そうだ、手紙を書こう。
家路につくバスの停留所で、幸直は事務室での話し合いを思い返してはにやけていた。
持ち帰ってきたクレープを食べつつ、スマートフォンを凝視して笑えるコンテンツを見ているように偽装する。
(一気に言い過ぎて警戒されちまったかな? いや、大丈夫だろ)
それは反省するべきだと素直に内省する。
しかし水木の弟子になれる道筋がついたことは喜ばしい。
(真面目にガッコー行って、勉強もバリバリやって、師匠に操立て続けりゃいいんだろ? 簡単じゃねえか)
幸直は目を細める。
(師匠。俺の本気をナメてもらっちゃ困りますぜ。いっぺん自覚したんだ、俺はあんたに心底惚れてる男だってな)
停留所の屋根に遮られなかった空を眺める。晩秋から初冬へと切り替わる頃合いの空は、もう夜の帷を下ろしきろうとしていた。
それを彩るように、駅周辺のビル群が光を放っている。
それらに目を細めて、幸直はまたクレープをかじった。
「……うめぇ」
あの頃のクレープよりも、更に磨きのかかった味がする。
幸直は、ふう、と満足げな溜め息をついた。
「……覚悟、決めなきゃなぁ」
いつ頃辞めるかは水木は言及しなかったが、幸直は今月中にも辞めた方がいいと思っていた。
水木とすぐに顔を合わせることが出来る環境にいたら口説いてしまいかねないと、幸直はいっそ冷静に自己分析している。それは条件に抵触するだろう。
だがアルバイトを辞めたら、幸直は水木の許しが降りるまで会えなくなってしまう。
今食べているこのクレープが、最後の水木のクレープになってしまうかもしれない。
よく味わわなければ。幸直はモゴモゴと口を動かし続ける。
「……あ、」
ふと、脳内に考えが降りてきた。
うんと頷き、彼は決めた。
「ラブレター、書くか」
そう呟いた時、バスが滑り込んでくる。
食べかけのクレープを持ったまま、幸直はバスに乗り込んだ。
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