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壊れた町で・2

 シド兄がクソ竜をぶっ殺した後、すぐに始まったお祭り騒ぎ。

 別に騒ぎたい気分じゃなかったし、離れようとしたオレを無理矢理つきあわせたあげく、「おまえはまだ子供だろーが、あいつらはもう帰ったぞ! おまえも早く帰れ」などと言い放つミラ姉ちゃんから解放されたのは大人達が充分に酔った後、夜遅くになってからだった。


 家への道を歩きながら、ぶっ壊されて粉々になった建物をみてオレの家もそうなっていたらどうしようか考える。


 壊れた家の前で眠る?

 どう考えても危険だ。

 それならあの大人達の所に戻る?

 戻った場合を想像して、一人落ち込む。

 あの大人達のお祭り騒ぎに、もう一度参加するのはゴメンだ。


 もし家が壊れていたら、もう土魔法で何か作ってそこで寝てしまおう。

 勝手に魔法で建物を作るなと言われているが、しょうがないだろう。

 たとえ明日の朝、怒られるとしても外で寝たり、祭りに再参加するより、そうする方がよっぽどいい。


 そう決めてオレはいつもなら家が見えるようになる曲がり角を目を瞑って進む。


 どうか家が無事でありますように!


 そーっと薄目を開く。

 そこの通りには、竜の襲撃なんて無かったかのように綺麗な家々が並んでいた。

 オレは深く息を吸い込み、そして吐き出す。

 家までの距離を一気に走り抜け、扉を開け、家に入る。


 安心感と感動がオレの胸を満たしていく。

 オレは家に帰ってきた。

 オレの住む家は無事だった。

 誰もいない家の中で一人、ガッツポーズをして喜びを噛みしめる。

 よかった。

 オレは明日の朝を怒られることなく、迎えられそうだ。 安心と同時にやってきた眠気に誘われるように、ベッドへと向かおうとしたところで家の玄関をノックする音に気づく。

 無視しようかと思ったけれど、そのノックの強さにオレは扉の向こうに居る人物に思い当たり、扉を開ける。

 扉の向こうに居たのはアリサで、その顔は少し悲しげだった。

 いつもと違う雰囲気に思わず、「可愛い」と口走りそうになって焦る。

 そんなオレの焦りを無視するようにアリサが口を開く。


 「家族が死んだみたい。だから私、これから親戚の家にいこうと思う」


 はい?

 アリサの発した言葉に理解が追いつかない。

 家族が……死んだ?

 親戚の家に行く?

 これから?

 これからって何時?

 もしかして今すぐ?


 混乱するオレの頭はオレに予想外の行動を起こさせる。

 オレは気づいたらアリサを抱きしめていた。

 そしてオレの口からは凄まじく気障な台詞が流れ出ていく。


 「ごめんな。オレも一緒に行くよ。オレが、アリサの事、ちゃんと守るから」


 自分の口からでた台詞なのに、耳から入ってくるその台詞にオレの顔が真っ赤に染まる。

 腕の中に熱さを感じ、アリサを見るとアリサもまた、顔を真っ赤に染めていた。


 「え、えっと、あ、あの、私は、べ、別に、あんたなんかに、えっと……」


 アリサは明らかにパニックに陥っている。

 オレはそんなアリサを見て、少しだけ冷静さを取り戻す。

 いつもやられてばかりだったオレはここでアリサに仕返しをする事を決意し、さらなる言葉を紡いでいく。


 「これからもオレとずっと一緒にいてくれないか?」

 「え、えぇ? そ、そんなの、相棒なんだから、当たり前、でしょ?」


 真っ赤な顔のまま返事をしてくれるアリサ。

 その顔を、その目をまっすぐ見つめながら、言う。


 「相棒とか、そういう事じゃなくて、オレとずっと一緒に居てほしいんだ」


 そしてアリサの顔へとオレの顔を近づける。

 オレは薄目になり、唇を近づけていく。

 アリサは戸惑いながらも、だんだんと近づくオレの唇を注視し、受け入れるようにその目を閉じる。

 オレはその様子を確認すると、そっと唇を触れ合わせる。

 その瞬間、オレの頬に衝撃が走り、オレは目を開けた。

 目の前には潤んだ瞳で睨んでくるアリサが居る。

 なんだ? なにが起きたんだ?


 「こ、この! バカ! 人前でなに考えてんの!」


 そう言ってアリサは走り去って行ってしまう。

 人前?

 人なんて居ないはずだが……。

 オレは後ろを振り返る。

 そこには気まずそうに立ちすくむシャロンとユキが居た。


 「あ、あのごめんね。ロビン兄ちゃん」


 ユキは申し訳なさそうに、そう言うと固まっているシャロンを引っ張り、部屋へと戻って行く。

 残されたオレは、乾いた笑いを吐き出しながらその場で動かぬ石像と化した。


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