第六話 裏政治家資金パーティー
金丸福男の裏政治資金パーティーへとやって来た沖田壮一とフラメンコダンサー、オリビア。
豪華なシャンデリアが煌めく宴会場には、政財界の重鎮たちが集まり、静かに談笑しながら高級ワインを傾けていた。奥の特別席には、このパーティーの主催者であり、次期総理を狙う金丸福男が鎮座している。
金丸は沖田を一瞥すると、ニヤリと笑いながら言った。
「天樂様に次の総理大臣は私、金丸福男を宜しくお願い致します。とお伝えください。」
後藤田実の総理大臣の対抗候補である金丸福男は、総理大臣の座を手にするために膨大な資金を集めていた。
沖田は軽く頭を下げ、懐から札束の入った紙袋を取り出した。
「これは天樂様よりお渡しするようにと、ご伝言でございます。」
金丸はその紙袋を掴み、中を覗き込んだ。札束の束が整然と詰め込まれているのを確認すると、満足そうに頷く。
その視線がふと沖田の隣に立つオリビアに向かい、彼女を舐め回すように見つめ始めた。
「そちらの、お綺麗な女性はどなたですか?」
その視線に気づいたオリビアは、妖艶な微笑みを浮かべ、腰を軽くひねりながら答える。
「オリビアと申します。天樂さんより、金丸さんのためにフラメンコダンスを披露するようにイワレマシタ。」
金丸の目が輝いた。
「ほう、それは楽しみだ。」
オリビアは一歩前に進み、裾の長い赤いドレスを軽く持ち上げると、フロアの中央へと歩み出た。会場の照明が少し落とされ、情熱的なギターの旋律が流れ始める。
フラメンコのリズムに合わせ、オリビアは激しくも美しいステップを踏み始めた。床を打つヒールの音が響き渡り、鋭く指を鳴らすたびに観客の視線が彼女に釘付けになる。
金丸は恍惚とした表情でその踊りを眺めていた。しかし、沖田はそんな金丸を冷静な目で見つめながら、この夜の真の目的を見失うことはなかった。
フラメンコの舞が終わると、金丸福男は満面の笑みを浮かべながら、大声で「ブラボー!」と叫んだ。会場が拍手に包まれる中、金丸は沖田に歩み寄り、低い声で囁いた。
「沖田君、あの美女を私の部屋に寄こしてくれんか?」
沖田は静かに頷き、オリビアに視線を送る。オリビアもまた、それを察し、わずかに口角を上げる。そして沖田は低い声で彼女に告げた。
「奴をここで仕留めろ。」
オリビアは静かに頷き、金丸の部屋へと向かった。
金丸のスイートルームに入ると、男はソファにどっかりと腰を下ろし、上機嫌にオリビアを見つめた。オリビアの服の中に仕込んだ盗聴器を通じて、沖田は部屋の様子を静かに聞いていた。
「さあ、服を脱いで裸になれ。ナイスバディじゃ。ビューティホーおっぱい!さあ、ベッドへ来い。」
金丸の下品な笑い声が部屋に響く。オリビアは冷たい眼差しで彼を見下ろし、静かに口を開いた。
「あなたは悪者ですね。」
そういいながら、オリビアは着ているフラメンコの服を脱ぐ。
「ははは、そうじゃ、これから日本を背負う悪い内閣総理大臣じゃ」
裸になったオリビアがベットに寝そべっている裸の金丸の顔に跨った。
「岩清水じゃ素晴らしい和泉が見えるぞぁ、こりゃあ… らく園じゃ。」
オリビアの目が鋭く光った。そして、低く、しかしはっきりとした声で言い放った。
「あなたは、死ぬ運命にあった。それがあなたのディスティニー(宿命)。」
オリビアの叫びとともに、何かが鈍く折れる音が響いた。
「グキッ、グキグキ……」
次の瞬間、オリビアのしなやかな太ももが金丸の首に絡みついた。太ももが強烈な力を生み出し、金丸の首がギギギッと音を立てる。彼の目が大きく見開かれ、恐怖と驚愕の表情がその顔を歪めた。
「ぐっ……ごぼっ……!」
沖田の指先に冷たい汗が滲む。イヤホン越しに聞こえる金丸の苦しげなうめき声。そして、完全な沈黙。
「……昇天したな。」
オリビアは無言で立ち上がり、衣服を整えた。そして、ベッドの上で冷たくなった男を一瞥し、唇を歪めて呟いた。
「豚野郎、キモイわ。」
彼女は何事もなかったかのように、静かに部屋を後にした。
沖田はイヤホンを外し、わずかに笑みを浮かべた。やがて、外した盗聴器の向こうからオリビアの小さな呟きが聞こえる。
「豚野郎、キモイわ。」
静かに立ち上がり、オリビアとは違う方向へと歩み始めた。




