表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【全話 完結】令和の人斬り 《天誅》 天に代わりて、悪を討つ  作者: 虫松
『令和の人斬り 外伝:スペイン血風録』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

83/89

第二話 殺し屋の影

スペイン・バルセロナ


深夜。旧市街の裏通り、石造りの屋敷。

その地下には、ファルコン家が代々使ってきた秘密の会議室があった。


石壁に囲まれた空間に、炎のように赤いランプが灯る。

ロレンソ・ファルコンはソファに身を預け、グラスを傾けていた。

手には1枚の写真。空港で逃げる岡崎洋介の姿。


「Ya están aquí...(やつらは来た)」


背後の鉄扉が重く開く音が響いた。

現れたのは、筋骨隆々の巨漢。

その名はベン・ハーゲン。


挿絵(By みてみん)


身長198cm、全身に岩のような筋肉をまとったパワーファイター。

スキンヘッドに濃い顎髭、無表情の奥に狂気を孕んだ鋭い眼光。

黒いタンクトップから浮かび上がる腕の血管は蛇のように這い、背中には鉄製のバットを2本、X字に背負っていた。


「……呼び出しておいて、ワインか?」


ベンは低く笑った。


ロレンソは静かに写真を差し出す。


「岡崎洋介。オリビア・デル・リオの古い友人だ。数年前に命を助けられた恩がある。今でも彼女と深く繋がっている」


「……ふん。こいつをどうすればいい。叩き潰すか?」


ベンの声には毒があった。


だがロレンソは、首を横に振る。


「殺すな。尾行しろ。この男を泳がせて、オリビアの居場所を突き止めるんだ」


ベンの眉がわずかに動いた。


「珍しいな。お前が“待つ”なんて。あの女狐にはもう飽きたと思ってたが?」


ロレンソの目に、わずかな狂気が宿る。


「オリビアは、俺の家を壊した。俺の父を、誇りを……そして、未来を。だからこそ、完全に終わらせる。愛するものすべてを奪い、無力にし、絶望させた上で殺す」


「……なるほど」


ベンは、ゆっくりとうなずいた。


「つまり、岡崎は餌ってわけだな」


「そうだ。だが忘れるな奴は甘くない。彼の背後には、オリビアと共に修羅場を潜った者たちがいる。迂闊に手を出せば、こちらの居場所が露見する」


「任せろ。気配すら感じさせずに、奴の背後に立ってやる」


ベンは静かに背を向け、歩き出した。

その巨体から放たれる殺気は、なおも抑えきれず、空間を圧迫していた。


ロレンソは背後で呟く。


「あとは……罠を張るだけだ」


闇が深まっていく。

スペインの空の下、復讐の歯車が静かに、しかし確実に回り始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