もう一人の物語。
・・・・・・・・・・・・・・
『ぴぴ・ぴぴ・』
「ん??ぁあ・・・。ん・・・。」
朝。俺は、機械的な電子音で目が覚めた。
「・・・うん・・・。おは・・・。」
ああ。そうだよな。
居ないんだよな。
父さんも、母さんも・・・。
二人が生きていれば、こんな機械的な電子音のする目覚まし時計で起こされることも、朝、自分の朝食の用意をする必要もなかった。
すべて、お母さんが。お父さんが。執事が・・・。
すべてをやってくれていた。
俺は、のうのうと過ごしていくだけ・・・。
そんな俺の人生をぶっ壊したあの日の惨劇は今でも、覚えてる。
記憶は薄れない。
どれだけ、時間がたとうとも・・・。
絶対に薄れないとおもう。
・・・・・・・・・・・・・・・・。
『操縦が動きません!』
初めに壊れたのは、確かコクピットだった。
操縦が出来ないばかりか、他のところと通信もできない状況・・・。
『うわああ!!!機体が!!みしみし言ってるぞ!!うわああああ!!!!!機体が!!切れ始めている!!』
どこからか聞こえた声。
人が興奮状態に陥って騒ぎ立てている仲に確かに聞こえるその声と、その音。
初めて、飛行機が怖いと思った瞬間・・・。
機体が壊れてから、墜落するまで大した時間はかからなかった。
目の前に、地面がある気分。
そうだ・・・。
切れたのは・・・。声が確実に聞こえたのは・・・どこからの声かわからなかったのは・・・。
目の前にいたからだ。
二つの機体は離れて墜落。
そうだ。だからだ。目の前に地面が見えたのはそのせいだ。
あの時、機体が二つに離れた場所は、俺と前の席のちょうど真ん中だった・・・。
・・・・・・・・・・・
嫌な記憶・・・。
でも・・・。俺、奇跡的に助かったんだ。
助けてもらったんだ。
そうだ・・・。
俺ね。分からないんだ。
俺が生きている意味も。
生きていていいのかも・・・。
でもね。助けてもらったのには感謝してるし、助けてもらったのには・・・。
助かったのは・・・。
なんらかの理由があるからだと思うんだ。
生きていなくちゃいけない理由があるからだと思うんだ。
ごめん。こんなのが生き残って・・・。
でも、俺・・・一生懸命に生きるから・・・。
生きなくちゃいけない理由見つけ出すから・・・。
だから・・・。俺。
これからも生きていく・・・。
応援してくれとは言わない。
見守っててくれとは言わない・・・。
だけど・・・。みんなの・・・。神様の期待に応えられるような生き方をするから。
だから・・・。目ておいてくれないか??
もし、期待にそぐわないなら・・・殺してくれて構わないから・・・。
だから・・・俺は一生懸命生きていく・・・。