第六話 謎の転校生
岡崎洋介と伊藤美香は高校へと登校してクラスの教室に入る。
「ねえ、今日ね、転校生が来るんだって!」
美香が楽しげに話す。
「華怜がね、こないだ入学手続したイケメン男子を見たんだって。おしゃれなブーツ履いて、いい匂いがしたらしいよ。うちのクラスに来るかもって!」
「ふうん」
岡崎は興味なさそうに返事をした。美香の話を聞き流しながらも、彼の頭の中には雷王丸との対峙のことが渦巻いていた。
教室は、朝のざわめきがいつもよりも大きい。担任の先生が前に立ち、静かに手を叩いた。
「みんな、今日は新しいクラスメートを紹介するぞ」
教室のドアが開き、スラリとした長身の少年が入ってきた。革のブーツを履き、どこか洗練された雰囲気を持っている。女子生徒たちは目を輝かせた。
「わしは坂本龍馬の子孫じゃと、ひいじいさんから聞いちょる。坂本龍太郎じゃ。わけあって、この高校にやって来たき、みんなよろしゅう頼むぜよ」
坂本龍太郎は流暢な土佐弁で自己紹介をした。
「あの有名な坂本 龍馬の子孫!?」
「マジで!?すごい!坂本龍馬って、あの坂本龍馬?」
「あの明治維新の薩長同盟に貢献した坂本龍馬よ。私、坂本龍馬が尊敬する人なの」
教室がどよめいた。
(坂本龍馬の子孫だと)
坂本龍馬といえば岡田以蔵と幕末に尊王攘夷運動した不思議な縁がある。岡崎洋介は大変驚いた。そして、何故この高校にやってきた。その訳は、もしかして、自分ではいかと考えた。
坂本龍太郎は自己紹介を終えると、ふと美香に視線を向けた。
「おお…なんとまあ、可愛らしいおなごじゃのう!」
彼は美香の顔をじっと見つめると、突然声を張り上げた。
「おまん、名前はなんちゅうが?」
「えっ…私の名前? 伊藤美香…」
美香が戸惑いながら名乗ると、龍太郎は拳を握りしめ、突然高らかに宣言した。
「わし、このおなごと婚約したいき!」
教室は騒然となった。
「えっ!? ちょっと待って!?」
美香が驚く。
「はぁ!??どういうこと?!」
教室中がどよめいた。美香はもちろん、洋介も目を丸くする。
「な、何を言ってるの?」
「わしは一目見た瞬間に、このおなごに運命を感じたがじゃ!男なら、好きな女に真っすぐ向き合うのが筋やき!」
「いや、いやいや!いきなり婚約とか、そんなのありえないから!」
美香は困惑し、洋介も呆れたようにため息をついた。
「おいおい、さすがに唐突すぎるだろ。」
すると、龍太郎は鋭い目つきで洋介を睨みつけた。
「なんじゃ、おまんは?もしかして、このおなごに気があるがか?」
「は?いや、そういうわけじゃ…」
「じゃあ問題ないき!おなごの答えを聞く前に邪魔するんは、男としてどうかのう?」
龍太郎は腕を組んで考え込むと、突然ニヤリと笑った。
「男なら逃げるなよ、お前、竹刀持っちゅうのう?ほんなら、剣道で勝負しちゃる!」
「はぁ!??」
教室は一気に騒然となった。女子たちは「キャー!」と悲鳴を上げ、男子たちは「マジかよ…」と驚いている。
洋介は思わず額に手を当てた。
(なんでこうなるんだよ…)
しかし、坂本龍太郎の目は本気だった。
こうして、放課後に剣道場にて岡崎洋介と坂本龍太郎の剣道対決が行われることになった。
【幕末の風雲児・坂本龍馬とは?】
坂本龍馬(1836年1月3日〈天保6年11月15日〉~1867年12月10日〈慶応3年11月15日〉)は、幕末に活躍した志士であり、日本の近代化に大きく貢献した人物です。脱藩浪士として活動し、武士の枠を超えた自由な発想で日本の変革を目指しました。彼は 亀山社中(後の海援隊) を結成し、商人としての手腕も発揮しました。その後、最大の功績ともいえる 薩長同盟(1866年) を仲介します。これは、幕府と対立していた薩摩藩と長州藩を結びつけることで、新しい政府をつくるための大きな一歩となりました。また「船中八策」 を提案し、大政奉還の礎を築いたりことで知られています。




