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【全話 完結】令和の人斬り 《天誅》 天に代わりて、悪を討つ  作者: 虫松
第五部 死闘

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第五話 オリビアの罠

高級旅館の朝。部屋に差し込む柔らかな朝日が、昨夜の余韻を思い起こさせる。俺と美香は、旅館自慢の朝食バイキングを堪能していた。和洋折衷の豪華な料理が並ぶ中、特に出汁の効いた味噌汁と焼き魚の香ばしさが食欲をそそる。


「洋介、これ美味しいよ。」


美香が俺の皿にふわふわの出し巻き卵を取り分けてくれる。そんな穏やかな朝のひとときも束の間、旅館の玄関で俺たちを待っていたのは、漆黒のベンツと、よれよれの服を着た坂本龍太郎だった。


「洋介、昨晩はお楽しみじゃったのう。」


坂本はニヤニヤしながら俺に肩を組んでくる。横には、なんと死のフラメンコダンサー、オリビアがいた。彼女は朝日を浴びて輝くブロンドの髪をなびかせながら、満足そうな笑みを浮かべている。


「おー、サムライボーイ! 私、疑念のヤイバというアニメが大好きなんです!」


オリビアが興奮気味に話しながら、俺の腕を取り、スマホを構えた。


「サカモトに何度もお願いシマシタ! 洋介に会わせてクレルって言ってクレマシタ!」


「ちょっ…ちょっと待て!」


オリビアは俺の顔の横に自分の顔を寄せ、無邪気に写真を撮り始めた。フラッシュが何度も光る。美香の表情がみるみる険しくなっていく。


「洋介、朝から何やってんの?」


美香の声には明らかに怒気が含まれていた。俺は慌ててオリビアから離れようとするが、彼女は無邪気な笑顔で腕を絡めてくる。


「違うんだ! 誤解だ、これは坂本の罠だ!」


坂本のほうを見ると、首筋には鮮明なキスマークがついている。それを見た美香の表情がますます険しくなった。


「坂本、てめぇ……!」


俺が睨みつけると、坂本は豪快に笑いながら肩をすくめた。


「まあまあ、せっかくの楽しい朝じゃけん、怒るなや! ほれ、早う車に乗れや!京都観光に出かけるけん」


朝から波乱の幕開けだった。


___________________________


坂本の運転する漆黒のベンツがゆっくりと旅館の敷地を出ると、後部座席では美香とオリビアがアニメの話題で盛り上がり始めた。


「サンサンサンシャインを知ってるの!?」と美香が目を輝かせると、オリビアは満面の笑みを浮かべた。


「モチロンデス!子供のころ、日本のアニメが大好きデシタ!特にサンサンサンシャインは、私のフェイバリット!」


「私も小さいころ、毎週欠かさず見てたのよ!まさか海外の人とこの話ができるなんて!」


オリビアは興奮した様子でスマホを取り出し、サンサンサンシャインのキャラクター画像を見せる。


「ネェ、ネェ!美香!アナタ、サンシャイン・アースにソックリ!」


「えっ!?私が?」


美香は驚いた顔をしたが、スマホの画面を覗き込むと、そこには青い髪をなびかせた美しい女戦士の姿があった。


「うそ…似てる?」


「ホント、ホント!目の形とか、口元のラインとか!美香はまるでリアル・サンシャイン・アースネ!」


「ふふっ、そんなこと言われたの初めて!」


美香はまんざらでもない表情で、オリビアと一緒にスマホの画面を見つめた。


前の座席では坂本がニヤニヤしながらルームミラー越しに二人を見ていた。


「なんじゃ、えらい意気投合しとるのう。まさか美香、お前がサンサンサンシャイン好きやったとは知らんかったぞ?」


「子供のころだから、言う機会がなかっただけよ!」


「まあ、仲良くなっとるならええこっちゃ。でも洋介、お前は完全に空気じゃのう。」


坂本はクククッと笑いながらハンドルを切った。


「…おい、俺の存在感どこいった。」


洋介は後部座席で腕を組み、少し不満そうに呟いたが、楽しそうに話す美香を見て、なんとなく微笑んだ。

しかし、オリビアは次の地下格闘闘技場での対戦相手だ。


洋介は、美香とオリビアが楽しそうに話している様子を見ながら、心の奥で警戒心を強めていた。

(この女……わざわざアニメの話をしに来たわけでは、ないだろう?)


何かがおかしい。初対面のはずなのに、まるで昔からの友人のように美香と打ち解けるオリビア。坂本の運転するベンツにまで同乗し、まるで当然のように俺たちと行動を共にしている。


そして何より

【死のフラメンコダンサー オリビア・デル・リオ】


スペインの殺し屋で必殺技は『デス・フラメンコ・ディスティニー』(この死の踊りを見たものは生きて帰ることはできない)

華やかな外見とは裏腹に、冷酷無比な戦闘スタイルで数々の人々を葬ってきたという暗殺者だ。


そんな女が、偶然ここにいるとは思えない。


(つまり……これは敵情視察ってわけか。)


洋介はルームミラー越しにオリビアの表情を盗み見た。

が、その瞬間、オリビアの視線が鋭くこちらを捉えた。


「――ッ!」


(こいつ、俺が気づいたことを察してる!?)


オリビアは一瞬だけ、挑発するような笑みを浮かべると、再び美香とのアニメ談義に戻った。

洋介の背筋に冷たいものが走る。


(……見事に坂本を懐柔し俺たちを罠にはめやがったな。)


坂本はで、楽しそうに運転しながら話を振っている。

すっかり打ち解けている坂本とオリビアと美香。


(このままじゃ……俺の動向が全部、オリビアに筒抜けになってしまうぞ。)


戦う前から、すでにオリビアの術中にはまっているのではないか、そんな焦りが、洋介の中に生まれ始めていた。

車内の和やかな空気とは裏腹に、洋介の中で静かに闘いの炎が燃え上がっていた。

オリビアの心の内を探ろうと必死に岡崎洋介は考えていた。


架空アニメ『疑念のヤイバ』設定

ジャンル

歴史アクション / サスペンス / 心理ドラマ

放送時期・話数

全12話(1クール)


【あらすじ】

幕末、京都。新選組の天才剣士 沖田総司 は、裏切り者を処刑する冷酷な剣士として恐れられていた。しかし、ある夜、血に濡れた自らの剣を見つめる沖田の胸に、一つの疑念が生じる。


「本当に、俺たちは正義なのか?」


新選組の盟友たちが次々と姿を消し、影で暗躍する何者かの存在が浮かび上がる。彼らを陥れたのは幕府か、それとも薩長か、あるいは、彼が信じてきた 新選組そのものなのか?


真実を追う沖田の前に現れるのは、謎めいた浪士、裏切り者の同志、そして己の肺結核の病。剣の道を極めた沖田は、果たして 「疑念」 を剣によって振り払うことができるのか?


挿絵(By みてみん)


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