決勝戦(上)
【決勝戦 ハンデ戦】
【令和の人斬り】
【坂本組 若頭】
【稲妻の雷神】
中国の衛星放送により、スマホ画面に映し出される三人の選手
東京の豊島ランドのスケートリンク場の中央に、三人の戦士が入場する。
スケートリンク場の壁にはランダムに複数の巨大な剣を刺した剣山パネルが設置してある。それはまるで、カジノにある巨大なルーレット赤と黒に色分けされており赤は剣山 黒は通常の壁にしてある。
場内に響くアナウンス。
「倍率発表! 令和の人斬りと坂本組 若頭3倍 …稲妻の雷神1.5倍!」
「なお、公平性を高める為 体重の錘200キロを付与と令和の人斬りと坂本組 若頭のペアには木刀の打撃武器を与えます。」
金本は腕を組みながらつぶやく。
「木刀所持と2対1のハンデ戦により、倍率がだいぶ縮まったな。とはいえ雷王丸がほぼ2倍の有利だな」
令和の人斬りこと岡崎洋介は日本刀に着物を羽織って登場した。さながら幕末の浪人といった井出立ちだ。岡田以蔵の再来を思わす暗殺人の殺気が漂う。
坂本龍太郎はスケート選手の上下スウェット姿で登場だ。スパンコールの衣装はキラキラ輝きまるで氷上のダンサーだ。
二人ともスケート靴を履き。氷上を滑るように滑走した。
身長2メートル50センチ、体重280キロの巨体を揺らしながら、雷神を模したコスチュームに身を包み、首を左右に振り、荒々しく手を振り回しながら堂々と歩く。その姿はまるで雷を纏った鬼神のようだ。鉄下駄を改造した下駄底は鋭く氷を踏みしめる。
体重差の影響で、手首と足首にはそれぞれ50キロの合計200キロの錘が巻きつけられていた。
そして
試合開始のゴングが鳴った!!
雷王丸の巨体が、氷上に轟く。
岡崎洋介と坂本龍太郎は、左右に分かれ、まるで二羽の鷹のようにスケートリンク場で素早く動き回る。
「チッ……!」
雷王丸は迫りくる二人を交互に狙い、巨体を活かした豪快な一撃を繰り出す。
しかし――
「おそいちや!」
坂本が氷の上を滑るように躱し、直後に岡崎が背後から木刀を振るう。しかし、雷王丸は寸前で察知し、腕を振り回して反撃。
轟音とともに岡崎の木刀が弾かれ、雷王丸の拳が空を切る。
何度も何度も同じような攻撃が繰り返された後に
雷王丸は獰猛な笑みを浮かべるが、次の瞬間
「ハァ…ハァ…」
息が乱れ始めた。
(よし……作戦通りだ)
坂本が不敵に笑う。
彼らの狙いは、正面からの撃破ではない。ヒットアンドウェイで削り、雷王丸の体力を奪い、最後に決定打を叩き込む
【草攻剣】
新選組の集団戦術であり坂本いわく
「相手を囲んで、ちまちま遠くから斬りつけて、相手の体力を削る技ぜよ。大ぶりの一撃より、小さな傷を重ねるほうがじわじわと効いてくるがじゃ」
それが二人の戦略だった。
坂本龍太郎と岡崎洋介の抜刀の構えを前に、観客席は静まり返った。
しかし――
「……フッ」
雷王丸が、不適に笑った。
その額から、首筋から、腕から大量の汗が滴り落ちる。
ポタッ――
汗が氷に落ちた瞬間、ジュウゥゥ……!
白い蒸気が立ち上る。
(なに……!?)
岡崎と坂本の目が、一瞬大きく見開かれる。
異常なまでの発熱それは、雷王丸の肉体が発する圧倒的な熱量の証。
「ハァ……ハァ……」
確かに、息は上がっている。
だが
雷王丸は腕を広げ、まるで雷神降臨のごとく立ちはだかった。
雷王丸の大量の汗が、氷上で光を反射して煌めく。
(……来るぞ)
雷王丸の筋肉が隆起する。
その全身から立ち上る汗の蒸気が、まるで雷雲のように広がる。
「ソロソロ カワイガリマス!!」
稲妻の雷神こと雷王丸の咆哮が、氷上に響き渡った!




