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『男は店であるものを注文した。けれど男は何も手にせずに帰っていった。どういうことだろう?』

わかりにくいかもしれないので基本的なみんなの質問の仕方を書いておきます

質問。もう一つ質問。さらに質問。などはマコト。

しつもーん。もいっこしつもーん。などはハル。

えっと、質問です。えっと、もう一つ質問です。などは四條さんです。

普通はマコト。ひらがなはハル。えっとが頭につくのは四條さんという感じで覚えてもらえたらと思います。

 四條さんが参加して初めて四人でウミガメのスープをやった日の放課後。

 今日はさすがにもうスープが提供されることはないだろうと高を括っていた僕がバカだった。


「えっ? それじゃあ琴音ちゃんの家って私たちと同じ方向なんだ! じゃあ一緒に帰れるね!!」

「う、うん。そうだね」


 帰りのホームルームを終え、課題のある教科の教科書とノートを鞄に入れ終えると、ついさっき仲良くなったハルと四條さんのそんな会話が聞こえてきた。

 この段階で少し嫌な予感がしていたけどそこまで気にするようなことでもないのでいつも通りケンジがやってくるのを待つ。


「マコト、やったな!」


 帰りの支度を終えたケンジがやけに楽しそうで嬉しそうな顔をしてやってきた。

 ああ、嫌な予感が的中しそう……。



「そうだね。今日のうちの晩御飯はカレーなんだ。楽しみで仕方ないよ」


 とりあえず通用はしないだろうけど話を逸らしにかかる。

 ちなみに僕はカレーが好きだけど、こんなことを言うほど好きなわけではない。


「そうかそうか。カレーは旨いもんな。でもその前にスープなんてどうだ?」

「カレーはカレーでもスープカレーなんだよ。だからスープはいいかな」


 僕の魂胆なんてわかり切ってるはずのケンジが諦め悪くくらいついてくるけど、僕も負けずと逃げ回る。

 ついさっき一問解いたばかりなのにもう頭を使えだなんてケンジはブラック企業の社長かなんかなんだろうか。


「ねえねえ二人とも! 今日は琴音ちゃんも入れて四人で帰ろうよ! そしたらまたウミガメのスープできるよね?」

「ああ、もちろんだ! 今俺もマコトに同じことを言ってたところなんだ。けどマコトのやつが渋っててな……」

「えー、またまことが渋ってるのー? いい加減楽しんでるの認めたらいいに」


 最悪のタイミングで最悪の言葉とともにやってきたハルと四條さん。

 ケンジはいい仲間を見つけたとばかりに顔をニヤけさせながら僕を見る。

 少なくともこれで二対一。四條さんはいったいどう考えているのかと、一縷の望みをかけて四條さんに視線を向ける。

 お願い四條さん。今日はもう疲れたからとか言って僕の味方に回ってくれ!


「あのー……私ももう一回やってみたいです……。二ノ宮君の探偵がその……かっこよかったし、私も推理ゲームとか好きですし……」


 ああ、やっぱりダメみたい。

 ケンジやハルならある程度無下に扱っても心は痛まないけど、さすがについさっき仲良くなりだした四條さんを無下に扱えるほど僕の心も腐っちゃいない。


「……はあ~。仕方ない。やるよ。やればいいんでしょ」

「へっへっへっ。最初からそう言えばいいのによ。勝ち目なんて最初からないんだからさ」


 にやけ顔のケンジに少しイラッとしたけれど、ここで嫌みの一つでも言って四條さんに「やっぱりやりたくなかったのかな? 悪いことしちゃったかも……」なんて気を使わせるのも申し訳ないのでグッとこらえた。


