第八話 地下闘技場
京都の地下闘技場。ここには闇の世界の重鎮たちが集まり、一攫千金を狙う格闘家たちが血と汗を流していた。ヤクザの組長、マフィアのボス、ギャングの親分たちが揃い、高級酒を嗜みながら、次の闘いの行方を見据えていた。
中央の席に座るのは、中国マフィア ダブルドラゴンの金本。彼が杯を置くと、静寂が訪れた。そして、低く響く声で口を開く。
「1週間後に京都にて地下闘技場のトーナメント大会を開催する。」
一瞬の沈黙の後、会場内に緊張が走る。金本は続けて、試合のルールを説明し始めた。
1つ、相手が武器を使用する場合、こちらも武器の使用を許可する。ただし、銃の使用は禁止する。
1つ、相手が再起不能、ギブアップ、または死亡した場合、勝敗が決する。
1つ、闘技場以外での競技者同士の戦いを禁止する。
1つ、相手との体重差がある場合、両足と両腕に錘をつけて体重差を調整する。
「フェアなルールだな」
坂本忍が不敵に笑う。彼は四国の極道、坂本組の組長であり、坂本龍太郎の父である。
「坂本さん、お手柔らかにお願いしますよ。」
そう言ったのは 尾上組の尾上 だった。いつもの猫なで声で機嫌を取ろうとしているが、坂本は鼻で笑うだけだった。
「おう、正々堂々決着つけるきに!」
坂本の鋭い眼光が尾上を射抜く。
「競技者が死んでも、恨みっこなしじゃ!」
尾上がヘラヘラと笑っているのを見て、坂本の表情が険しくなる。
「おどれ、ワシを舐めちゅうがか!?(怒り)」
坂本が 烈火のごとく怒鳴りつける と、場の空気が一気に凍りついた。尾上はビクッと肩をすくめ、慌てて手を振る。
「い、いやいや!とんでもない!坂本さんにゃ、かないませんて!」
周囲は静まり返り、金本がフッと笑って坂本をなだめるように肩を叩いた。
「ハハハ、相変わらず気性が荒いな、シノブちゃんは。」
「金ちゃんもワシも、結局こういう場所が似合うっちゅうことやな。」
二人の間に漂うのは、かつて血で血を洗った歴史を知る者だけが持つ、奇妙な友情だった。
かつて、坂本と金本は 一人の女 をめぐって激しく争ったことがある。坂本組と金本のマフィアが殺し合いを繰り広げ、京都の裏社会を震撼させた戦争だった。
「あの時は本気でお前を、ぶっ殺すつもりやったんやぞ、シノブちゃん。」
「金ちゃん、こっちも同じさ。結局、坂本組は壊滅寸前まで追い込まれたがな。」
「せやな。」
二人は酒を飲み交わしながら、まるで他人事のように笑い合う。
「でもよ、結局あの女、どこぞの国の王様と結婚しやがったんだよな?」
「おう、あいつ、結局ワシらのどっちも選ばへんかったっちゅうことや。」
「……シノブちゃん、まだ未練あるんじゃねえのか?」
「金ちゃんバカ言え。俺が未練を持つのは酒と喧嘩だけだけだき。」
金本が煙草をくゆらせる。坂本も杯を傾け、苦笑した。
「まぁ、こうやって生き残って酒が飲めるだけでも幸せやな。」
「全くだ。」
二人は互いに肩を組み、大笑いする。
二人は血みどろの大戦争の戦いを思い出しながら、再び杯を交わした。
昔の血みどろの戦いが、まるで存在しなったかのように。




