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30本目の世界線  作者: 大原英一
雷鳴
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プロローグ

 今夜も大都会の上空をパラグライダーでかっ飛ぶ。レオタードすがたで。

 気色わるいほど大きな月に照らされて、いまごろバックでは杏里(リーアン)のあの名曲が流れているんじゃなかろうか。

 アタシの名は水戸かず子。職業ヘンタイ、ってちがうわ!

 任務でこれから、とある男を訪ねる。男の名は青木岳人。しがない印刷工で、みすぼらしいアパートに住んでいるらしい。

 青木に会うのはこれがはじめて。情報どおりの男かもわからないし、会えるかどうかすらも……。

 とりあえず目的地に着いた。通報されるまえにパラグライダーを畳んで、さっさとやっつけてしまおう。

 204号室。午後8時すぎのいまは在宅しているとの事前情報だ。

 深呼吸してからインターホンを鳴らす。最悪の場合、これからくんずほぐれつのバトルに発展する可能性がある。アタシのミッションはいつだって危険をともなう。


 青木はすぐに出てこなかった。ドアの向こうで様子をうかがっているのか。

 ドアスコープからレオタードすがたのアタシを見て欲情しているのか。もしドアを開けてアタシに飛びついてきたら、この長い脚(ガイナーなシーアー)で蹴っ飛ばしてやる!

 ガチャリと音がして、ゆっくりドアが開いた。こちらの緊張もマックスになる。

 ……誰もいないぞ? 玄関は、てゆうかそこから見渡せる部屋のなかまで真っ暗だった。もしかして浴室かトイレに隠れているのか。

 (せっま)い玄関に脚を踏み入れドアを後ろ手に閉めた。手探りで明かりのスイッチをさがしてオンにする。

 わりと小綺麗なワンルームだった。あとは世帯主が襲ってこないことを祈るのみだが……。


 誰もいなかった。浴室、トイレ、クローゼット、ベランダとぜんぶ探した。ほかに隠れられる場所は見当たらない。

 何これ、なんでいないの? たしかにドアは内側から開かれたのに。

 ま、いいか。想定の範囲内ってやつ。これまでもわけわかんない奇術師とかと戦ったこともあるし。

 作戦変更……てほどでもないか、ほぼ作戦どおり。アタシのミッションはコイツをお届けすることなんだから。

 てなわけで、ベッド脇の棚に現物(ブツ)を置いてアタシは部屋を出た。新聞紙で(こさ)えた偽札の束を。

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