八神燐の過去
言ってる意味が全くもって微塵もカケラも分からなかった。
『ちょっと待ってください。どういうことでしょうか?』
『そのまんまの意味さ。実はね今学園都市をあげて好感度とか恋愛感情また尊敬とかそういう感情の研究をしているんだよ。 私の人生の研究のテーマなんだ』
『その手伝いをしろってわけですね』
ぶっ飛んだ話だけどこの際それはもう置いておこう。だけど何故俺なんだ?他にも適任はいたはずだ。
『君じゃないとダメなんだよ』
まるで心を読まれたかのように言われたその言葉
『実はね…』
『そういうことですか』
簡単に言うと惚れさせる相手は一人ではなく何人もいるということだから目立つ主人公のような人ではダメということらしい。
そこでモブな俺に白羽の矢が立ったわけだ。
なんて皮肉だろうな まぁそれはいい
それなら俺以外にもいそうだが
俺には疑問があった。
例え惚れさせたとしてもすぐ次に他の相手を惚れさせるとなるとどう考えても目立ってしまう。
たらしだの女好きなど言われても仕方のないことをしているのだ。
『どっちにしろ色んな女の子を惚れさせたとしたら嫌でも目立つと思うんですけど』
『その点は問題ないよ 惚れさせたターゲットとある程度周りの記憶は少しいじくらせてもらうからね。
それをするにあたって元から印象の強い人とか目立つ人だと少し厳しいんだ』
そんなことできるのか?と考えたが相手が相手なのでそこはスルーした。
『そして言ってなかったね。私が君じゃなきゃダメだという点の一番大事な所は君が昔【天才子役】であり【機械仕掛けの役者】だったという所だ』
それは俺にとっては思い出したくもない過去のことだった。
俺は昔天才子役と祭り上げられたくさんの映画、ドラマ、バラエティに引っ張りだこだった。
だが俺はある日突然消えるように芸能界から居なくなった。
その理由は父が急に消えたからだ。演技も何もかも父から教わったものだ。
『お前には演技しかないんだ しっかりしろ!』
嫌なことを思い出したな
『俺に演技をしろと言いたいんですか?』
『そうだ。君の過去は知っている。知っていて頼んでいる。君なら演技をしてどんな女性にも合わせて対応することができると私は踏んでいる』
過去を知っていて頼んでいるなんてまたタチの悪い。こんなの断るに決まっている。
『お断りさせていただきます』
『もちろん報酬も出す 君が欲している報酬をだ』
『特に欲しいものなんてないので これでお引き取り願います』
『燐くん君がこれを卒業まで続けてくれたら借金は全額私が持とう』
俺の心臓が一瞬ドクンっと跳ね上がった。
『いくらあるか分かって言ってるんですか』
現在うちには借金がある。それも多額の借金だ。
俺はバイトをしながら生活費を中学までは稼いでいて母が借金返済を頑張ってしている状況だ。
『もちろん そしてこの依頼を受けてくれるのならうちの学園にお金は一切かからないようにしようそしてターゲットを一人攻略するごとに報酬も払おう』
破格の対応だった。母さんには楽をしてもらいたいとずっと思っていたことだ。
どれだけ母さんに助けられたか分からない。
どれくらい頭を悩ませただろう
時間にしてはそこまで長くないが体感ではものすごく長く感じた。
高校も行かずに働くつもりだったが…
『僕…いや俺の負けですね 引き受けます』
借金は芸能事務所をやっていた父親が急に消えて残ったものだ。
父さんはどこに行ったかもわからないその為うちにそのまま多額の借金がある感じだ。
まさか父さんがそんなに借金をしてるなんて居なくなるまで俺自身は知らなかった。
そんな父親に演技をするためにはということでありとあらゆることをこなせるようさせられた。
『でも、落とせる落とせないは分かりませんよ
最悪3年間一人も惚れさせることができないかもしれません』
『それでも構わないよ ただし手を抜いたりしないことが条件だけどね』
『分かりました。やれるだけやってみます』
『そう言ってもらえると思っていたよ
寮も用意しておくね 学園への手続きと内定先のことは全てこちらでやっておくよ』
『それじゃまた学園でね』