奥さまは嫉妬します
また嘘をつきましたのね、貴方。
結婚して、まだ一月と一日。
でも、これで31回目の嘘ですわね。
まぁ、男爵家の次男で、我が公爵家に婿養子として入ってくる貴方が、唯一連れてきたメイドは乳姉妹だという美しい女性。
そう。
貴方の乳兄弟は男の人だと聞いていますわ。
どうして、女性なのです?
それに、どうして……嘘をつくのです?
最初気になったのは、貴方の手紙の文字と、初日に結婚契約書の文字が違いました。
貴方の手紙の文字はとても繊細でした。
達筆で両親も感心していたのです。
それなのに、どうして、契約書の文字が少々雑になっているのでしょう?
代筆ですか?
緊張してもここまで下手に……いえ、乱れるものでしょうか?
……文通をしている間は、本当に美しくてこんな文字を書きたいと、額に入れて飾っていたというのに……残念です。
それに、貴方のその声も違いますわ。
そう、5年前にお会いした時と……一応お兄さまが声変わりをなさったのは知っておりますもの。
でも、方言というものがありますわ。
いえ、イントネーションというべきかしら?
昔はゆっくりとお喋りでした。
でも、その速度が1、5倍になっています。
いくら五年が長くとも早すぎませんか?
あぁ、服装も好みがガラッと変わっていますわ。
……まぁ!
私の情報が古いのかしら?
マーサ、何ですって?
私のストーカー……いえ、箱の隅の隅まで掘り起こさないと気が済まない性格は、旦那さまに嫌われますよ?
……分かってるわよ!
でも、旦那さまはお忙しいし、口数も少ないし、結婚してから一緒にお話もできないんだもの!
旦那さま、私はもっとがんばりますわ。
ですから、嫌いにならないでくださいませ。
明日までに旦那さまのお好きだというお酒や、料理のレシピを集めて見せますわ。
「ケイト……」
「あっ、旦那様ですわ」
「ただいま」
急がなきゃ。
でも、あの女性と一緒に戻られているのよね……影に新しい情報を集めてもらおうかしら?