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ループメイドの復讐 〜第13王子に王冠を捧ぐ〜  作者: 紬衣琉


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2/10

02

ここはヴァルター王国の王城。

その片隅にある、かつて使用人が暮らしていた小さな家。

今は、王宮から追いやられた第10妃アメリア・ヴァルターがひっそりと暮らしている場所。


そして――そのアメリア様は、今まさに息を引き取った。


「……アメリア様……」


八十一回目でも、慣れない。

慣れたくない。


薄い布団の上で、アメリア様の手はもう温かくなかった。


そのすぐ隣で、小さな寝息が聞こえる。


ベッドの端に寄せられた小さな身体。

金色の髪がふわりと揺れ、幼い頬が布団に沈んでいる。


エルネスト・ヴァルター。

ヴァルターン王家の第13王子。

まだ三歳の、あまりにも小さな子。


母の死を知らないまま、静かに眠っている。


(……また、この瞬間から)


涙は枯れたはずなのに、胸の奥が痛む。

けれど逃げられない。

ここがループの始まり。

アメリア様の死が、すべての起点となる。



アメリア・ヴァルターは、もとは小国の王女だった。

戦に敗れ、和平の証としてこの国へ嫁いだ。

美しく、心優しく、王の寵愛を受けていた。


――だからこそ、妬まれた。


他の妃たちは、アメリア様が王に愛されることを許さなかった。

そしてある日、彼女は“他の男と通じている”と濡れ衣を着せられた。


虚偽の証言をしたのは、宮廷書記官ラウル・ヘルマン。

アメリア様に想いを寄せ、拒絶されたことを逆恨みした男だ。


ラウルは買収した医師から“ほくろの位置”を聞き出し、それを王に告げた。

王はそれを密会の証拠と信じ、アメリア様を追放した。


その結果、アメリア様は城の片隅の古い家で病に伏し、

誰にも看取られずに死んだ。


リシェルが初めて経験した葬儀は、あまりにも簡素だった。

王家の墓所には入れないと言われ、故郷へ知らせることすら許されず、

近くの墓地に静かに埋められた。


まるで、最初から存在しなかったかのように。



(……まずは、あの男から)


アメリア様を貶め、追放し、死へ追いやった張本人。

宮廷書記官ラウル・ヘルマン。


リシェルの胸に、静かに、しかし確かな炎が灯った。


――復讐は、ここから始まる。

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