表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/89

第二話 暗殺者と暗殺者

夜の闇が、静寂を引き裂く。


岡崎洋介の目が、冷酷な殺意を宿した光を帯びる。

まるで獣が本能を取り戻したかのように、その身体から発せられる気配は、さっきまでの高校生のものではなかった。


「よ、洋介…?」


伊藤美香は、目の前の友人の異変に戸惑った。

確かに見た目は洋介だ。しかし、その顔に浮かぶのは、人を斬ることに躊躇のない者だけが持つ"覚悟"。


「お前はここにいるべきじゃない。」


静かに、だが有無を言わさぬ声でそう告げると、洋介は一歩踏み出した。


「え…?」


美香が言葉を発するより早く、洋介の手刀が彼女のうなじへと突き込まれる。


ゴスッ!


短い衝撃とともに、美香の意識が遠のく。


「ごめんな、美香…」


優しげな声とは裏腹に、その顔はもう戦いに染まっていた。

倒れ込む美香をそっと地面に横たえ、洋介は改めて目の前の敵を見据える。


暗闇中で凶悪犯は語りかけた。

「フフ…面白ぇな。さっきとは雰囲気が違うじゃねぇか。」

凶悪犯の男は、ニヤリと歪んだ笑みを浮かべた。


「今までの奴らとは違うな…その目つき、殺しに慣れてやがる。」


「……」


洋介はゆっくりと息を吸い込み、そして静かに告げる。


「これよりは人殺し同士の戦いだ。」

その言葉とともに、彼の中の記憶が完全に覚醒する。


夜の闇に、静かに対峙する二つの影。


岡崎洋介は、片手に竹刀を持ち、目の前の凶悪犯を睨みつけていた。

一方の男は、鋭く光る短刀を握りしめ、不敵な笑みを浮かべている。


「その竹刀で俺を殺せるかね?」


男は挑発するように唇の端を歪める。


洋介は静かに、だが確信を持った声で答えた。


「竹刀では無理だろうよ。」


ゆっくりと構えを解きながら、さらに言葉を続ける。


「でも・・・お前の持っている短刀なら、殺せそうだ。」


一瞬、男の笑みが消えた。


「……なに?」


次の瞬間、男の表情が殺気に満ちる。


「ハッ、ふざけんなよ!」


怒りと本能に突き動かされたように、男は短刀を握り直し、洋介の心臓めがけて猛然と突進してきた。


「そうなるだろうよ。」


洋介の口元に、かすかな笑みが浮かぶ。


暗殺武術奥義『刀返し』


ヒュッ!


突進してくる凶悪犯の腕を流れるように受け流し、洋介は一瞬で敵の懐へと潜り込む。


クルリ


凶悪犯の手首を捉え、自らの短刀を逆手に折り返すようにして、男の胸へと突き立てる!


「がっ…!?」


自分の武器が、自分の心臓を貫いている――男の目が驚愕に見開かれる。


「ぐ…ぁ……な、なん……で……」


膝が崩れ落ちると、男の口から血がこぼれた。


「お前は自分の刃で殺られる運命だった。」


洋介は淡々と告げる。


「地獄の閻魔に、お前の命…最後の一滴まで償わせてもらう。」


その言葉とともに、凶悪犯は地面に沈んだ。


岡崎洋介や、岡田以蔵の血が流れる男は、伊藤美和を担ぎ静かに夜の闇に消えていく。


令和の世に、再び"人斬り"が目覚めたのだった。


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
題名を紐解くために読み進めるならば 人殺し=人斬りに置き換えた方が感情移入しやすい。 主人公の中で2人の人物を描くならば もう少し、切り替え時に感情の戸惑いや違和感を フォーカスして書いてくれると読み…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