「今度こそは私が問題を解いてみせる! まことにばっかりいい格好させないんだから!!」

「おお、それは頼もしいね。そのままの勢いですぐにケンジの問題を解いちゃってよ。具体的には3問くらいで」

「まっかせといて!! ……って、それはさすがに無理だよ!?」

「ナイスノリツッコミ」


 ハルをからかったことによって少し心がスッとした僕は鞄を片手に立ち上がる。

 それを待っていたかのようにみんなは教室の扉の方へ歩いていき、僕もそれに少し遅れて続いた。

 そのままぞろぞろとくっちゃべりながら下駄箱で靴を変えて、運動部の頑張りの声や吹奏楽部の音を聞きながら校門を抜ける。


「それじゃあ早速始めるとするか! 準備はいいか! 野郎ども!」

「野郎どもって……。野郎は僕とケンジの二人でしかもやるのは僕一人なんだから絶対違うでしょ」

「そうだそうだ! 花も恥じらう乙女二人に対して野郎なんてひどいぞーっ!」

「ぷっ、花も恥じらう乙女って。四條さんはともかくハルは花より団子でしょ」

「ひっど! 今のは怒ったよーっ!!」


 ハルの言い草につい笑ってしまったら逆鱗に触れたらしく肩のあたりをハルが殴ってきた。

 地味に痛い。


「まったくまことは! 私だって女の子なんだよ! もっと丁重に扱ってほしいよ!」

「おお、ハルの口から丁重だなんて難しい言葉が出るとは。昨日テレビでクイズ番組やってたっけ?」

「もう! まことってばもうもうもう!!」


 今にも地団駄を踏みだしそうな春を見ながら僕は思う。ハルをからかうのはやっぱり楽しいな。僕はもうこれだけでお腹いっぱいだよ。

 だけどこんなことを言ったところでウミガメのスープをやらない理由としては誰も納得してはくれないんだろうな。


「おうおう。また夫婦漫才か? 俺はもう見慣れてるから笑えるけど今日初めての四條は置いてけぼりだぞー」

「あっ! ごめんね琴音ちゃん。うちの旦那のせいで……」

「ちょっと待とうか。誰が旦那なの? ちなみに僕はまだ18じゃないから結婚できないよ?」

「ヤだなまこと。小さいころに一緒に婚姻届け書いたじゃん」

「僕にはそんな記憶ないんだけどね」

「ふふっ」


 僕とハルのくだらないやり取りに小さく四條さんが笑った。

 ケンジは置いてけぼりだとか言っていたけど、笑ってもらえたのならそれはないだろう。

 笑われた僕からしたらとんだとばっちりだけど。


「このまま放っておいたらずっと夫婦漫才見させられるから今度こそ問題だ!」


 ケンジはそう言うと、いつも通り意気揚々と問題を口にした。

 って、なにが夫婦漫才だよ。


「ででん! 問題! 『男は店であるものを注文した。けれど男は何も手にせずに帰っていった。どういうことだろう?』」


 やたらとテンションの高いケンジがなにやら自信ありげに胸を張っていた。どうやら今回の問題はそうとうな自信があるらしい。

 今まで負け続けたのを忘れてしまったのだろうか?

 とまあ、そんな野暮なことは胸にしまっておいて改めて問題を反芻する。


『男は店であるものを注文した。けれど男は何も手にせずに帰っていった。どういうことだろう?』


 これが今回の問題らしい。


「はいはーい! しつもーん。男は本当に何も持たないで帰ったの?」

「イエスだな。男は何も持たずに帰って行ったぜ」

「もいっこしつもーん。男は満足して帰ったの?」

「それもイエスだな。男は満足して帰ったはずだぜ」


 いつものように勢いよく先陣を切って行くハル。

 さすがにウミガメのスープにも慣れてきたのか質問をなかなか良かったように思う。

 そんな親が子供の成長を見守るような気持ちでハルを見ていると、ハルがなにやら両手を頬に当てて「いやん。そんなに見られたらてれちゃうよ~」なんてほざいたので鼻で笑っておいた。


