第一試合 三回戦
【槍の又坐】
【死のフラメンコダンサー】
VIPルームの巨大モニターに映し出される二人の選手
京都の地下闘技場。その薄暗い空間の中央に、二人の戦士がゆっくりと入場する。
無機質なコンクリートの壁と、鉄格子のような金網に囲まれたリング。
槍の又坐は、肩に大きな槍を担ぎながら堂々と歩みを進める。槍は古来より戦場で最も多く使われた武器であり、その長い射程を活かした攻撃は絶大な威力を誇る。しかし、一度懐に入られれば、その長所は一転して弱点となる。
体重差を考慮し、手首と足首にはそれぞれ 5キロの錘 が巻きつけられている。
対する 死のフラメンコダンサー オリビアは、真紅のフラメンコドレスを翻しながら静かに入場した。ドレスの裾が揺れるたび、まるで血が舞うように見える。彼女の手には暗殺武器である フリスクナイフ が握られており、さらに太ももにも6本のナイフを隠し持っていた。軽やかな足運びは、まさに舞踏のごとき優雅さと殺意を宿している。
フリスクナイフは、18センチほどの小型で平べったいナイフ。携帯性に優れ、主に暗殺用の武器として利用される。その形状から素早く隠し持つことができ、投擲にも適している。刺突と切断の両方に対応した鋭い刃を持ち、静かに敵を仕留めるために設計されている。
場内に響くアナウンス。
「倍率発表! 槍の又坐 2倍、死のフラメンコダンサー 2倍!」
VIPルームでは、ヤクザの親分やギャングたちがモニターを見つめている。
その中で、一人の男が試合を終えてVIPルームに戻ってきた。
岡崎洋介。
血の匂いを残したまま、彼は坂本忍と坂本龍太郎の元へ歩み寄る。
坂本龍太郎は口元を歪めながら岡崎に言った。
「洋介、この試合で勝った方が次のおまんの対戦相手じゃけん、よく見とくぜよ。」
試合開始のゴングが鳴り響く。
槍の又坐は即座に槍の先を下向きに構え、鋭く振り下ろした。狙うはオリビアの足。
「足を潰せば終わりだ……」
そう考える槍の又坐。しかし、オリビアも当然、その狙いは承知の上だった。
槍が地を払うように振るわれる瞬間、オリビアは蝶のように背を反らせ、華麗に後方へと跳躍する。
「バタフライ・スルー!」
槍の一撃を紙一重でかわしたオリビアは、空中で太ももに隠していた フリスクナイフ を素早く抜き、怒涛の勢いで三本を投げつける!
「キラビー!!」
彼女の技が炸裂する。
まるで蝶のように舞い、蜂のように刺す鋭い攻撃、その姿に、VIPルームで観戦していた岡崎洋介は思わず息を呑む。
「蝶のように舞い、蜂のように刺す……!」
一本は槍で弾かれたが、残り二本は正確に命中した。
一本は又坐の右足に、もう一本は左腕に深々と突き刺さる。
「ぐっ……クソッ!」
又坐は呻き声を上げ、よろめいた。
オリビアは軽やかに着地すると、妖艶な笑みを浮かべ、鋭く宣言する。
「あなたはここで死ぬ運命にあった、それが、あなたのディスティニー(宿命)!」
そして、オリビアの足が静かに動き出す。
情熱的なステップ。
死のフラメンコの舞(この踊りを見たものは生きて帰ることができない)
『デス・フラメンコ・ディスティニー』 が始まった。
カツン、カツンと響く鋭いステップ音。
華麗な旋回と共に、オリビアは又坐の周囲を踊るように回り始めた。
その一瞬ごとに、彼女の手から放たれるナイフが 背中、足、腕……次々と又坐の肉体に突き刺さっていく。
それはまるで、闘牛場で雄牛が次々とサーベルを突き立てられるかのような光景だった。
「オレィ!!!」
オリビアが情熱的に叫び、舞が最高潮に達した瞬間、彼女の手に握られていたのは カスタネットではなく、仕込みナイフ。
カツン
一瞬の静寂の後、その刃が音もなく放たれ、オリビアが屈んで下から上へ槍の又坐の顎を貫く。
顎から鮮血の血が噴き出し、槍の又坐は牛のように前のめりに倒れた。
オリビアは、その美しい死を見届けると、赤いドレスをひるがえしながら静かに闘技場を後にする。
死のフラメンコダンスは終わった。
血の匂いが漂う中、死体が片付けられ次の試合の準備が進められていく。
第一試合3回戦は、死のフラメンコダンサーがデスフラメンコディスティニーにより勝利となった。
次の4回戦は、破壊王 VS 稲妻の雷神の選手が格闘闘技場の入口へと足を進めた。




