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私的なヨーロッパ旅行、というのはどうじゃ?

 次に、臨済宗の住職が発言した。道蔵という名らしい。が、武には偉いのか偉くないのか分からない。


「キリスト教を擁護する殿の立場は理解しております。しかし、山田殿が予言したように、結局は失敗する慶長遣欧使節を行う必要はありません。それに、山田殿の話では派遣期間は7年間です。殿が家康公と話をされていた時とは違って、今は幕府から禁教令が公布されております。そのなかで、殿は幕府にどう説明されるつもりですか?」


 オジ宗は少し考えてから「説明しない」とボソッと言った。


「説明しないとは?」道蔵はオジ宗の意図を尋ねる。


「だから、幕府には内緒にする・・・」


「慶長遣欧使節は仙台藩を代表したスペインへの使節団ではないのですか?」


 オジ宗は将軍に睨まれない方法を考えている。


「それなんだが・・・禁教令を無視して仙台藩が慶長遣欧使節を行うのはマズいと思うのじゃ」

「では、中止されるということで?」

「いや・・・今更中止にはできんだろう」

「どうなされるおつもりで?」

「うぉほん。だから・・・支倉常長の私的なヨーロッパ旅行、というのはどうだろう?」


「私の私的なヨーロッパ旅行で御座いますか?」常長はたまらずにオジ宗に質問する。


「そうじゃ。常長は以前からヨーロッパに行きたいと申しておったじゃろ?」

「はあ」

「だから、今までの功績を勘案して、常長のヨーロッパ旅行に仙台藩が費用を出そう、というのじゃ」


 支倉常長は納得できないようだ。オジ宗に尋ねた。


「拙者は仙台藩の正式な使者としてヨーロッパに派遣されると思っておったのですが。違うのでしょうか?」

「まぁ、言い方が難しいな・・・正式な使者のようで正式な使者でないというか・・・」


 猫は「どっちやねん!」と突っ込んでいる。ただ、オジ宗と武以外の参加者には聞こえない。


 オジ宗は猫のツッコミを無視して話を続ける。


「たしかに、ワシも当初は常長を仙台藩の正式な使者として派遣しようと思っていた」

「それであれば・・・」

「ただ、さっき武から聞いたように、幕府の禁教令はますます強まっていくようだ。仙台藩としてはキリスト教を正面から援護するのは危険すぎる。これはワシだけでなく、お主の一族にも関係することだ」

「拙者の親族で御座いますか?」


 オジ宗はニヤリとした。


「ああ、お主がローマ教皇に謁見するためにヨーロッパに向かったことを幕府が知ったら?」

「支倉家が取り潰しになると?」


 オジ宗は「ふんっ」と鼻で笑いながら常長に言う。


「それだけならよい。お主の一族郎党いちぞくろうとうはりつけになるかもしれん」

「それは・・・」

「だから、お主の渡航に関する支援はする。が、慶長遣欧使節はお主の私的なヨーロッパ旅行。その旅行中に、たまたま、スペイン国王に会うかもしれん。たまたま、ローマ教皇に会うかもしれん」

「たまたま、ですか?」

「ああ、そうじゃ。そして、たまたま、メキシコやスペインと交易や軍事の交渉をするかもしれん。そういうのでどうじゃ?」


 支倉常長は黙り込んだ。オジ宗は真面目な家臣(支倉常長)を脅して、プライベートな旅行にすることに成功しつつある。

 猫は「あいつ、クソだなー」と武に小声で言った。「そーだね」と武も小声で返す。


 ただ、その様子を見ていたルイス・ソテロはイライラした様子だ。

 ルイスはキリスト教の宣教師で慶長遣欧使節の正使としてスペインに訪問する予定だ。当然、今回の当事者でもある。慶長遣欧使節の扱いが雑なのに怒っているようだ。

 そんなルイス・ソテロが「ちょっとよろしいですか?」と割り込んだ。


 政宗はルイスに発言を許可した。


「殿は仏教徒をどう考えていらっしゃいますか?」

「どうとは?」

「つまり、私からすれば仏教徒は汚らわしい存在です」

「はて、汚らわしいとは?」


 どうやら、ルイスは慶長遣欧使節の扱いが雑なのは仏教のせいだと考えているようだ。


「仏教徒は男と男が交わると聞きます。キリスト教における家族の単位は夫、妻、子供です。つまり同性愛は認められていません」


 ここからルイスの仏教徒への攻撃が始まる・・・


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