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【全話 完結】令和の人斬り 《天誅》 天に代わりて、悪を討つ  作者: 虫松
第三部 疑心

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第九話 死合いの決着

坂本龍太郎の北辰一刀流の居合術に追い詰められた岡崎洋介は、竹刀を握る手に汗を滲ませていた。


(このままでは……負ける……!)


敗北の二文字が脳裏をよぎったその瞬間、岡崎の心の奥底で声が響いた。


( (俺に変われ……!) )

それは、幕末四大人斬り岡田以蔵の声だった。


次の瞬間、岡崎の目つきが変わった。まるで別人のような、鋭く冷酷な眼光。

それを見た坂本龍太郎の背筋に、ゾクリとした死の恐怖。身体から戦慄が走った。


(これは…殺し合い、まさに死合いだ!)


北辰一刀流は本来、戦場や果たし合いでも使われた武術。

だが、今の岡崎から発せられる恐ろしい殺気は、まさに人を斬る者のそれだった。


坂本は歓喜した。

(これこそ武士の剣だ! これこそ武士の戦いぜよ!)


一方、岡崎の中に宿る岡田以蔵は、竹刀を左片手に構え、静かに囁いた。


「坂本さんの子孫を……岡田以蔵が殺します。」


挿絵(By みてみん)


道場内の空気が、一瞬にして張り詰めた。


岡田以蔵は左片手で竹刀を握り、右の小手で竹刀の先を隠した。


(……竹刀の長さが見えない!?)


坂本は驚いた。剣士にとって間合いを計ることは生死を分ける重要な要素。

しかし、小手により竹刀の先を見えなくすることで、坂本は岡崎との間合いが分からなくなった。


(左片手突き……! こいつ、突きで俺の面を狙ってくる気か!?)


坂本は身構えた。


剣道では「突き」は高度な技術を要するが、突きは一撃必殺の剣。

それでも、一度かわしてしまえば、諸刃の剣、 自分の勝ちだ。


「さあ来いッ!!!」


坂本が叫んだ瞬間―


岡田以蔵の竹刀が閃いた。


暗殺武術奥義 死線二閃!!


一本目の竹刀が坂本の「面」を狙ったフェイント。

坂本は思わずのけぞり防ごうと反応する――その瞬間だった。

二本目の竹刀の先が、鋭く坂本の喉を突いた。


そして、深く突きを押し込む、殺す気で

「ぐっ!!」


坂本龍太郎の身体が弾き飛ばされ、道場の壁に激突する。


ドンッ!


道場内が静寂に包まれた。


坂本はそのまま気を失った。


「坂本くん!?キャーーアア」


見守っていた生徒たちの悲鳴が響く。


勝負は決まった。


だが、その直後、審判である剣道部顧問が冷静に声を上げた。


「岡崎……突きで深く押し込む行為は、高校剣道では反則負けだ。」


岡崎の目が正気を取り戻した瞬間、彼の表情が愕然とした。


「――えっ……?」


岡崎の勝利は、突きを深く押し込むという反則によって試合は反則負けとなった。


(なんてこった……。美香が極道の妻になってしまう。)


岡崎は膝をつき、竹刀を握りしめた。


岡崎は勝負に勝ち、試合に負けた。


それでも坂本龍太郎の心の中には、戦いの熱狂だけが残っていた。


(岡崎、おまんは……ええ剣士ぜよ……!)


剣道場の空には、まだ熱い戦いの余韻が残っていた。


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