「えっと、質問です。男は注文したものがもらえないことに怒ったりはしなかったんですか?」

「その質問だとイエスノーだな」

「えっと、もうひとつ質問です。男は終始怒ったりなど悪感情になることはありませんでしたか?」

「その質問ならイエスだな。男は怒ったり泣いたり悲しんだりしてないぜ。問題ないではな」


 四條さんも四條さんで始めたばかりとは思えないほど良い質問をしていた。

 しかも一回目の質問をイエスノーで返されたから、少し質問を変えて自分の聞きたいことを的確に聞き出すのはすごいことだと思う。ハルなら絶対にできない。

 そんな自慢の友達を少し離れたところから観察する友人みたいなことをしていると、ハルと四條さんの視線がこちらに向いた。

 うん。たぶん次は僕の番だって言いたいんだろうな。


「質問。男はお店で注文をして満足げに帰って行ったの?」

「イエスだな」


 とりあえず無難な質問を一つ飛ばすと、ハルが首をかしげながら聞いてくる。


「ねえ、今の質問どういう意味? まさかとりあえず適当に質問しようって感じじゃないよね?」

「違うよ。今のはネット通販とかを疑った質問だよ。ほら、ネットカフェとかでネット注文して、そういうのは後で家に届くから男は何も受け取ってなくても満足げに帰る。とか」

「ああ、なるほどね! なっとくなっとく~!」


 ハルにもわかるように今の質問の意味を教えてあげる。

 けしてサルにもわかるではない。思ってはいても絶対に口にはしない。本気で怒られるから。


「ん~。とりあえず一巡したけどまだまだわからないことだらけだね」

「そうですね。でもまだ始まったばかりですしゆっくりと問題を詰めていきましょう」


 ハルのつぶやきに律儀に返事をしている四條さんにいい人だなー。なんて感想を抱きながら二人の少し後ろを歩く。

 まだ仲良くなって全然なのに、二人の距離がぐっと近づいたような気がするのはきっと気のせいではないだろう。

 ハルの人懐っこさと、四條さんの人の良さが二人の仲を深めるのを速めているのだと僕は思う。

 僕には絶対にできない芸当だ。


「おいおい。もう手詰まりか? まだまだ聞けることはたくさんあるだろー」


 質問の手を僕らが緩めたせいで暇になったらしいケンジが質問の催促をしてきた。

 なのでハルと四條さんに目を配ると二人は質問を考え中なのか真剣な顔をしていた。

 少し待っても二人から質問が出ることはなく、これ以上ケンジを待たせるとますます調子づいて面倒なので適当な質問をすることにする。


「質問。男はお店に一人で来てる?」

「イエスだな。男はお店に一人で来てるぜ。ただ別に複数人でも構わないぞ」

「つまり人数は関係ないんだね?」

「だな」

「もう一つ質問。男は仮に注文したものを持って帰っても満足して帰ったの?」

「難しいこと聞くな。……ノーだな。そもそも……いや、なんでもねえ」


 ケンジが少し言葉を詰まらせた。

 いつも通りならここに問題の何らかの鍵があるはずだけど……。


「えっと、質問です。男は手には何も持ってないけど、ポケットや鞄に何か入ってたりしますか?」

「おお! いい質問だぞ四條! だが、答えはノーだ! 入ってたとしても財布とかスマホと問題に関係ないものだな」

「そうなんですね……いい考えだと思ったんですけど……」


 四條さんがしょんぼりと落ち込んでしまった。

 けれどケンジの言う通り本当にいい質問だったと思う。手には持ってなくても何かしらの形で自分の手元にあるという考えは柔軟な発想だ。


「しつもーん。そもそも男はお店で何かをもらったの?」

「イエスだな。男はお店で何かはもらってるぜ」

「え? なにかもらってるのに手にもポケットにも何もないの?」

「そうだな。ちなみにさっきのマコトの質問で人数は関係ないって言ったから友達に持ってもらってるから。なんてのもなしだぜ!」


 その通りだ。

 僕のさっきの質問はその意図で聞いたものだったから僕だってそれはわかっている。

 ただそうなると男はどこにお店でもらったものを持っているのかわからなくなる。

 手には何も持っていない。ポケットにも何も持っていない。鞄なんかも関係ない。人体のどこに今言った以外の場所で物が持てるというのだろうか?

