5話
「チャンいるか?」
大魔導士ソロは勇者チャンの自宅へとやってきた。
しかし様子がおかしい人の住んでいる気配がない、昼間だというのに窓はすべてカーテンが下りている
「ソロか?入ってくれ」
「お前どうした!?」
ソロが見た勇者チャンはゲッソリと痩せこけ目の下には濃い隈ができている。ここまで衰弱している姿は数多の強敵との激闘の時にも見たことはない
「とりあえず入ってくれ」
勧められるがままに家の中に入るが、中にも人の気配がない。以前は美しい家政婦が大勢いたというのにだ
「チャン一体どうしたんだ?」
「俺は今攻撃を受けている」
深刻な表情をみて一大事であることが分かった。
来るんじゃなかったかもしれない、思ったより面倒くさそうだ。勇者に恩を売りたくて一応来てみたが、1時間ほどで退散して、キャバクラで豪遊する予定なのだ。こんなことに構ってる暇はない
「攻撃?あのビラの事か」
「そうだ。しかも犯人が分からない」
「・・・・・特殊スキル所持者か」
「俺もそう思う。あのビラを撒いている犯人の姿は、誰一人見たものがいないし、付近の印刷所も一切かかわってないんだ」
だとしたらかなり厄介だ。特殊スキルは通常のスキルに比べ反則に近いほどの能力があるので見つけ出すのは困難だ。
一番いいのは鑑定でそれっぽいスキルを持っている奴を発見することだが、この街だけでも10万人以上の人間がいるから、全員に鑑定なんぞかけて、該当する能力を見つけるのは不可能に近い。
そもそもそいつが高レベルの偽装のスキルを持っていたら、さらに発見するのは困難だ
(いいタイミングがあれば退散するかな、こいつは最近調子に乗ってるからちょうどいい罰だ)
「恨みを買った覚えはないのか?」
心配を装う。
「わからん。俺たちは人類の頂点に立つ者だ、嫉妬や逆恨みの対象になりやすい。全く知らん奴の可能性もある」
「うーむ」
(確かにその通りだが、とすればこの街にもいないかもしれない。そうなればお手上げだ、まあ俺には関係ないからどうだっていいが)
「国王はなんと?」
「あいつになんぞ頼っても無駄だ。城に来るよう命令を受けているが、一回も行っていない」
「確かに特殊スキル所持者が相手では、普通の兵じゃあどうしようもないか」
ソロは煙草に火をつけ足を組んだ
(しかし勇者様は相当弱ってるな、こいつを仕留めるのは今が好機かもしれん。コイツを殺した時の経験値はさぞ美味しいだろうからな)
「クソ!姿さえ見えれば!!そうすれば叩き斬ってやるのに!!!!」
怒りを込めた拳を机に叩きつけた。机は何度も殴られているのだろう、変形してしまって立っているのがやっとの状態だ
(見つからない自信があるから攻撃を仕掛けてきてるんだよ。バカだな・・・。そういえば・・・)
「あそこには行ったのか?」
「あそこ?」
「情報屋だよ。そいつは黒龍の情報も持ってたんだ。今回の事だって何か知ってるかもしれんぞ」
「情報屋!」
全身に電撃が走った
「とてつもなく高いと噂だが・・・」
「情報屋!!!!!!!!!わかったソロ!そいつが犯人だ!!!!」
チャンは勢いよく立ち上がり頭を掻きむしった




