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チェックメイトの一手先  作者: 八海宵一
16/40

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「いでで、いででで」

 馬車に乗るなり、ヴィスは(ほお)をつねられた。

「あに、ふんはほ!」

「いったでしょう、仕事中は勝手にしゃべらないでくださいと」

「仕事の話は終わってたじゃないか!」

 トリアの手を払いのけ、ヴィスが反論した。

「そういう問題じゃないでしょう。なんの考えもなしにケーナバルト王と会って、どうするつもりなんですか? ヘタをすると私まで、(ろう)に入れられる可能性があるんですよ!」

「な、なんだよ、ただ、会うだけじゃないか」

「いえ、あなたは絶対に、なにかしでかします」

 断言するトリアに、ヴィスは舌を出した。また、頬をつねられた。

「いでで、いひゃい、いひゃい! わかっひゃ、わかっひゃから、手を放してふへ!」

 トリアは手を(ゆる)め、頬を放すと、大きなため息をひとつした。

「とりあえず、謁見が終わるまでは従者でいてもらいますが、勝手な行動は、くれぐれも(つつし)んでくださいよ」

「わかってるよ」

 念を押されたヴィスは、つまらなさそうに口を(とが)らせた。

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