 そんなことを考えながら頭の中で今までの質問でわかったことをまとめてみる。


 ・男はお店から何も持たずに帰った。

 ・男は帰るとき満足して帰った。

 ・男はお店での出来事で怒ったり泣いたりなどの悪感情にはならなかった。

 ・注文はネットなどではなくお店での注文。

 ・お店に行く人数は関係ない。

 ・ポケットの中や鞄の中などにお店でのものを入れていない。

 ・男はお店で何かはもらっている。


 今までの質問でわかったのはこんなところだ。

 ここまでの話を総合したら男はちゃんと注文したものを受け取って満足していることになる。が、帰りの際には何も持ってないと証明はされている。

 となると―――


「質問、この話はファーストフード店の話?」

「イエスだな」

「もう一つ質問。男はお店で一回もなにも手にしていない?」

「イエスだな。まあスマホを触ったとかはあるかもしれないが問題には関係ないぜ」


 予想が外れた。

 食べ物を注文して食べて帰ったから何も手にしてないのかと思ったけれど、今のやり取りでそれが否定された。

 なんとはなしに女子二人の方へ眼をやると、四條さんは僕の質問の意図を理解しているらしく小さく頷いている。方やハルはなにやらぽけーっとしていた。

 あぁ、あれ絶対僕の質問の意図わかってないな。


「えっと、質問です。さっきの二ノ宮君の質問でファーストフード店だって答えてましたけど、ファーストフード店じゃないとダメなんですか?」

「おぉ、四條! なかなかいい質問の仕方だな! そして答えはイエスだな。俺はファーストフード店でしかこの状況を知らない」

「えっと、もう一つ質問です。男は注文は注文でも予約注文をしましたか?」

「残念ながらノーだな。予約注文じゃなくてその場の注文だぜ」


 なるほど、確かにおもしろいし賢い質問だ。

 お店の種類を限定したし、二つ目のある可能性を確実に一つつぶした。

 小さなことかもしれないけれど、確かな前進でもある。


「しつもーん! 男の頼んだ注文は作るのに時間がかかる?」

「なかなかいい発想だけどノーだな。かかっても数分で番号を呼ばれるまで待ってた。とかじゃないぜ」

「ちぇー、いい感じだと思ったのにー」


 考えが外れて少しふてくされたように言うハルだったけど、本当になかなかいい考えだとは思う。

 注文に時間がかかるなら一旦お店の外に出るとか、トイレに行くとかは普通に考えられる。

 ハルにしては本当にいい発想だ。調子に乗るから絶対に口にはしないけど。


「じゃあ、関係ないと思うけどしつもーん。男がもらったものは目には見えないものですか?」

「ぶっとんだ質問が来たな……。答えはノーだ。ちゃんと目に見えるぞ」


 ケンジの言う通りすごく変な質問だ。

 いくら質問が思い浮かばなくて、さっきのことでふてくされているとはいえこんな質問……。

 ん? そういえば男がもらったものって何なんだろう?

