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「無能なガラクタ令嬢」と婚約破棄されましたが、喜んで辺境の氷の公爵家に嫁ぎます!(プロット)

作者: 紅茶
掲載日:2026/04/21

第一幕:無能令嬢、念願の自由を得る


「リゼット・ヴァン・ルージュ! 貴様のような無能で陰気な女は、私の婚約者にふさわしくない! 今この時をもって、婚約を破棄する!」


華やかな王立学園の卒業パーティー。


王太子である殿下の高らかな宣言が響き渡ると、ホールはシンと静まり返った。彼の腕には、私の腹違いの妹がぴったりと張り付き、勝ち誇ったような笑みを浮かべている。


(……きた、きた、きたぁあああっ!)


私は内心でガッツポーズをした。


前世、ブラック企業で過労死した私は、この魔法ある異世界に転生して以来、あるものに心を奪われていた。それは「魔法陣」だ。数式と魔力の美しい幾何学模様! ロマンの塊!


しかし、王太子妃教育に忙殺され、愛しの魔法陣研究は常に睡眠時間を削ってコソコソ行うしかなかったのだ。


「私には、この可憐なマリアこそがふさわしい。お前のようなガラクタ令嬢は、辺境の『氷の公爵』の元へでも追放されろ!」


氷の公爵。


呪いを受け、関わる者すべてを不幸にすると恐れられている、辺境の冷酷無比な大貴族。


(辺境! つまり王都のしがらみゼロ! しかも『呪い』って、未知の魔法陣の可能性大じゃない!?)


「……謹んで、お受けいたします」


私は悲痛な顔を取り繕って深く一礼し、足取りも軽く王都を後にした。




第二幕:推し(魔法陣)との出会い


馬車に揺られること十日。


雪に閉ざされた辺境の公爵邸で、私は彼と対面した。


「……よく逃げずに来たな。だが、私に近づくな。呪いが伝染るぞ」


アルベル・フォン・グレイシア公爵。


噂に違わぬ長身と、凍てつくような銀髪。そして何より目を引いたのは、彼の右半身をびっしりと覆う、禍々しい黒い痣だった。


瘴気を放つその痣を見た瞬間、私の脳内で何かが弾けた。


「あっ、あっ……!! これ、幻の第三期古代ルーン文字の変異型ッ!? しかも自己増殖型の術式が二重螺旋構造で組み込まれてる!? 嘘、生で拝める日が来るなんて!!」


「……は?」


私はドレスの裾を踏みつけながらアルベル様に突進し、彼の顔を両手でガシッと掴んだ。


「ひっ、至近距離で見ても美しい……! 素晴らしい構築式です! でもここ、魔力のパスが少し淀んでますね。あー、なるほど、この遅延式が原因で痛みが……」


「おい、お前、何を……っ! 離れろ、呪われるぞ!」


「あ、大丈夫です。これ、ただのちょっと複雑な古代魔法陣なんで。ええと、ここをこうして、逆位相の魔力を流し込んで、ここの結び目を解けば……はい、解呪おわり!」


ぱぁんっ! という軽い音と共に、彼の体を覆っていた黒い痣が光の粒子となって砕け散った。


「……え?」


呆然とするアルベル様。呪いが消えたそのお顔は、国宝級の超絶美形だった。


私は満足げに頷いた。


「いやぁ、素晴らしいものを見せていただきました! ところで、このお屋敷の図書室に古代魔導書はありますか? 徹夜で読破したいのですが!」


目を輝かせる私を、アルベル様は信じられないものを見るような、それでいて熱を帯びた瞳で見つめていた。


「……君は、恐ろしくないのか?」


「何がですか? あんな美しい魔法陣、恐ろしいどころか芸術ですよ!」


私がそう断言すると、彼はふっと、氷が溶けるような優しい微笑みを浮かべた。


「そうか。……なら、君には私のすべてを管理してもらおう。図書室の鍵も、財庫の鍵も、すべて君のものだ。好きなだけ研究するといい」


それからの日々は、まさに天国だった。


豊富な資金と魔導書。そしてなぜか、アルベル様は隙あらば私に極上のスイーツを差し入れし、髪を撫で、甘い言葉を囁いてくるようになった。


「リゼット、今日も可愛いな」「無理はするな、私が添い寝してやろう」


……過保護すぎる気もするが、研究の邪魔はされないのでヨシとする!






第三幕:ガラクタの真価と最高のざまぁ


私が辺境で充実したオタクライフを満喫して数ヶ月後。


公爵邸に、息を切らした元婚約者の王太子が乗り込んできた。


「リ、リゼット! 迎えに来てやったぞ! 今すぐ王都に戻れ!」


彼は目の下に酷いクマを作り、ゲッソリと痩せこけていた。


聞けば、私が王宮の各所にこっそり描いておいた「書類整理自動化魔法陣」や「魔石効率化魔法陣」が魔力切れで停止したらしい。


さらに妹は浪費ばかりで全く役に立たず、国の政務が完全に麻痺しているとのこと。


「お前がいなければ、国が回らないのだ! 仕方ないから、側室としてなら戻してやっても……」


その言葉が終わる前に、凄まじい冷気が部屋を包み込んだ。


アルベル様が、抜身の剣のような殺気を放って王太子の前に立ち塞がった。


「私の婚約者に、気安く話しかけるな」


「ひっ……! こ、氷の公爵! なぜ呪いが……!」


「彼女が解いてくれた。お前たちのような愚か者が手放した『至宝』は、今や私が全霊をかけて愛し、守る存在だ」


アルベル様の冷酷な宣告に、王太子は顔面を蒼白にして私にすがりつこうとした。


「リゼット! お前もこんな辺境より、王都がいいだろう!?」


私は手元の羊皮紙から顔を上げ、心底嫌そうにため息をついた。


「え? 戻る? 嫌ですよ。王宮の書物なんてとっくに読み尽くしましたし。ここ、最高の研究環境なので」


「なっ……」


「それに、今まさに第四期古代ルーンの複合展開式の実証実験中で、ものすごくいい所なんです! 集中力が途切れるので、用がないなら帰っていただけますか? 邪魔です」


私がオタク特有の早口でピシャリと言い放つと、王太子は絶望の表情を浮かべ、公爵家の騎士たちによって文字通り「つまみ出されて」いった。


噂によれば、その後彼は廃嫡され、妹と共に重労働の刑に処されたらしい。


「ふふっ。邪魔者は消えたな」


背後から、アルベル様が私をすっぽりと抱きしめた。


彼の大きな手から、新しい古代遺跡の調査報告書がヒラヒラと差し出される。


「今度の休み、この遺跡の封印を解きに行かないか? 君と二人きりで」


「っ!! 行きます! 絶対に行きます!」


私が勢いよく振り返ると、彼は嬉しそうに私の唇に軽いキスを落とした。


前世は過労死した限界社畜だったけれど。


大好きな魔法陣と、私を底抜けに甘やかしてくれる推し(旦那様)に囲まれたこの生活は——どうやら、最高にハッピーエンドらしい。

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