第四話 悪天必罰
深夜に、黒塗りの高級車が寺院の奥へと進んでいった。巨大な門の前で停車し、スーツ姿の男たちが恭しく後部座席の扉を開ける。
降り立ったのは、大物政治家・後藤田 実。
彼の表情は厳しく、それでいてどこか安堵の色が見えた。寺院の奥へと進むと、厳かな雰囲気の漂う本堂の中央に一人の男が座していた。
悪いものには必ず天罰がくだるという教えの悪天必罰教の
宗教の大僧正・天樂。
金色の仮面に袈裟を纏い、鋭い目つきで後藤田を見据える。薄暗い蝋燭の灯りに照らされた彼の姿は、まるで神をも恐れぬ支配者のようだった。
「お待ちしておりました、後藤田先生。」
天樂が静かに口を開く。
後藤田は深々と頭を下げると、背後の秘書に合図を送る。すると、秘書がスーツケースを抱え、天樂の前に差し出した。
「できそこないの息子の事故死にて始末……誠にありがとうございます。私の不徳の致すところでした。」
彼の声にはわずかに震えがあった。
天樂はスーツケースを開け、中の札束を一瞥する。満足げに頷くと、ゆっくりと立ち上がった。
「悪しき者に天罰を下すのが我らの務め。後藤田先生も、よくご存じのはず。」
彼の言葉に後藤田は無言で頷く。しかし、その額には汗が滲んでいた。
天樂はゆっくりと後藤田の肩に手を置き、低く囁く。
「あなたの信念をお忘れなきよう。」
後藤田は息を呑んだ。
この男を敵に回すことは、決して許されない。
「心得ております……。」
後藤田の言葉を聞くと、天樂は再び微笑を浮かべた。
「では、天樂様これからもご指導のほど、よろしくお願いいたします。」
後藤田は再び頭を下げ、寺院を後にする。車に乗り込むと、冷や汗を拭いながら呟いた。
(くわばら・・くわばら・・・ご慈悲を天樂様・・・)
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天樂の後ろの壁にある般若のお面から男が除く、そして後藤田実が帰ったあとに天樂に声をかけた。
「あのような男でも総理大臣になれる可能性があるのだな天樂。 」
天樂はその男に跪く
「御屋形様の計画通りでございます。」
「天樂は転落とも読める。後藤田の人生が今後どうなるか見ものだな。そして岡田以蔵の生まれ変わり岡崎は、なかなかやるな。毒をもって毒を制すとはよく言ったものだ。」
御屋形様と呼ばれる男は、沖田壮一を寺院へ呼び寄せた。
「御屋形様、刑事課の斎藤一樹が土方敏夫に岡崎の尾行を支持しました。」
「岡崎の次の天誅の手助けをせよ。」
(俺も生まれ変わったが、世の中の腐敗は徳川の時代から変わらないな。)
「かしこまりました。御屋形様」
膝間づくと沖田壮一は闇に消えた。そして岡崎洋介のもとへ向かうのだった。




