れないという目を見て僕は観念した。

お店に行くまで僕は無言で父の背中を追った。

あんなに大きく見えた背中は小さくなっていた。

日々の仕事を耐え続ける父の姿を始めてしっかりと目で見た僕は言葉がでなかった。

今まで父を嫌悪していたけどほんの少しだけ父に対する尊敬の気持ちを持った。


食事をしながら父と久々に話をした。

どこか気を遣いながらの会話は相変わらずだったけれどいつもより少し楽しかった。


後日、父なりに僕のことを気遣っていると母から聞いたとき僕は驚いた。

僕はてっきり嫌悪されていると思い続けていた。

不器用ながらの父の愛情。

性格は違えど不器用なところは僕にそっくりだった。


「しっかりするんだぞ」

父は僕にそういうと我が家を離れ、一人で社会という名の戦場へ向かった。

僕は遠く小さくなっていく父の背中を見えなくなるまで見つめ続けた。

あの背中を越えれる日がいつ来るか分からないけれど

今日はいつもよりも少しこれから始まる自分との戦いに強い気持ちを持って臨もう。そう思った。



今回が始めての投稿になります。

アドバイスや感想など言っていただけると凄く励みになります。

よろしくお願いします。

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