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NHB  作者: ネンネコ
1/1

戦いの火蓋

ノクタでも精力活動中っ!!w

奴が来る。



この気配は・・・・・・・・・・・・・



間違いない。



が来る。


ソレは主に、完全に脱力した夕方から夜半にかけ、なんの前触れもなく、唐突に姿を現す。

戦慄と恐怖。実態のない悪霊にも勝る、そう、俺にとってはあの世からの訪問者に等しかった。


1Kの汚い間取りから玄関とは呼べない小さな靴置き場に隣接した、すぐ隣りのユニットバスへと歩を進めた矢先、突如、そうした濃密な気配が俺の全身の動きを硬直させた。


それは草食動物が常に周囲に対し気を張っているのと同様で、アンテナ地味た危険信号がまさに簡素な作りのユニットバス、そのドアノブを掴む間際、瞬間的な速さで俺の脳裏、そして全身を電気的速度で駆け抜けていった。


俺の直感はいつも当たる。しかも、悪いの直感は。


2ヶ月前、チャイムボックスに入っているバッテリー、電池・・そのものごと外したのに奴が気付いたのか、カチカチと多少乱暴に反応のないインターフォンベルを押す音が玄関越しに伝わってきた。



続いてすぐ。


間を空けぬよう。



コンコンっ・・・・・・・・コンコンっ・・・・・・・


少し遠慮がちに薄いドアをノックする音が俺の固まったままの全身、その梗塞した心臓そのものを叩く具合に振動した。




動くなっ!!そして・・・・・・




なにも触るなっ!!




ドンタッチミーっ!!




脳幹から送られてくる命令より先に俺の肉体そのものが、そこに初めから存在しない幽霊の如く、影法師のよう実体を亡き者にしていった。









「すいませーん!…NHBの徴収に参りましたー!いらっしゃいますよねー??」







壁に掛かった時計の時刻、その秒針がいつもより妙にハッキリ聞こえた。







カチッ!・・・・カチッ!・・・・・カチッ!・・・・





初夏の日暮れ時、午後5時50分を少しばかり回った所で、確実に在室していると解る居室の明かりを外側から確認した上で集金に来たプロの仕事ぶりだった。


この惨劇とは不可逆的に、賃貸とは言え小さな、文字通り猫の額ほどのベランダ側の窓からは、いまだ家に帰るのが名残り惜しそうな子供達の遊び回るハシャギ声が聞こえてくる。




しまっ・・・・・・・・・・・・・・・った!!・・・・・





俺の額からヒトスジ流れ出た汗が映画のワンシーン、スローモーションで廊下の床に落ちるその間際、俺は反射神経的に裸足のつま先を伸ばし、その音をうまい具合に吸収させたつもりでいた。






「あれ?…おっかしいな。いらっしゃいますよね?」






イラッシャイマスヨネ?・・・・・・・・・・・・










そうしたセリフっ!




強烈なボディブローのよう俺の心を掻きむしるその徴収員の精神的プレッシャーとは対照的に、点けっぱなしにしてあるテレビの音量が今は憎々し気なほど明るい声量のもと明日の天気などを伝えている。






頼む・・・・・・・・




今は・・・・・・・・・・・・・・




頼むっ!!


今だけはっ・・・・・・・・・・


今だけは静かにしていてくれっ!・・・・・・・・・・・・・・・・・






「すいませーん!わたしも仕事なもんでね・・・お宅から集金せんことには帰れんのですよ」





完全に在室しているであろうテイでそう言ってくる徴収員が、ことのほかその生業の真髄を極めしプロを俺に想起させ、早鐘のよう乱打される心臓の音がよもや聞こえはしないだろうか?と俺は一度、強く目を閉じた。






「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」






お互いそうしたまま数十秒、何も喋らぬ、という戦闘・・スタイルは尚も俺の鼓動を加速させはしたが、目を閉じ深い瞑想を続ける高尚な僧侶のよう、今はただ、ただ精神を集中させ続けることに成功していた。






どの位の時が流れたのだろう・・・・・・・





しかしっ!



初めに動き出したのは俺の方だった。



ゆっくり、ゆっくりと気配を殺しながら、決して影にならぬよう俺はそのボロアパート、薄い玄関ドアの半ば中央、やや上側に付いている小さな凸レンズ的覗き窓を遠くに伺うよう外界の様子を探った。


片目をつむり、卓越したスナイパーのような俺の顔を、この季節にしてはやけに陽の長い夕日が紅き閃光となって染めていく。






まだっ!






まだるっ!!!!!



中年とおぼしき徴収員の顔がハッキリと視認できたと同時に、標的であるが思いもかけぬ行動に出たのがレンズ越しに見えた。










笑み。




俺に向かって。



凸レンズ越しの笑み。






俺は素早く身を反転させると同時に小さく喘ぎ、マブタに焼き付いたこの世の者ではない、見てはいけない者を見てしまった愚者のよう、口を抑えながら一切の物音、そして気配を完全に押し殺した。

肌の穴という穴から重油のような濁った脂汗が滲んでくるのが体感的に分かると寒気にも似た震えが足元から登ってくる。




「ほら・・・やっぱりいらっしゃるじゃないですかぁ!…本当はね、半年分…2万4千円と言いたいところですが…いいですよ。いいですもう。分かりました。そこまでは言いません…ええ、言いませんとも。1ヶ月分、4千円だけでも払ってもらえないでしょうかね?…どうですかねぇ?これでお互いウィンウィンの関係でしょう」




ウィンウィンっ!!



にわかに。


それは。




動揺・・・・・・・・・



1ヶ月分・・・・・4千円でいいのか・・・・・・・・・





そうした・・・・・・





いわば。












妥協案っ!!





馴れ合いっ!・・・・・・・


これは・・・・・・・・講和条約っ!・・・・・



籠城っ!・・・・・・・・


城に立て篭り、敵と戦うこと


まるで。

城の明け渡しにも似たっ!・・・・・



講和交渉っ!・・・・・・・



動揺っ!!!




心にっ!広がるっ!!動揺がっ!!




わずかに俺の心が揺さぶられ思わずその甘美な言葉に内側のキーを回しそうになる片手を、理性を失っていないもう片方の手がすんでの所で抑えつけてるのが解った・・・・・

ノクタにも遊びにきてねw(^.^/)))

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