第十話 疾きこと風の如し
スケートリンク場の半地下にある薄暗い廊下。従業員用出口へと続く道で、二人の暗殺者が対峙する。
【疾風の風神】(風間 彰)
【死のフラメンコダンサー】(オリビア デル リオ)
お互い殺し屋としての誇りをかけた死闘が、静寂を切り裂いて始まった。
最初に動いたのは車いすのオリビアだった。彼女はフリスクナイフを逆手に持ち、一閃。ナイフが鋭い弧を描きながら風間の首を斬り落とそうと迫る。
バタフライ・ナイフ!!(蝶)
しかし、風間は風の如く身をひるがえし、その刃を軽やかにかわした。
「車いすじゃ、まともに戦えないわな。まるで羽のない蝶だな。」
風間の挑発に、オリビアの目が怒りに燃え上がる。彼女はナイフの持ち方を変え、まるで蜂のように何度も突き刺す動きで風間に襲い掛かる。
キラビー!(蜂)
しかし、風間はつむじ風のように舞い、回転しながら攻撃をかわす。
「俺は風! 疾きこと風の如し!」
瞬時にオリビアの背後に回り込み、彼女を車いすごと掴み上げると、豪快に回転投げを放つ。
「竜巻投げ!」
車いすがオリビアごと宙を舞い、無情にも地面に叩きつけられる。
「くっ…!」
オリビアは痛みをこらえながら、車いすを両手で押しのけ脱出する。しかし、それを読んでいた風間はすでに次の一手を準備していた。
「遅い!」
彼の掌が音を立ててオリビアの頬を捉える。
疾風張り手!
意識が吹き飛びそうな衝撃。そして、風間の腕がオリビアの腰に回る。
「終わりだ。」
サバ折り——。
悲鳴が廊下に響く。オリビアの腰のコルセットがバキバキと音を立てて砕ける。
力なく垂れ下がる両腕。勝負は決した。
だが、風間の視線がオリビアの胸の動きに気づく。
「…まだ息があるのか。コルセットのおかげで助かったな。」
風間は苦笑しながら、彼女の身体を掴むと、従業員出口の横にある警備室へと引きずっていく。
「もう少し俺と遊ぼうか…オリビア・デル・リオ。」
オリビアの目がうすめになりながら、微かな息の中で呟いた。
(私の運命は…私が決める…。)
風間はオリビアを体を犯すために警備員室へと失神しかけているオリビアを引きずって入っていった。




