第六話 鋼の筋肉
【肉ミンチ職人の殺し屋ベン】
【死のフラメンコダンサー】
夜明け前のバルセロナ旧市街。石畳に積もる冷たい霧の中、火花が飛び散る激突が始まった。
オリビア・デル・リオかつて「死のフラメンコダンサー」と呼ばれた殺し屋 。
その対面に立つは、殺し屋ベン・ハーゲン筋肉の塊、冷酷無比な「肉ミンチ職人」。
「行くわよ……バットマン!」
両手に銀のナイフを握りしめたオリビアが、地を蹴って宙に舞う!
「ダンゴムシッ!!」
高速回転。
両腕の刃が流星のようにベンの頭上へと迫る!
「なめるなよ、オリビア!」
ベンは即座にバットをクロスさせ、X字に構えて受け止めた。
カキィィン!! 火花が散る。
「ちっ……!」
地に着地する寸前、オリビアの瞳が鋭く光る。
「なら、コレはどうッ! カマキリッ!!」
くるりと回転しながらのかかと落とし。
ハイヒールの踵が、まるで鎌のようにベンの分厚い胸筋へ突き刺さる!
ズガァンッ!!
だが。
「……フッ。」
オリビアのハイヒールの靴が胸板に突き刺さったが、ベンは涼しい顔で、ニタァと笑った。
「なんだその攻撃は。痛くも、かゆくもねぇよ。」
「ゴキブリを叩く方がまだ骨が折れるぜ。」
次の瞬間、ベンの腕が動いた。
両手のバットを逆手に構え、まるで太鼓のバチのように振り下ろす。
「喰らえェェェ!! 乱打打ちィィッ!!! ――破壊のドラムッ!!」
ゴンッ!! ガンッ!! ズバァッ!!
怒涛の連打がオリビアの体を打ち据え、空中に吹き飛ばされる。
壁に叩きつけられた彼女は、地面に転がり、口元から血をにじませた。
「くっ……ハァッ、ハァッ……。やるじゃない……バケモノ……」
倒れかけた体を支えながら、オリビアはわずかに笑った。
そして、足を小刻みに踏み鳴らす。
タッ タッ タタ タッ
「はぁ? なんだその変なダンスは」
「……フラメンコのリズムよ。心に灯る炎。」
「……サンサンサンシャインの主人公はッ! 決して、最後まであきらめないのよ!!」
その瞬間、オリビアの脳裏に、あの懐かしいアニメの主題歌が響き渡る。
あの、彼女が子供のころに夢中になった正義のヒーロー「サンサンサンシャイン」。
「あなたは……悪者デスネ!!」
立ち上がった彼女の瞳が、まるで太陽のように輝きだす。
オリビアが最後の奥義を繰り出す準備が始まろうとしていた。




