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【全話 完結】令和の人斬り 《天誅》 天に代わりて、悪を討つ  作者: 虫松
第五部 死闘

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第九話 決勝戦の会場変更

地下格闘技トーナメントの準決勝が終わり、静寂が訪れたリングの上。血と汗にまみれた闘技場は、まるで戦場の跡のように荒々しく、観客たちの熱狂は未だ冷めやらぬまま会場の空気に残っていた。


VIPルームの巨大モニターには、次なる戦いの対戦予告が映し出される。


決勝戦


【令和の人斬り】(岡崎 洋介)

VS

【稲妻の雷神】(雷王丸)


VIPルームの画面を見つめる観客たちの間にざわめきが広がる。トーナメント最強と目される二人が、ついに決勝で激突する。だが、その舞台は今、思わぬ形で揺らごうとしていた。


中国マフィア「ダブルドラゴン」幹部会議室。


警備モニターには、不審な影が映っていた。そこに映るのは、土方敏夫。警察の刑事の姿だ。


「日本の警察に、ここがバレたか…」


重苦しい空気の中、ダブルドラゴンのボス・金本が深く息を吐く。そして、厳しい表情のまま幹部たちに告げた。


「決勝戦は別の場所でやるしかないな。」


___________________________



すぐさま、金本は坂本組の坂本忍、尾上組の尾上哲夫を呼び出した。やがて、ダブルドラゴンの管理事務所に二人の大物が姿を現す。


「というわけで、決勝戦は急遽、1か月後に変更する。」


金本は不敵な笑みを浮かべながら続けた。


「場所は……東京の閉園した豊島ランドのスケートリンクだ。氷上デスマッチにする。」


一瞬の沈黙の後、坂本忍が低く問いかけた。


「無観客試合でええんか?」


「そうだ。警察の目を避けるため、人は集められん。出入りできるのは、工事関係者に扮したダブルドラゴンのマフィアのみだ。」


「金本様、当社ニッコリハウジングの紹介させて頂きました豊島ランド、お買い上げありがとうございます。」


尾上哲夫が猫なで声で擦り寄る。


「どうやって、あの豊島ランドを閉園させたがじゃ?」


坂本忍の問いに、尾上は薄笑いを浮かべながら答えた。


「それは企業努力ですよ。」


その笑顔の裏には、いかにもあくどい手段が隠されているのは明白だった。


そして、金本はさらに重要な発表を行った。


「決勝戦のハンデについてだが、前回の雷王丸戦でオッズが偏りすぎた。体重差がありすぎる。だからな、決勝戦は2対1のハンデ戦にする。」


その言葉に、尾上が即座に反発する。


「1対1で勝負するからこそ、闘いは白熱するんですよ! それを2対1なんて、雷王丸が強すぎるからって、皆さんが勝たせたくないんでしょうけど、それはちょっと酷くないですか?」


「なんちゃこのハンデで文句か!? ならば、うちの組と前面戦争じゃ!!」


坂本忍が怒りを露わにし、場の空気が一気に張り詰める。


「いえ、坂本さんに文句があるわけじゃありません。ただ、ルールが不公平かと……。」


尾上の冷静な返しに、金本が口を開く。


「尾上、お前も分かってるだろう? 雷王丸と岡崎の体重差は4倍だ。 このままじゃ勝負にならん。」


尾上は渋々と頷くが、次の疑問を口にする。


「……雷王丸と戦うもう一人の選手は誰です?」


その瞬間、部屋の扉が静かに開いた。


カツン……カツン……


木刀を手にした男が、ゆっくりと歩み寄る。


「俺がやるちゃき。」


坂本組 若頭・坂本龍太郎。


無造作に肩に担がれた木刀。その眼光は鋭く、氷上デスマッチに向けた覚悟を感じさせる。


尾上哲夫は、扉の向こうから颯爽と現れた坂本龍太郎の姿を見て、思わず口元を歪めた。


(ふん、あのバカ息子が相手か……これなら問題ない)


坂本龍太郎、坂本組の若頭ではあるが、その名は組の実力者としてよりも、親の七光りとして知られていた。父・坂本忍の威光があるからこそ今の地位にいるだけで、実力が伴っているとは到底思えない。


尾上は心の中でほくそ笑む。


(坂本のバカ親子……ここでまとめて潰してやる)


雷王丸を戦わせる以上、確実に勝てると確信していた。坂本龍太郎ごときが相手になるはずもない。しかも氷上デスマッチ、雷王丸の圧倒的な体格と膂力を考えれば、氷の上でも彼が不利になることはない。


むしろ、この状況は好都合だ。


もし雷王丸が勝てば、それは坂本組に対する大きな打撃となる。バカ息子が惨めに叩き潰される様を見せつければ、坂本忍の威厳も傷つくだろう。坂本組の影響力を削ぎ、尾上組の立場をさらに強くできる。


尾上は余裕の笑みを浮かべながら、ゆっくりと金本の方を振り返った。


「決勝戦……楽しみにしておりますよ」


その目には、底知れぬ野心と邪悪な計算が渦巻いていた。


こうして、決勝戦の舞台と体重差のハンデは決まった。


東京・豊島区にある閉園した豊島ランドのスケートリンク。

極寒の氷上で繰り広げられる2対1のデスマッチ。


血で血が凍る氷上での闘い。決勝戦で最後の死闘がはじまる。


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