05
酒屋を出たあと、リシェルはレイチェルを連れて小さな家へ戻った。
「ここが……アメリア様が暮らしていた場所かい……」
レイチェルは胸を押さえ、静かに部屋を見渡した。
エルネストはまだ眠っている。
レイチェルはその寝顔を見て、そっと微笑んだ。
「……あの子は、アメリア様にそっくりだね。
今日からあたしが守るよ。準備しておくから、あんたは行っておいで」
「お願いします。あとで合流します」
リシェルは深く頭を下げ、外套のフードをかぶった。
(……次は、情報屋)
城下町の外れ、さらに奥へ。
昼間でも薄暗い路地を抜け、古い倉庫のような建物の前に立つ。
情報屋──
前のループで何度も利用した、裏社会の“目”と“耳”。
便利だが、報酬は高い。
見返りを要求されることもある。
だが、この計画には彼の協力が不可欠だった。
(必ず契約する。今回は……絶対に)
ギィ……と扉を押し開けると、
薄暗い部屋の奥で、男が足を机に乗せて座っていた。
「……おや。珍しい顔が来たね」
低く、乾いた声。
その声を聞いた瞬間、リシェルの背筋がわずかに震えた。
前のループで、何度も聞いた声。
「久しぶりだね、リシェル嬢。
……いや、今回は初対面ってことになるのか?」
男は薄く笑った。
その笑みは、何もかも見透かしているようだった。
リシェルは一歩踏み出し、静かに頭を下げた。
「あなたの力が必要です。
報酬は……できる限り払います。
どうしても、協力していただきたい」
男は片眉を上げ、興味深そうにリシェルを見つめた。
「ほう……そこまで言うってことは、よほど大きな仕事だね。
で? 今回は何を暴きたい?」
リシェルは迷わず答えた。
「アメリア・ヴァルター様の濡れ衣を晴らし、
彼女を貶めた者たちを……すべて暴きます」
部屋の空気が、わずかに揺れた。
男はゆっくりと椅子から身を起こし、
机に肘をついてリシェルを見据えた。
「……面白い。
その仕事、乗ってやるよ。
ただし──相応の代価は払ってもらう」
リシェルは迷わず頷いた。
「覚悟しています」
こうして、
リシェルは最初の協力者──情報屋との契約を結んだ。




