第七話 交錯する運命
放火事件から数日後。
岡崎洋介は学校の屋上にいた。
冷たい風が頬を撫でるが、彼の心は依然として燃え上がるように熱かった。
「後藤田直哉……必ず俺が裁く……!」
邪悪な者が野放しになっている現実。
警察が手を出せないなら、自分の手で正義を下すしかない。
その時、背後から静かな足音が近づいてきた。
「やはりここにいたか。」
振り返ると、そこには刑事 沖田壮一 の姿があった。
「またあんたか。」
岡崎は目を細める。
刑事である彼が自分に何を求めているのか、なんとなく察しがついた。
「お前、後藤田に何か仕掛けるつもりか?」
沖田は煙草をくわえながら尋ねた。
岡崎は沈黙する。
「まあいいさ。お前の考えてることは大体分かる。」
沖田は煙を吐き出しながら続ける。
「だがな、"裁き" ってのは、衝動だけじゃできねぇんだ。」
彼の鋭い視線が岡崎を射抜く。
「もしお前が無謀に動いて、逆に捕まったらどうする?」
岡崎は歯を食いしばる。
沖田の言うことはもっともだった。
「それでも、俺は見過ごせない。」
岡崎の拳が再びギュッと握りしめられる
沖田壮一はポケットからUSBメモリを取り出し、岡崎洋介に差し出した。
「ここには、決定的な証拠が入っている。」
岡崎は怪訝な表情でUSBを受け取る。
「これは?」
「防犯カメラの映像だ。放火の瞬間がしっかり映っている。」
岡崎の目が鋭くなる。
「……ってことは、もう警察は動けるはずだろ?」
沖田はふっと鼻で笑った。
「そんなに単純なら、俺がお前にこんなもん渡すかよ。」
その言葉に、岡崎はハッとした。
「つまり、やっぱり警察は後藤田を逮捕できないってことか。」
沖田はゆっくりとうなずく。
「後藤田直哉の親父は大物政治家だ。警察内部にも手を回している。」
「だから……この映像を使って、奴を"はめろ"ってわけか。」
沖田は無言でタバコに火をつけ、紫煙をくゆらせる。
「お前がどう使うかは自由だ。ただし」
鋭い視線を岡崎に向ける。
「"確実に"天誅を下せ。」
(これは俺の意思ではない。御屋形様の指示なのだ)
「峠のレース?」
岡崎洋介は、沖田壮一からUSBと一緒に渡された資料を見つめながらつぶやいた。
「ああ、後藤田直哉は毎週土曜日、あの赤いランボルギーニで峠の非合法レースに参加している。」
沖田は煙草をくわえながら、さらに続けた。
「奴の車は速い。だが、それ以上にプライドが高い。"負ける" ってことを何より嫌う男だ。」
岡崎の知らぬところで、より大きな"力"が動いていた。
こうして、二人の"天誅"が動き出した。