 今まで場所とか注文の方法とかばかり考えていたけど、注文したものが何なのかはあまり質問をした記憶がない。

 もしかしたらここに何か問題を解くカギがあるのかもしれない。


「質問。この問題は『男はお店で食べ物と飲み物を注文した。けれど男は何も受け取らずに帰って行った』でも成立する?」

「ノーだな。問題が破綻する」

「続いて質問。男の注文したものは触ることのできないものですか?」

「え? まこと何言ってるの? 確かに私もさっき変な質問したけどそんなことないでしょ」


 ハルが自分のことを棚に上げてそんなことを言っていたが、ケンジからが思わぬ返事が返ってくる。


「イエスだな。いや、考えようによっては触れるけど、限りなくイエスに近いイエスだと思ってくれ」

「ええ!? 触れないものを注文ってなにさ!!」


 目が飛び出るんじゃないかってくらい驚いている。

 しかも結構大きな声を出したから周りで歩いている人たちが何人かこちらを振り返った。

 やめて、目立つの苦手なんだよ。


「目には見えるけど触れないもの……」


 周りから変な視線を向けられる中、落ち着いた様子の四條さんがそう口にした。

 自分で質問しておいてなんだけど、僕だってそんなものを思いついて質問したわけじゃない。

 ただ男は何かをもらったはずなのに、なにも手にしていない。そんな矛盾を壊すための考えなしの質問だった。

 だからこれから先の具体的な質問なんてものはない。

 さて、次はどう攻めるか。と、考えていえると、元気になったらしいハルが元気よく手をあげた。


「しつもーん。男のした注文は裏メニューとか隠れたメニューですか?」

「イエスだな。メニューに載ってない注文だ。かなりいい質問だし、なんなら今日一でいい質問だ」

「え!? ほんと!? ほとんど適当だったんだよ!?」

「ほんとだ。なんならもう答えを出すためのピースは全部出てると思うぞ」

「うっそだー。私全然わかんないもん!」


 ケンジとハルが楽し気な会話をしている中、僕と四條さんは一生懸命頭を働かせる。

 ケンジは今確かに言った。今出ている情報だけで問題は解けると。なら、もう一度わかってることを整理する必要がある。


 ・男はお店から何も持たずに帰った。

 ・男は帰るとき満足して帰った。

 ・男はお店での出来事で怒ったり泣いたりなどの悪感情にはならなかった。

 ・注文はネットなどではなくお店での注文。

 ・お店に行く人数は関係ない。

 ・ポケットの中や鞄の中などにお店でのものを入れていない。

 ・男はお店で何かはもらっている。

 ・これはファーストフード店でのお話し。他のお店じゃダメ。

 ・男は店内で一度もなにも手にしていない。

 ・注文は予約注文ではない。

 ・注文したものは時間のかかるものではない。

 ・問題が『男はお店で食べ物と飲み物を注文した。けれど男は何も受け取らずに帰って行った』では成立しない。

 ・男がもらったものは目に見えるけど、手で触れないもの。

 ・男が頼んだのは裏メニューや隠しメニューなどメニューには載ってないもの。


 こんなところだろう。

 この情報でわかるはずの答え――――――。


 …。

 ……。

 ………。


 ここで僕にある考えが浮かんだ。それも二つ。

 まずは片方の、おそらくはずれの方をつぶさせてもらう。


「質問。男のもらったものは言葉ですか?」

「ノーだな。会話はしただろうが言葉じゃないぜ」


 よし、これで一つの可能性はつぶした。

 ならもう一つの方が必然的に答えになる……はずだ。


「ねえ、まこと。今の質問ってどういう意味?」

「ほら、お店で注文とかしたら「ありがとうございました」とか言われるでしょ? そういうのかと思ったんだよ。今回でいえば「今はありませんがいついつにはあります」とか」

「ああ、そういうことか!」


 僕の質問の意図を理解したらしいハル。

 けどすぐにまた質問してくるんだろうな。


「もう一つ質問。相手の店員は女性でしたか?」

「い、イエスだな……」

「さらに一つ質問。男は注文通りのものをもらいましたか?」

「イエス……」

「おまけに質問。男が頼んだ品は無料ですか?」

「お前もう答えわかってるだろ! イエスだよ!」


 ケンジがもういいから答え言えや!

