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ファンタジーな世界


ピチャンッと、どこからか音がする。

「うーん…」

飛び込んだがその先に光はなく、カトリーナはただただ真っ暗な空間を歩き続けていた。

飛び込むべきではなかったと後悔してももう遅い。

引き返す事も出来ない。どちらの方向に歩けばいいのかも分からない。


「どうしよう。このまま暗い空間で一生暮らせって言うの……?」


カトリーナはだんだん怖くなってきた。

一人で暗い空間を歩き続ける恐怖に。

先程まで走り続けて暑かったはずなのに、今はとても寒い。


「あぁ、お願い。どうか光を。光を…」

カトリーナは手を合わせて、目を閉じる。


____お願い。小さな光でもいい。光が欲しい。



ポンッ。



「あっ……」

目の前にピンポン玉程の小さな光の玉が現れた。


そっとその玉に触れればパンっと弾けて、更に小さな光の粒が周りに広がる。

少しだけ明るくなり、足元は明るくなった。

「あったかい…」

光の粒は沢山増えていき、カトリーナを包み込んだ。

「ありがとう。元気が出たよ」

カトリーナは笑った。

「さぁ、出口に向かって走ろう!」

光の粒が出口はこっちだと伝えるかのように、動き出し先導し始めた。

カトリーナはドレスの裾を勢いよく持ち上げる。

「誰も見ていないしやっちゃえ」


カトリーナは光の粒を追いかけて走り始めた。

するとだんだん明るくなってきた。

___出口が近づいてきたってことだ!

「よっしゃぁぁ!!」


バサッ、と手で植物をかき分ける。


「うわっ……あぁ…眩し……」

カトリーナは暗闇から一気に明るい場所に出た為、目がクラクラしていた。

しばらく地面の草を眺めて、目が慣れてきた事を確認し、カトリーナは顔を上げた。



「わぁぁ……何ここ……ファンタジーの世界…?」

__乙女ゲームもファンタジーだが、ここはまた違う。


雲一つない青空、目の前に(そび)える古城。

古城の壁は一面(ツタ)に覆われている。

濁った水が溜まった噴水。


「誰も住んでないのかな…?」

カトリーナは胸をときめかせながら、入口を探す。

手入れされていない庭から見てきっと人なんて住んでいるはずが無い。それにここはきっとグレイ領だし、大丈夫だろう。不法侵入ではない!カトリーナは自分に言い聞かせた。


「ふふん、ふーん。ふふっ」

鼻歌交じりにカトリーナは草をかき分けて探す。


「あぁ、あった!」

カトリーナは重厚感溢れる扉を見つけた。

急いで階段を駆け上がり、扉の前に立つ。


「よし開け…って絶対鍵が掛かってるやつだよね…これ…」


___あぁ!!でもどうでもいい!やっちゃえ!


カトリーナは勢いよく取っ手を掴み扉を押した。

すると扉はギギギ…と音を立てて開いていく。


「え!?あ、開いちゃった……!」

カトリーナは感動して急いで中に入る。

「…凄い」

カトリーナは周りを見渡す。

足元はふかふかの赤い絨毯、天井はホコリ被った豪華なシャンデリア、棚には金の装飾が施されたホコリ被った燭台。

そして目の前には大きく立派な階段があった。

「わぁぁ!!」

他にも見て回ろうとカトリーナが動き出そうとした時だった。


「何者だ」

少年のような声が聞こえ、カトリーナは心臓が飛び出しそうになる。

「……おい。何者だと聞いているだろう」

カトリーナは声のする方向に顔を向けた。

正面の階段に、一人の少年が腕を組んで立っていたのだ。

その瞬間、カトリーナは息を吸う事を忘れてしまいそうになった。

それほどまでに少年は美しかったのだ。


少年の耳は尖っており、柔らかそうなワインレッドの髪の毛は胸辺りまで伸びて、毛先がクルリと跳ねている。

怪訝そうにカトリーナを見下ろす瞳の色は透き通った翡翠色をしていた。

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