粉暦521年 ― 三強時代の幕開け
大戦後の静寂
港湾講和条約が結ばれてから一年。
天鳴会は領土と港湾を失い、群青同盟・紅輪協和国・白凰社の三勢力が大陸の覇権を分け合う構図となった。
群青同盟:港湾支配で交易力・財力が急上昇
紅輪協和国:仲介外交で国際的発言力を確保
白凰社:軍備拡張と経済封鎖で力を蓄える
表面上は平穏に見えるが、水面下では新たな火種が生まれつつあった。
群青同盟 ― 港湾交易の黄金期
群青同盟は獲得した港湾を中心に交易網を再編。
海路は紅輪の鉱石や木材、白凰社の工芸品を運び、陸路では穀物や塩を内陸へ送った。
港の倉庫は常に満杯で、銀貨の流通量は戦前の3倍に達する。
しかし繁栄の裏で、港湾税の上昇や沿岸治安の悪化が市民の不満を呼び、内政の緊張を高めていた。
紅輪協和国 ― 軍事と外交の両輪
紅輪協和国は、群青と白凰の間に挟まれた地理を逆手に取り、武力と外交を使い分けた。
兵力は35万人を維持しつつも、軍事演習の一部を公開して両国に「攻めれば痛手を負う」と示す。
同時に、戦争で疲弊した小勢力を保護名目で吸収。
粉暦521年末までに北東部の鉱山都市3つを自国領に編入した。
白凰社 ― 静かなる再武装
白凰社は直接戦争に関与しなかったが、その間に最新式の艦船と火砲を導入。
南方の小国家と密約を結び、もし群青か紅輪が南進すれば即座に介入できる体制を整えた。
さらに経済戦を仕掛け、群青港湾に出入りする商人へ高関税を課し、交易の流れを自国へ誘導。
表向きは「自国産業の保護」と言い張ったが、実際には群青の経済力を削ぐ狙いがあった。
天鳴会の影
大戦で敗北した天鳴会は、沿岸から完全に追われ、内陸の小都市に拠るのみとなった。
兵力は9.5万人、経済は壊滅状態。
しかし、情報部だけは健在で、三強間の不和を煽る偽情報を流し続けていた。
「群青が紅輪と密約を結び、白凰を挟撃する準備をしている」
「白凰社が紅輪に軍事顧問を送った」
こうした噂は確証こそなかったが、各国の不信感をじわじわと高めていった。
次なる火種
冬の終わり、紅輪協和国の国境付近で、群青同盟の商隊が武装集団に襲撃される事件が発生。
犯人は不明だったが、群青は「紅輪軍の仕業」と断定。
一方紅輪側は「群青の自作自演」と反論し、両国間の緊張が一気に高まった。
白凰社はこの機を逃さず、群青港湾への関税をさらに引き上げ、経済的圧力を強化。
天鳴会は密かに群青港湾の労働者ストライキを煽り、物流を混乱させた。
大陸は再び、戦火の匂いを帯び始める。
三強が直接剣を交える日は、もはや遠くなかった――。