03
リシェルは、アメリアの遺体を火葬し小さな骨つぼに入れて、小さな2人だけとなった家に置いた。
(アメリア様、いつか必ず王家の墓に埋葬してみせます。それまではまだここで、私たちを見守りください)
リシェルは骨つぼへ向かい祈る様に手を合わせた。
リシェルは、小さな家の一部屋──自分の部屋にこもり、決意を新たにこれからの計画を本に書き出した。
1. 協力者への接触
2. 情報屋との契約
3. ラウル、伯爵家への復讐準備
(よし、まずは今後も協力し合えるあの人と会わないと)
リシェルは城下町の外れ、廃れた商店街へ向かった。
メイド服から、お世辞にも綺麗とは言えないワンピースに着替え、上からフード付きの外套を羽織る。
商店街の一番奥──営業しているのかも分からない古びた酒屋の戸を開けた。
ギィィ……
奥には酔いつぶれた客が一人。
カウンターには、やつれた五十代ほどの女性が立っていた。
鋭い目つきだが、光を失ったような瞳。
「あんた、見ない顔だね……若い娘が来るとこじゃないよ」
吐き捨てるような声。
「こんにちは。いきなりすみません。
ヴァルティア王国でアメリア様の筆頭侍女をしていた──レイチェル様ですね」
その名を聞いた瞬間、女性の目が大きく見開かれた。
「あんた……何者だい。どこでそれを聞いた?」
リシェルは動じず、静かに続けた。
「私はアメリア様に仕えていたメイドです。
……アメリア様は数日前に亡くなりました。
私には、あなたの力が必要です」
「な……何を言って……アメリア様が……亡くなった……?」
レイチェルの目に、みるみる涙が浮かぶ。
その時、奥で倒れていた酔客が椅子を引きずりながら立ち上がった。
「……アメリア……?」
酒臭い息。掠れた声。
だが、その瞳だけは鋭く光っていた。
男はふらつきながら近づき、レイチェルの肩に手を置く。
「レイチェル……今の話、本当なのか……?」
レイチェルは苦しそうに目を伏せた。
「……アメリア様は……亡くなったそうです。」
男はその場に崩れ落ち、拳を震わせながら床を叩いた。
「……姉上……」
その言葉に、リシェルは息を呑む。
「……あなたは……」
男は涙に濡れた瞳でリシェルを見つめた。
「俺は……アメリア・ヴァルティアの弟。
滅んだヴァルティア王国の第二王子──ルシアンだ」
レイチェルが続ける。
「この人は……国が滅んだあと、アメリア様に頼まれて、命からがら連れてきたんだよ。
でも身分を明かせば命が危ない。だから……ずっと動けずにいた」
ルシアンは拳を握りしめたまま、震える声で言った。
「姉上がどんな扱いを受けていたか……ここに居ても知っていた。
だが……俺には何もできなかった。国も……姉上も……守れなかった……!」
(前のループでお会いした時は、アメリア様の亡くなって数年後だった。その時はもっと正義感に満ち溢れていて、ヴァルティア王国の復興に勤しんでおられていたわ、この時期はこんな風だったのね)
リシェルは静かに膝をつき、ルシアンと目線を合わせた。
「ルシアン様。アメリア様は濡れ衣を着せられ、追放され、誰にも看取られずに亡くなりました。
私は……その真実を必ず正します」
「……真実を……?」
「はい。アメリア様を貶めた者たちを暴き、名誉を取り戻し、王家の墓所に眠っていただく。
そのために──協力者が必要なのです」
レイチェルは涙を拭い、深く息を吸った。
「……あたしはアメリア様に仕えた者だよ。あの方の名誉を取り戻せるなら……命だって惜しくない」
ルシアンもゆっくりと立ち上がる。
「俺も協力する。姉上のためなら……何でもする」




