04
三人は店の奥のテーブル席に座り、リシェルは静かに口を開いた。レイチェルとルシアンの視線がリシェルに注がれた
「……これからお話しすることは、常識では考えられないことかもしれません。
ですが、アメリア様の願いを叶えるために必要なことです」
二人は息を呑んだまま、リシェルの言葉を待つ。
「私は……エルネスト様を、この国の王にします」
沈黙が落ちた。
レイチェルは目を見開き、ルシアンは驚きのあまり言葉を失った。
「……王に……? 三歳の……あの子を……?」
レイチェルが震える声で呟く。
「突拍子もない話だと思われるでしょう。でも……アメリア様は、最後にこう言われました。
『エルネストを……お願いね……あの子は……優しい子だから……』と」
リシェルは胸に手を当て、強く言い切った。
「私は、その願いを叶えます。
アメリア様の名誉を取り戻し、エルネスト様を正当な王子として立たせ、
ゆくゆくは王位に就ける道を作ります」
ルシアンはゆっくりと息を吸い、拳を握りしめた。
「……姉上の……願い……。
ならば、俺は従う。ヴァルティアの血として……必ず力になる」
レイチェルも涙を拭い、強い目でリシェルを見つめた。
「アメリア様のためなら……あたしは何だってするよ。
アメリア様の息子を守るためなら、命だって惜しくない」
リシェルは二人に向き直り、役割を告げた。
「レイチェル様。あなたには……エルネスト様の世話と護衛をお願いしたいのです。
アメリア様の筆頭侍女だったあなたなら、あの子の世話だけではなく、教育も行えるのではないのでしょうか。そして、ヴァルティアでは侍女も武道の心得を持っておられそうで、護衛として守っていただきたいのです。」
レイチェルは深く頷いた。
「あの子は……アメリア様の宝物だからね。
身の回りの世話、ある程度の教育、護衛まで任せな」
リシェルは次にルシアンへ向き直る。
「ルシアン様には……協力者を集めていただきたい。
祖国ヴァルティアの生き残り、あなたに忠誠を誓う者たちを……もう一度、集めてほしいのです」
ルシアンの瞳に、かつて王子だった頃の光が宿った。
「……わかった。
散り散りになった仲間たちを探し出す。
姉上のために……そして、ヴァルティアの誇りのために」
リシェルは二人を見渡し、静かに頭を下げた。
「ありがとうございます。
これで……アメリア様の願いに、一歩近づけます」
レイチェルは涙をこらえながら微笑み、
ルシアンは力強く頷いた。
「すぐに動くよ」
「俺もだ。今日から始める」
こうして──
リシェルの復讐と再生の計画は、静かに動き出した。




