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第八話 峠を駆ける赤い悪魔

夜の帳が下りる頃、山の麓に続くワインディングロードにはエンジンの咆哮が響き渡る。ここは毎週土曜日になると、走り屋たちが集まる秘密のバトルフィールド。違法と知りながらも、スピードを求める者たちは恐れることなくこの場に集う。そして、その中心には決まって一台の車があった。


赤いランボルギーニ・カウンタック。


挿絵(By みてみん)


その車がエンジンを唸らせるだけで、周囲の走り屋たちは息を呑んだ。スーパーカーという言葉を具現化したようなそのボディ、低く構えたシザードア、夜の闇に映える燃えるような赤。それはまるで血を欲する獣のようだった。


ハンドルを握るのは 後藤田直哉ごとうだ なおや。大物政治家の息子という肩書きを持ちながら、裏では連続放火犯として暗躍する危険人物だ。


「今夜も盛り上げてやるよ。」

不敵な笑みを浮かべ、後藤田はゆっくりとギアを入れる。ミッドシップレイアウトのV12エンジンが咆哮し、後輪がアスファルトを噛み締める。峠のスタートラインには、すでに対戦相手のマシンが並んでいた。日本のスポーツカー、欧州のハイパフォーマンスカー。しかし、彼の目にそれらは映っていない。


彼にとって、全ては「狩る」対象にすぎなかった。


「さて、誰から潰してやろうか?」


赤いカウンタックが、夜の峠へと燃えるようなテールランプが、悪魔の笑みのように闇を照らしていた。

後藤田直哉は、上機嫌だ。


そこへ岡崎洋介がバイクに乗ってやってきた。そして運転席に座る後藤田直哉へ声をかけた。


「放火魔さん俺と勝負しましょうよ。」


後藤田はキレた。

「なんだお前は、俺はガキの相手はしねぇぞ。ママのところへ帰れ」


「俺と勝負して負けるのが怖いんですか?」

後藤田直哉は岡崎洋介を睨みつけ、周囲にいた走り屋たちがざわつく。


「おい、今なんつった?」


岡崎はヘルメットを外し、ニヤリと笑う。


「言った通りだよ。放火魔さん、俺と勝負しましょうよ。」


一瞬の沈黙。だが次の瞬間、後藤田はブチギレ運転席から外に出て立ち上がり、岡崎の胸ぐらを掴んだ。

後藤田直哉の眉間に怒りのシワが寄る。彼にとって、この峠は自らの力を誇示する場所であり、周囲の走り屋たちは彼の強さを称賛する「観客」に過ぎない。そんな場所で、突然現れたバイク乗りのガキに挑発されるとは許せるはずがなかった。


「……チッ、クソガキが。」


後藤田は舌打ちし、周囲を見渡した。集まった走り屋たちは息を呑み、次の展開を見守っている。誰もが彼の次の言葉を待っていた。


「お前、名前は?」


岡崎洋介は、鋭い眼光を後藤田に突き刺す。


「岡崎洋介。アンタの罪を暴く者だ。」


「ハッ!何言ってんだテメェ、くだらねぇ。」


後藤田は嘲笑し、ポケットからタバコを取り出し咥える。


「で、勝負しろってか? ふざけるなよ。ガキの相手なんかしてる暇はねぇんだよ。」


「本当にそうですか? それとも、俺に負けるのが怖いんですか?」


「……!」


周囲からどよめきが起こる。挑発に乗るなそう思いながらも、後藤田のプライドが揺さぶられる。


「言っとくが、俺に勝てるなんて思うなよ? これはランボルギーニカウンタックのスーパーカーだぞ。お前のバイクごときが勝てると思ってんのか?」


岡崎は無言でジャケットの内ポケットから 一本のUSBメモリ を取り出し、高々と掲げた。


「この中には、お前が放火した決定的な証拠が入ってる。レースに負けたら、これをネットに公開する。」


「何だと?」


後藤田の表情が変わる。目が鋭くなり、タバコを指で弾く。


「ははっ……面白ぇじゃねぇか。いいぜ、やってやるよ。」


カウンタックのドアが跳ね上がり、後藤田がシートに滑り込む。エンジンが唸りを上げ、峠の空気を揺るがした。岡崎もバイクに跨り、ゆっくりと後藤田の隣につける。


「ルールは簡単だ。峠のコースを最後まで先に下りきった方が勝ちだ。手加減はしねぇぞ。」


「こっちもだ。」


静まり返る観客たち。やがて、スタートの合図が鳴り響く!

赤いランボルギーニカウンタックのエンジンが怒りの咆哮を上げる。

岡崎もバイクのアクセルをひねり、峠の静寂が一気に破られた。


運命のレースが、今始まる!

ランボルギーニ・カウンタック(Lamborghini Countach)スペック


メーカー:ランボルギーニ(Lamborghini)

生産期間:1974年〜1990年

駆動方式:MR(ミッドシップエンジン・後輪駆動)

ボディタイプ:2ドアクーペ

【 エンジン性能(5000QV)】

エンジン型式:V型12気筒DOHC

排気量:5.2L(5,167cc)

最高出力:455PS / 7,000rpm

最大トルク:50.0kgm / 5,200rpm

燃料供給方式:キャブレター(初期型)、後期型はインジェクション

【 パフォーマンス】

最高速度:約295km/h

0-100km/h加速:約4.7秒

トランスミッション:5速MT

車両重量:約1,490kg

【 シャシー & 足回り】

サスペンション(前/後):ダブルウィッシュボーン

ブレーキ:ベンチレーテッドディスク

タイヤサイズ:フロント 225/50VR15、リア 345/35VR15


ランボルギーニ・カウンタックは、スーパーカーの象徴的な存在であり、峠での走行性能も圧倒的。ただし、MRレイアウトのためコーナリング時の扱いには高いスキルが求められる。

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― 新着の感想 ―
いい! なんだか頭文字DのOP曲が今にも 鳴り出しそうな洗礼された情景描写!! 今までの中で 1番そそられて目を引くサブタイトル!! くどくないけれどシッカリと伝わる車種の 特性や凄さ!! まめ汰
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