 という感じになってきたのでそろそろ解いてしまおう。

 と、思っていると、さっきの僕の質問で答えにたどり着いたらしい四條さんが顔を明るくしていた。

 そういえば四條さんは僕の探偵姿がどうのこうのって言ってたな。もしかして探偵やってみたいのかな? そう思って訪ねてみた。


「ねえ四條さん。答えわかったんだよね? もしよかったら探偵やってみる?」


 正直僕は探偵役なんてやりたくないので四條さんがやってくれるなら万々歳だ。


「い、いえ。確かにやっては見たいですけど、先に答えにたどり着いたのは二ノ宮君なので……」

「いいよいいよ。四條さんだって答えがわかったみたいだしさ」

「ですが」

「いいから」


 そうやって堂々巡りをしていると、ハルとケンジからなら二人でやりなよ。という言葉をいただいてしまった。

 その結果、結局二人でやることになった。なんでこうなった。


「早く早く、私も早く答え知りたい。この中で答えわかってないの私だけだし」


 しかもハルから早く早くとはやし立てられる始末。


「はあ~。しょうがない。二人でやろう四條さん」

「は、はい。ですがどうやって」

「今回の問題は口で説明するよりやった方が早いと思うから実際にやっちゃおう。僕は注文の品が苦手だから四條さんにお願いできるかな?」

「え!? 私がですか!?」

「うん。今言ったけど僕は苦手だし。もちろん嫌なら嫌でも構わないよ。そこだけ口で説明するから」


 僕だって無理強いをしたいわけじゃない。

 だからちゃんと逃げ道、というと聞こえが悪いけど、逃走ルートはしっかり用意しておく。

 僕だったら用意してほしいからね。


「わ、わかりました。頑張ってやってみます」


 どうにか覚悟を決めてくれたらしい四條さんが胸の前で両手をグーにして気合を入れていた。

 そんなに気合入れなくても大丈夫だよ。なんて野暮な言葉は口にしない。逆に緊張させちゃいそうだから。


「それじゃあ、今からやるよ」


 わかってはいるだろうけど、ケンジとハルに宣言をする。

 すると二人はわーわー言いながら拍手をした。いや、劇とかじゃないし、なんなら1分もかからない超短い話なんだけど……。


「い、いらっしゃいませ……」


 四條さんが恥ずかしそうにうつむきながらそう言ってきた。

 だから僕はファーストフード店でいつも注文するように、いつもは注文しないものを口にする。


「すいません。スマイルください」

「は、はい。……こ、こちらでいいでしょうか」


 四條さんがぎこちなくだけど笑いながらこちらを見てくれた。

 そのあまりにかわいそうな感じが僕にもう少し強く逃げ道を作っといてあげればよかったと思わせる。

 ごめん四條さん。でも僕もそっちの役は無理だったんだよ。


「というわけで、これが答え。あってるでしょ? ケンジ?」


 せめてもの罪滅ぼしとしてこれ以上四條さんにつらい目を合わせないために話を進める。


「正解だよ。今度こそは行けると思ったのによ」


 悔しそうに顔を歪めるケンジ。


「考える頭が増えたんだから正解率だって上がるでしょ」

「俺からしたら一番厄介なのはマコト何だよ。倒したい相手もな!」

「倒したいって……。バトル漫画じゃあるまいし」


 ケンジは結構な負けず嫌いだ。

 それに反して僕は勝ち負けにはそんなに拘らないタイプ。だからこそケンジとしては悔しいのだろう。

 でも手を抜くとそれはそれで怒るので手を抜くわけにはいかない。


「なるほどねー。スマイルか。一時期ハヤってたよね」

「そうですね。私のクラスメイトもいたずらでやってきたとか話してました」


 女子たちの方は問題の答えについてで話に花を咲かせている。

 それに恥ずかしい思いをしたはずの四條さんも探偵役? をできたからか少しうれしそうだ。

 そんな四條さんの顔にさっきよりよっぽどいい笑顔をしてるなんて思いながら、ケンジにちょっとしたお約束のことを言う。


「次はもっと手ごたえのある問題を頼むよ」



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