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【全話 完結】令和の人斬り 《天誅》 天に代わりて、悪を討つ  作者: 虫松
第七部 反撃

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第一話 魏王の集団

沖田壮一は狭い廊下を歩きながら、手に汗を握っていた。目の前には尾上彰義隊の残党狩りの部隊が次々と迫り、彼は息も絶え絶えで日本刀で必殺の3段突きを繰り出しては、一人また一人を刺し殺し倒していく。

沖田の息は荒く、肩で息をきる。


彼の動きは俊敏で鋭く、一撃ごとに敵が崩れ落ちる、しかし、相手もまたプロの殺し屋。確実に痛手を負いながら、それでも倒さねばならない。沖田の手元が震えていた。


その若い鋼のような体力も限界を迎えていた。突きの威力も少しずつ鈍り、手足が重くなってきているのを感じる。


「もう、だめかもしれない」と、彼は呟いた。


その時、暗闇の先から、静かに足音が響いてきた。沖田はその足音が異常なほどに静かであることに気づいた。何者かが、ゆっくりとこちらへ近づいてきている。恐怖が沖田の体を包み込む。その足音の主が見えてきた。


沖田は反射的に身構えた。足音は、どんどん近づいてくる。そして、暗闇から姿を現したのは。


魏王(ぎおう)…!」


挿絵(By みてみん)


沖田は目を見開く。あの地下格闘場の駐車場で倒したはずの、恐ろしい中国最強の殺し屋の男が自分の目の前に立っていた。


「ここまでか…」

彼は力なく日本刀を地面に置いた。

しかし魏王は何も言わずに立ちつくしていた。


(俺を殺すのではないのか?)

沖田が疑問に感じた時だった。


その後ろからも、また、魏王が現れた。次々と姿を現す魏王に、沖田は脳裏で何度も疑問を浮かべる。


(なぜだ…?)

彼の心は混乱し、思考が追いつかない。


しかし、その答えがすぐに訪れる。沖田の目の前に現れたのは、現実に存在する魏王ではない。彼の心の中で、また別の魏王が現れているような、まるで幻を見ているかのような感覚だった。


(そうか。ここは地獄なんだ)

と沖田は思った。


自分がすでに死んでいるのではないか、そんな気がした。

しかし、さらに不気味なことが起こる。暗闇の中、突如として声が響いた。


「緊急事態でな、わが主がスケートリンク場で危険な状態なのだ、一人でも手駒がほしい、そなた手伝ってもらえんか?」

と優しい言葉で老人が沖田へ語りかける。


挿絵(By みてみん)


沖田はその声に振り向くと、そこに立っていたのは、中国マフィアのダブルドラゴンの老子だった。沖田は息を飲んだ。


「それって、拒否することできるんですか?」

と、彼は思わず尋ねた。すると老子は、にやりと笑いながら答える。


「無理だな。ここで死ぬか手伝うかだ。」


沖田はその言葉を聞き、心の中で疑問が湧いた。

「魏王は人の名前じゃなかったんですね?」


老子は一瞬の沈黙の後、静かに答えた。


「そうだ。魏王は私の分身、私が伝承したものは全て魏王となる。だから魏王は死なない永遠に…」


沖田はその言葉に深く納得した。魏王という存在は、ただの一人の人間ではなく、老子が作り上げた何千、何万の分身であり、彼の意志そのものだったのだ。


「さぁ、これから、反逆者たちに逆襲をしますか。」

老子は冷ややかに言い放ち、沖田と魏王と共に歩みを進めた。


その先には、スケートリンク場が広がっている。空気は冷たく、沖田の目には、すでに戦いの気配が漂っていた。魏王と共に、その場所に向かって歩を進めると、


「準備はできているか?」

老子の声が静かに響く。


老子は口元を引き締め、沈黙の後に歩き出す。その背後には、すでに魏王と沖田が並ぶ。


スケートリンク場へ向かう道は、どこまでも暗く、そして不気味だった。沖田はその足音に耳を傾けながら、自分の運命が何を意味するのかを悟ろうと必死に考えていた。それは、何もかもが計画された運命のようにも感じた。


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