第九話 命懸けのレース
闇夜の峠に響くエンジン音。非合法レースに集まった走り屋たちの視線が、一台の赤いランボルギーニカウンタックと、一台のバイクに注がれていた。
スタートの合図とともに、岡崎洋介のバイクがランボルギーニの前へと飛び出す。車体が軽く、コーナリング性能に優れたバイクが、序盤の連続ヘアピンで圧倒的なリードを奪う。
「チッ……」
ハンドルを握る後藤田直哉は舌打ちをしながらも、余裕の笑みを浮かべた。焦ることはない。この勝負は直線に入ってからが本番だ。ランボルギーニのV12エンジンが本気を出せば、バイクなどひとたまりもない。
「せいぜい、今だけ調子に乗っておけよ、ガキが……」
ヘアピンカーブが連続する峠道、岡崎のバイクは機敏に切り込み、鋭い加速でコーナーを抜けていく。ランボルギーニカウンタックは強大なパワーを誇るが、その巨体ゆえにタイトなコーナーでは分が悪い。
視線の先、岡崎のバイクは峠のカーブを次々とクリアし、後藤田の視界から消えそうになっていた。だが、彼にはある計画があった。
この先の直線トンネルで、バイクを跳ね飛ばし、USBを奪う。
そうなれば証拠は消え、すべては闇の中。警察も何もできやしない。
ヘアピンが終わり、道は徐々に開けていく。遠くにトンネルの入り口が見えた。
「さあ、地獄を見せてやる……!」
後藤田はアクセルをめいいっぱいに踏み込んだ。スピードメーターの表示が100キロ 130キロ 150キロと上がっていきランボルギーニのエンジンがが猛獣の咆哮を上げながら、一気にバイクへと迫っていく!
「勝負をつけようぜ……!お前はここでお終いだ!!」
後藤田の口元に不気味な笑みが浮かぶ。
「ハッ、バイクがどれだけ速かろうが、所詮は軽いオモチャだ。逃げ場のないトンネルに入ったら終わりだぜ。」
後藤田は苛立ちながらも、計画通りの展開にほくそ笑む。この先の直線トンネルこそ、自分のフィールドだ。そして、トンネル内はギャラリーからも見えなくなる。視界ゼロと逃げ道ゼロのブラックボックスとかす。
トンネルに突入!
岡崎は全開のフルスロットル200キロを超えて急加速する。だが、その瞬間
「遅ぇんだよ!!」
背後から爆音とともにランボルギーニが急接近。わずか一瞬で距離を詰める。
「――ッ!」
岡崎が振り向いたその刹那、後藤田の狂気に満ちた笑顔がヘッドライトに照らされる。
「終わりだぁ、ガキが!!」
ランボルギーニが蛇のようにバイクの横へと滑り込む。後藤田はハンドルを切り、バイクの後輪に体当たりを仕掛けた!




