壊れた町で・1
町に破壊と死をもたらしてくれた神が討たれたその日の夜、“家”に帰りついた私が目にしたものは瓦礫の山だった。
そしてその瓦礫の山は神によって作られたものではない。
私はそこに並ぶ色違いのレンガを見てそのことを確信した。
ぱっと見ただけでは不自然では無いように、巧妙に並べられた色違いのレンガ。
それが示すのは、この“家”に集う“家族”にだけわかる暗号。
“家族”以外にはわからないだろうが、それが残されていたということは、この“家”は放棄されたという事だ。
私はその暗号を見て、周囲を見回す。
当然だけど“家族”の姿は見えないし、この様子からして生き残って居るとも思えない。
“家族”の代わりに、瓦礫の山に陣取る騎士が見えて、私はトッサに身を隠す。
騎士が瓦礫をどけ、そこに埋まっている何かを探しながら喋っている。
「どうだ? 何かあったか?」
「全然……何もない。そっちこそ、どうなんだ?」
「こっちもだよ……」
騎士達は目当ての物を見つけられないようで、その落胆ぶりは遠目に見ても明らかだ。
だけど、それは当然の事で“家族”が“家”を放棄したのなら、重要な資料どころか、些細なメモ一つ残してはいないはずだし、そうやって消された資料をただの騎士が見つけられるわけがない。
騎士が探索を続けて瓦礫を動かし、暗号が崩れていく。
私が暗号を確認できたのは幸運だったようだ。
もうすこし到着が遅れていれば、暗号は読めなくなっていたことだろう。
そうなってしまっていた場合を想像すると寒気が背中を走った。
私はそのまま騎士達に見つからないように気をつけながら、監視対象である私の相棒の元へと向かう。
暗号に従うなら、やることは山積みだ。
まずは監視対象に不信感を与えず、この町を離れる言い訳を考えなければいけない。
私は走りながら少し考えた後、ロビン程度どうとでも言いくるめられる事に思い当たり、言い訳を考えるのを止めた。
そしてロビンの家にたどり着いた私は、ロビンが出てくるなり口を開く。
「家族が死んだみたい。だから私、これから親戚の家にいこうと思う」




