作戦会議
私はずっと孤独だった。
友達以前に家族からも気味悪がられていた私は14歳で1人暮らしを始めた。
当然、自分の家に人が来るなんて思ってもいなかった。
今日までは。
「入って。あ、そこのナイフとかは触らないでね。」
「「お邪魔します…」」
接客ってどうすればいいんだっけ…
ここ何年も人が家に来たことないから忘れてしまった…
お茶を出せばいいということは覚えている。
「そこの椅子に座ってて。お茶を淹れてくるから。」
「ありがとうございます…」
2人はまだ緊張しているのか、口数が少ない。
カップに茶葉を入れて、お湯を注ぐ。
お茶の香ばしい香りが部屋を包んでいく。
カップに注ぎ、机へと運んでいく。
「お待たせ。好みに合うかわからないけど、どうぞ。」
「いただきます…」
そういうと2人はお茶をすする。
「さて、そろそろ作戦会議の方に移るか。今回のレイドは深淵の洞窟。階層数は4。割と簡単な方だね。」
「簡単なんですか…これで…」
「ええ。それと、一つ確認があんだけど。」
「はい?なんでしょう?」
「レイドっていうのは必ず人が死ぬ。どんなに簡単なレイドでもだ。自分達や先に行った人たちが死んでいるかもしれない。それの覚悟はできてるね?」
「はい。それは承知しています…うちの村からも何人かレイドに行ったっきり帰ってきていない人もいますから…」
サクは何か思い出したらしく、俯いてしまう。
カインも、しゃべってはいないが苦しそうな顔をしている。
私は、あえてそこには深く触れずに進めていく。
「それでなんだけど…もしこの3人の誰かが瀕死になった場合、最悪その人を置いて撤退するから」
2人が一斉に顔を上げ、こちらを見る。
「え…そんな…………………」
2人が不満そうな表情をしている。
しかし、2人も心の中ではわかっているはずだ。
犠牲を最小限に抑えるにはこれしかないことを。
「っ……わかり…ました…」
不満を押し殺した声。
「でもそれはあくまで最悪の場合ってだけだから。大丈夫だと判断したら私がおぶって撤退する。約束しよう。」
私は心配そうな2人に可能性を提示する。
「はい…」
それでも納得しきっていない暗い表情。
それから約1時間作戦会議は続いた。
「これが今回の作戦なんだけど…質問とかある?」
「いえ…それじゃあそろそろ私達帰りますね。」
「「お邪魔しました…」」
「うん。じゃあ、集合は3日後の9時にレイドホール前ね。」
「はい…」
そう言うと2人はドアを開け、家を出て行った。
2人の顔が家を出るまで暗いままだったのは言うまでもない。
「はあ…」
私は2人が家を出た直後、大きなため息をつく。
「そりゃそうよね…仲間を置いて逃げろって言うんだもの…」
目を閉じて考える。
ふと、とある記憶が浮かんでくる…
『おい!置いていかないでくれメイアアアアァァァァァ!!』
青年が必死に叫んでいる。
私は彼を背負って逃げようとした。
するとリーダーが私の腕を引っ張り、彼を置き去りにして逃げようとする。
『止めろリーダー!まだ彼は生きている!』
『やめろメイア!お前まで死ぬぞ!』
目を反射的に開ける。
考えているうちに眠ってしまっていたようだ。
「はあ………………嫌な記憶は早く消えてくれないかな…………」
私はそう呟くと布団に行き、再び眠りについた…
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