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アーマンドの弱点


カトリーナが回復した事は瞬く間にグレイ夫妻へと伝わった。

「カトリーナ良かった。熱が下がらず心配していたのだ」

「本当に良かったわ。顔色も良さそうね」

グレイ夫妻は安心したようにカトリーナを見る。

「ルエラはカトリーナは記憶喪失になったと言い、アーマンドはカトリーナが倒れていたと泣きながら伝えに来て、ついて行けば本当に倒れていてもう心配で心配で」

「なっ、母上!!」

アーマンドは顔を真っ赤にしながらアーマンドとカトリーナの母、デラを見て言った。


____意識が飛ぶ前に見たあの手はアーマンド兄様の手だったのか。


「ふふっ。私はアーマンド兄様に助けられてばかりですね」

「……チョコレート一箱やったんだ。礼はチョコレート二箱にしろ」

「えぇっ、アーマンド兄様も一緒に食べていたではありませんか!」

「関係ない。ちゃんと二箱用意しろよ」

「…わかしましたよぉ……」

カトリーナは、折れる事ができる人間だった。

葵だった頃は姉として折れる事は日常茶飯事だったからだ。


「うぅ…しばらくの間、チョコレートは食べれなくなっちゃうなぁ……でも我慢しないと…」

そうカトリーナが小さく呟くと、隣に座っていたアーマンドは興味無さそうに言う。

「あー、チョコレートはあまりいらないな。おい、カトリーナ。別にチョコレートはいらない」

「えっ!?本当ですか!?」

なんだかんだ言って、アーマンドはカトリーナには弱いのだった。



***



「あぁ、ちゃんと聞いておけば良かったなぁ」


____乙女ゲームの情報。

私が知ってるのは大まかな流れと、登場キャラクター名、エルヴィスがイケメン過ぎるという情報、とんでもないヤンデレキャラが居るっていうのと、ヒロインが聖女で、学園に入って、攻略キャラと会っていくってだけ。

話をだけ聞いていただけで実際にプレイなんてした事ない。

どの選択が一番安全なのか、ヤンデレ回避方法とかちゃんと聞いておけば良かった。


「お嬢様?」

ルエラは不思議そうにカトリーナを見つめた。


「あ、いや……なんでもない。そう言えばルエラ、午前中沢山お勉強したからお外に遊びに出てもいい?」

「お嬢様…この前、勝手に屋敷を抜け出して高熱出て寝込んだ事お忘れですか?」

ルエラは笑顔で言っているが目は全く笑っていなかった。

「お、お外と言ってもここの庭周辺だよ…?この間のように遠くには行かないよ」

「…わかりました」

「わぁぁ!本当?」

「しかし、私もついて行きますからね」

「わかった!」


服はできるだけ落ち着いた物を選ぶ。動きにくいと困る。

「お嬢様、本当にこのような格好でよろしいのですか?」

「うん。動きやすい方がいいから」

カトリーナはルエラの方を向いて手を合わせて言った。

「今日は天気が良いからお菓子と紅茶を持って外で食べたいの!ダメ?」

「まぁ、確かに天気は良いですが……」

「ダメ?」

「…分かりました。用意しておきます」

「ありがとうっ!ルエラ大好き!」

「………もうお嬢様ったら」

ルエラは目を細めて笑った。


その後ルエラは、お菓子の入ってる箱と紅茶が入っているポットをバスケットに入れて、カトリーナの部屋に来た。


カトリーナは白いレースと薄桃色の薔薇の刺繍が施されたボンネットを被り、ルエラと共に部屋を出る。


「カトリーナ、どこへ行くんだ」

カトリーナとルエラが部屋を出ればアーマンドが本を片手にカトリーナ達の正面に立った。

「今日はとても天気が良いので、少し散策しようかと」

「そうか。……早めに帰って来いよ。病み上がりなんだから」

アーマンドは長い睫毛を伏せた。

「はいっ。アーマンド兄様」

カトリーナは目を細めて可愛らしい笑顔を浮かべた。


__やっぱり、アーマンド兄様は優しいのね。



しばらくして、カトリーナとルエラは外に出る事が出来た。

「まさかあの後、お父様とお母様にも捕まるなんて…」

「ふふっ、旦那様も奥様もお嬢様が心配だったのですよ」

「ルエラ、私はもう八歳よ。そんなに子供じゃないわ」

「お嬢様はまだまだ子供です。毎日、毎日屋敷を抜け出して…私が何度探し回った事か」

ルエラは焦茶色の瞳を細めた。

「…ルエラ…?」

「お嬢様が私を忘れてしまった時は本当に生きた心地がしませんでした」

「あ、あれは寝ぼけてたの!」

「お嬢様を探し回るのも大変ですがそのような事は全く苦とは思いません。……ですがお嬢様が……お嬢様の瞳に私の事が他人のように映るのがとても苦しいのです」

ルエラの瞳には薄い涙の膜が張っていた。


__ルエラ…そうだよね、私が生まれた時からずっと傍にいてくれたからね。ルエラって、確か今二十二歳よね。私は年の離れた姉としてルエラを見ていた。侍女達の中でルエラが一番好き。



「そんな事はもう無いから安心して?私、ルエラだーいすき!」

ルエラに抱きつけば、ルエラは焦りだした。

「お、お嬢様っ」

「さぁ、行こうっ、ルエラ!」

カトリーナはルエラの手を引いて歩き出した。



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