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30本目の世界線  作者: 大原英一
雷鳴
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4本目

 意味がわからない。青木がドヤ顔で見せたスマホの待ち受け画面。そこに表示された【2016年4月1日】という日付けに、アタシは何の疑問も抱けなかった。

「去年て、どういうこと」

「だから去年だよ。今年は2017年だろ」

「はあ? ……あなた、なに言ってんの。今年は2016年よ」


 言いながらアタシは心臓がバクバクしていた。この状況だ、なにが起きても不思議じゃない。

 あの閃光、青木のテレポート、そして偽札の消失……。もしかして本当にタイムスリップが起こったのか。

 だとしたら時を超えたのは彼か、それともアタシのほうなのか。

「待って、たしかめる必要が……」

「ふざけんなよ、とっとと出て行け! マジで警察に通報するぞ」

「……わかったわ」

 ここは大人しく退いたほうがよさそうだ。が、タイムスリップしたのが彼だった場合、きっと後で泣きついてくるだろう。


 部屋を出たアタシはパラグライダーを折り畳んである場所へと走った。だがしかし。

 アタシの愛機はそこになかった。やべー、偽札のみならずこっちもか。とりあえずベルトのボタンを押す。すると一瞬でレオタードが支障(さしさわり)ない私服へと替わる。だてにプロやってませんから。

 コンビニに駆け込んでスポーツ新聞を手にする。日付けを確認して、ほっと胸をなでおろす。よかった、やはり今日は2016年4月1日だった。

 おぼろげながら事態が見えてきた。


 ほどなくしてアタシのスマホに青木から着信があった。

 アパートを出るとき、ドア備え付けのポストにカードを挿んでおいたのだ。アタシの番号が載ったカード……まったく、やさしいかず子ちゃんに感謝だぞ?

「ハロー、ミスター青木」

「……すみませんでした。いろいろ確認したら、今年は完全に2016年でした」

「オーキードーキーよ」

「はい?」

「オッケーてこと。ねえ、もう一度お邪魔してもいい?」

「うん」

 うん、て。かわいいな。


 お茶とかお菓子などの差し入れを持って、ふたたび青木のアパートを訪ねた。

「信じてほしいんだけど……」

「あなたが2017年からきたってことでしょ? 信じるわ」

「マジで」

「ええ。それにタイムスリップしたのはあなただけ、じゃない」

「まさか、きみも」

「水戸よ。水戸かず子」

「水戸さん。オレは青木……あれ、しってたっけ」


「青木さん。アタシはさっき、あなたに荷物を届けにきたのよ。パラグライダーに乗ってね」

「本当にキャッツ●イみたいだね。荷物って、なに」

「その荷物が消えたいまとなっては答えられません。ついでにパラグライダーも消えてしまった。これがどういうことか、わかる?」

「……さっぱり」

 アタシはふふん、と鼻を鳴らして言った。

「たしかにアタシはあなたの部屋に荷物を届けた。2017年のあなたの部屋に」


「ああ、なるほど。パラグライダーごと未来へ行った、と」

「そう。だから乗り物と荷物は2017年の世界に置いてきてしまった。紙とペンを貸してくれる?」

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