第四話 初夜
京都の高級旅館の送迎バスから降りた俺は旅館を見上げる。ものすごく歴史と格式を感じる旅館だった。俺はここで童貞を卒業するのかと、かなり緊張をしている。隣の美香もすごく恥ずかしそうだった。地下闘技場での次の対戦相手はプロの殺し屋だ。はっきりいって勝てるかどうかわかない。
地下闘技場は中国マフィア ダブルドラゴンの金本の意向がルールだ。
敗北=(イコール)死になる可能性は非常に高いのだ。
俺はここで美香を抱くことを心に決めた。
高級旅館の女将が表にでてきて挨拶をする。
「新婚さんどすか、ようおこしやす。」
と京都弁で挨拶をされた。
美香は
「新婚さんだって」
とまんざらでもない反応だ。
女将に部屋へ案内をされると、高級旅館の広い部屋で高そうな壺や掛け軸などが配置してある。俺は荷物をおくと、小腹がすいたので大きな木のテーブルの上にある高級そうな八つ橋をむしゃむしゃと食べた。
「お茶をいれましょうか旦那様」
と美香が俺にお茶をいれてくれた。
なんだか、もの凄く俺は緊張をしてきた。
「お風呂にしはりますか?それとも、お食事にしはりますか?」
と女将さんに聞かれた。
「汗を大量に、かいてるんで。お風呂にはいります。」(盲目の毒手使いの血の匂いが気になってしまう)
そうだ、女将さんに、お心づけを渡さないといけない。いくら渡すか悩んだが俺はティッシュで包んで1万円を渡した。これであっているか、間違っているのかさえ分からない。俺はお風呂へと足早にむかった。
お風呂の扉を開けた瞬間、目の前に広がるのは、驚くほど広い露天風呂だった。湯気が静かに立ち昇り、その奥には京都の町の夜景が広がっている。遠くにはきらめく街灯りが点々と輝き、まるで宝石を散りばめたかのように美しい光景だ。空には月が浮かび、星がささやかな光を放っている。
湯船は自然の岩を模した造りで、まるで山の中に湧き出た天然温泉に浸かっているかのような気分にさせる。水面に映り込む夜景は幻想的で、湯の温かさが肌にじんわりと沁み込むのがわかる。
俺は静かに湯船に足を入れ、ゆっくりと身体を沈める。温かな湯と共に、京都の夜景を眺めるこの贅沢なひとときが、全ての疲れを洗い流してくれるようだ。風がそっと頬を撫で、遠くから聞こえるかすかな鐘の音が、心を穏やかにする。
(こんな風景を眺めながら湯に浸かれるなんて…一泊いくらするんだろう)
と心の中でつぶやきながら、俺はしばらくその贅沢な時間を堪能した。
広々とした旅館の部屋に、和の美が詰まった高級懐石料理が並べられている。芸術品のように繊細な盛り付けが施された料理が、朱色の漆塗りの膳に美しく並べられ、控えめながら華やかな香りが漂う。
美香は、膝を正して座っている。その表情には少し緊張感が漂いながらも、ほんのりと微笑んでいる。彼女は箸を手に取り、そっと前菜に手を伸ばした。
「これ…すごく綺麗。食べるのがもったいないね」
と美香が感嘆の声を漏らす。
「確かに。これ、一つ一つ丁寧に作られてるんだろうな」
と俺は頷きながら、小さな焼き物を口に運ぶ。焼き加減が絶妙で、素材の風味が口いっぱいに広がる。思わず、笑みがこぼれる。
お造り、煮物、焼き物、揚げ物、そして締めのご飯と味噌汁まで、次々と出される料理はどれも洗練されていて、舌だけでなく目でも楽しめる。美香は一口一口大事そうに味わいながら、料理について話し合う。
「洋介、これ、次の料理なんだろう?天ぷらみたいだけど、衣が少し違う気がする」
「確かに。他の場所じゃ見ない料理だな。食べてみて、感想教えてくれよ」
と俺は微笑んで彼女を促す。
最後のデザートには、手作りの抹茶羊羹と季節の果物が添えられている。美香はその一口を口に入れると、目を輝かせて嬉しそうに微笑んだ。
「…美味しい。ここに来てよかったね、洋介」
「そうだな」
と俺はうなずき、満足感に浸りながら彼女と目を合わせる。新婚旅行みたいだ、この時間が、まるで贅沢な夢のように感じられた。
食事が終わり、次は美香が風呂へ向かった。俺も部屋で特に、やることがないので、またしても風呂へ入る。
風呂から上がると、美香は浴衣姿で俺を待っていた。彼女の頬は赤らんでおり、視線をそらしながら布団の方へ目を向けた。
「…洋介、一緒に寝る?」
俺は無言で頷き、美香の隣に座る。彼女の温もりが伝わる距離。緊張と興奮が混ざり合い、俺の鼓動は早まっていく。
美香の手がそっと俺の浴衣の襟を引き寄せた。彼女の唇が震えながら俺の肩に触れ、やがてゆっくりと重なる。
「…恥ずかしい…けど、洋介となら…」
俺は美香を抱きしめ、そのまま布団へと倒れ込んだ。彼女の柔らかな身体を感じながら、俺たちは絡み合っていく。
灯りを消した部屋に、静かに重なる息遣いが響いていた。
(コンドーム役に立ったよ。ありがとう龍太郎)




