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慶長遣欧使節

 自称伊達政宗はまさにスペイン(エスパーニャ)に使節団を派遣(慶長遣欧使節)するところらしい。


慶長遣欧使節けいちょうけんおうしせつは、慶長18年(1613年)に仙台藩主伊達政宗がフランシスコ会宣教師ルイス・ソテロを正使、支倉常長を副使として、スペイン国王・フェリペ3世、およびローマ教皇・パウロ5世のもとに派遣した使節です。

慶長遣欧使節の目的は仙台藩とスペインの通商交渉であったと言われていますが、スペインとの軍事同盟を利用して倒幕する目的があったとする説もあります。

この物語では後者(倒幕目的)として記載しています。


 武に「結果は? 結果はどうだったんじゃ?」としきりに質問している。


「もちろん知ってるよー」

「頼む! どうなったか、教えてくれんか?」


 自称伊達政宗は少年に頭を下げて頼んだ。


「たしか・・・1回目は失敗して、2回目は・・・」

「なんと・・・失敗するのか?」

「1回目はね。2回目は成功するよ」


 自称伊達政宗は考えている。慶長遣欧使節の1回目の失敗理由を武から聞きたそうだ。


「なんで失敗したのだ?」

「暴風に遭って船が座礁したと思う。でも、次の年(1613年)にもう一度チャレンジして、成功しているよ」

「そうか・・・」


 自称伊達政宗は武の言った『成功』の意味を考えている。

 自称伊達政宗には、スペインから軍隊を派遣してもらって江戸幕府を倒すことが頭にあったはずだ。ただ、江戸幕府は今から200年以上続くと武に言われた。航海は成功したけど、軍隊の派遣には失敗したのか?


「でも、禁教令を無視して派遣したのはマズかったよね」

「え? そうなの?」


※最初の禁教令(キリスト教を禁ずる法令)は1612年に出されました。


 禁教令は自称伊達政宗が気になっていたポイントだ。将軍にどう言い訳するかを考えるためにも、更なる情報収集が必要だ。


「実は、相談があるんじゃが・・・」と自称伊達政宗は武に言った。


 武が見ると、自称伊達政宗はニヤニヤしている。悪いことを考えている顔だ。


「僕はない!」武はきっぱりと言った。


「タダでとは言わん。お主がほしい褒美があれば、何でも言うが良い」

「別にないし・・・」

「そう申すな。遠慮せんでよい」


 自称伊達政宗としては、何としても武に頼みを聞いてほしい。慶長遣欧使節の件を上手く扱えないと、謀反と見做されて命にかかわる。


 武が何か言えば大体のことは聞き入れてくれるだろう。少し考えることにした。


 武はこの前のピーチ・ボーイズの捕獲で小角から多額の報酬を貰っている。だから、金銭的に困っていない。

 歴史的価値があるものを要求しても、武にはその価値が分からない。


 特に欲しいものが思い付かなかったから、武は「何かある?」と猫に聞いた。

 そしたら、「アリスを探すのを手伝ってもらうのは?」と尤もなことを言った。


――たしかに・・・


 そうだった、アリスを探していたのだ。

 武は自称伊達政宗と話し込んでしまい、不覚にも忘れていた・・・


 今まで話していた自称伊達政宗が本当の伊達政宗だったら、アリスを探すのに役立つはず。本当の伊達政宗だったら・・・


 武は自称伊達政宗にアリス捜索の依頼をすることにした。


「僕がここに来たのは、女の子を探しているからなんだ」

「女子か。お主の身内か?」

「まぁ、そうだね。オジ宗の相談を聞く代わりに、女の子を探してくれないかな?」

「お安い御用じゃが・・・それがお主の望む褒美か?」

「うん。欲しいものがないから、褒美はそれでいいよ」


 自称伊達政宗は納得したようだ。


「その女子はどんな風貌じゃ?」

「歳は11歳、髪の毛は金色、瞳は青色、僕と同じような素材の西洋風の服装をしている」

「異国人か?」

「そう、異国人! この時代だと目立つからすぐに見つかると思うんだけど」


 自称伊達政宗は異国の少女を探すことを躊躇しているように見える。少し考えてから武に言った。


「その異国の女子を探したら、ワシがややこしいことに巻き込まれる可能性はあるのか?」

「ないよ。普通の女の子だから」

「その女子は西洋諸国の貴族でワシが誘拐したと言掛りを付けられたりせんよな?」

「大丈夫だって」

「戦艦からワシの城に大砲をガンガン撃ち込んだりしないよな?」

「ないない」

「そうか・・・」


 自称伊達政宗は少し安心したらしい。


「それでは、ワシの頼みを聞いてくれたら、お主の人探しを手伝おう!」

「オジ宗が本当に伊達政宗だったら、簡単に見つかるんじゃないかな?」

「本物じゃと言っとるじゃろ!」

「はいはい」

「信じとらんじゃろ?」

「それはお互い様でしょ。それで、オジ宗の頼みは何?」


「慶長遣欧使節じゃ!」


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