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粉暦517年 ― 紅輪協和国の誕生

紅牙盟の都、血紅城の大広間。

北東から遠路を越えて蒼輪騎士団の代表団が到着したのは、春の雪解けが始まった頃だった。

両者の使者は互いに深く頭を下げ、その背後には数百名の護衛兵と商人たちが控えていた。


併合の理由

紅牙盟は草原から鉱山にかけての豊富な資源を有し、蒼輪騎士団は港湾と海路を押さえていた。

しかし双方とも、近年の白凰社の軍備拡張と経済支配に強い危機感を抱いていた。


紅牙盟の盟主・朱蓮しゅれんと、蒼輪騎士団の総帥・アラン・グレイフォードは秘密裏に会談し、こう結論づけた。


「互いの民を守るためには、旗を一つにするしかない」



紅輪協和国の成立

粉暦517年4月、紅牙盟と蒼輪騎士団は正式に併合条約を締結。

新国家の名は紅輪協和国こうりんきょうわこく


首都:紅港(旧 蒼輪騎士団の首都)


統治体制:二元統治(朱蓮とアランが共同元首)


軍制:紅牙陸軍+蒼輪海軍を統合し、総兵力35万人規模へ拡大


建国直後、紅輪協和国は白凰社に対抗するための五か年計画を発表した。


徴兵拡大

 成人男性の3割を常備軍とし、予備兵も組織化。


海軍増強

 造船所を倍増し、港湾都市の軍港化を進める。


鉱山開発

 鉄鉱石と銅の採掘量を2倍に引き上げ、兵器生産を強化。


農業改革

 海沿いの湿地を干拓し、穀物生産量を増やす。


同盟強化

 群青同盟との相互防衛条約を視野に入れる。


白凰社の反応

紅輪協和国の成立は、白凰社にとって看過できない脅威だった。

白凰社は即座に軍需生産を増やし、沿岸防衛を強化。

さらに南部の小勢力を経済的に取り込み、紅輪の背後を突く準備を始めた。



紅輪協和国の成立からわずか二か月後、天鳴会の新総帥ハクゲンは、静かに鳴京の奥の間で会議を開いていた。

出席者は限られ、各方面軍の長、財務長官、情報部長のみ。

窓の外では、降伏以来縮小された軍の演習が、細々と行われている。


ハクゲンが机上に置いた羊皮紙には、こう記されていた。


『経済基盤の回復

 奪われた領土の鉱山・港湾に依存せず、南方交易路の新規開拓を進める。

 青潮船団、鉄路搬送組など独立小勢力と密約を結び、白凰社や紅輪の目をかいくぐって物資を流入させる。


兵力再編

 降伏条約で半減した兵力を、民兵や傭兵契約で実質的に増やす。

 鉄角傭兵団との契約を延長し、港湾防衛名目で増員を図る。


離間工作

 群青同盟と紅輪協和国の間に、不信を植え付ける情報を流す。

 特に領土境界線の巡回部隊が意図的に衝突したかのように見せかけ、関係を冷却させる。』


南方交易の秘密拠点

天鳴会は南方の孤島「潮影島」に秘密港を築き、そこを経由して武器や食糧を密輸した。

この港は、青潮船団の船長・リードが管理しており、外見は漁村、実態は軍港という二重の顔を持つ。


内部の反発と支持

復讐派の古参将軍たちは、即時開戦を望んだが、ハクゲンは首を振った。

「勝てぬ戦はしない。だが、勝てるときは一気に飲み込む」

その言葉に、慎重派と商業派の支持が集まり、天鳴会は表向き平穏を保ちながら力を蓄えていった。


情報部の動き

情報部は白凰社と紅輪協和国の間で密かに偽書簡を流し、互いが裏切りの準備をしていると誤認させる計画を実行。

さらに群青同盟にも同様の偽情報を流し、紅輪との交渉を遅らせることに成功した。


再起の狼煙

粉暦517年の晩夏、天鳴会の艦隊が潮影島から北上を開始。

表向きは交易船団だが、甲板の下には整備された武装部隊が潜んでいた。

彼らの目的は、群青同盟が支配する旧天鳴領の港を奇襲し、拠点奪還の足掛かりとすることだった。


大陸の勢力図は、再び音を立てて揺れ動こうとしていた。

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